6 夢が見せる幻はいつまでも後を引く。
改変しかした
どこまでも続く白い空間。上下の感覚がなく、落ちているような感覚にも陥りそうだ。
ーーー何故、お前がここにいる?
ーーー役立たずを育てた覚えはないわよ。こっちに来ないでよね。
白い空間に並んで立っている黒い2つの人影は、1人の子供を驚き、貶すような目で見つめる。
…ああ、何故そんなことを言うのですか?僕はこんなに頑張っているんですよ。
近づこうとしても、離れていた距離は縮まることはなく、どんどんと離れていく。
ーーーお前には、まだやることがある。くるな。
ーーー…あなたは、そんなに早くこっちに来ないでね。
…いかないで!父さん、母さん!
2人を掴もうと、必死に伸ばした手は空を切り、身動きの取れないまま、永遠に落下を続けた。
「…はあ…はあ……」
目が覚めると、そこにはいつもの王宮の白い天井があった。
カインはゆっくりと体を起こす。額からは汗が流れ、喉が渇きを訴えていた。
それを拭いながら窓の外を眺める。地平線の彼方から日が上がり始め、あたりに光を与え始めているところだった。
(また、あの夢だ。いつ振りだろうか…)
ベッドから這い出し、テーブルに置いてあったコップに水を入れ、喉を潤す。
「…しっかし…なんであの夢を…タイキに色々言われたからかな…?」
滅茶苦茶な言い訳を口にしているうちに意識がはっきりとしてくる。
ヘンリーが使っている部屋の一つを借りて作ったのが、カインの部屋だ。
部屋には、本棚と簡素な椅子と机、そしてベッドのみが置かれていた。また、部屋のあちこちに魔法に関する本が積み上がっていて、ごちゃごちしている。
床の表面は、散らばった本でほとんどと言ってもいいほど、見当たらない。
(…こんな時は、少し心を落ち着かせるべきだね。嫌な事を忘れるべく、別のものに意識を向けることにしよう)
そう結論づけると、乱雑に置かれた本の隙間を縫って移動し、王宮に備え付けている魔法訓練場に向かった。
廊下はまだひんやりとしており、何処か神聖な場所のようにも感じられた。
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