56
遊びに行った日の夜、カインは早速ヘンリーに許可を得るために部屋を訪れていた。
「こんな時間に訪れるとは、また頼み事か?」
「はい。ちょっと面白いことを思いついて」
差し出された紅茶を嗜みながら話す。
季節は変わり、暑さが落ち着いてきて、夜になるとひんやりとした空気が漂っている。
冷えた体に、温かい飲み物が沁みていく。
「それで、なんじゃ?」
「えっとですね、ちょっと悪魔でも呼び出そうと、」
ガチャン!
ヘンリーが手に持っていたカップが、大きな音を立てて割れる。
「…まじで言っておるんか?」
「はい。このまま、敵に効くか分からない魔法を作っているのは、時間の無駄になりますし、ここで一つ、新しい考えでも取り入れようかなと」
ニコニコとするカインとは対照的に、ヘンリーは頭を抱えて悩む。
「ダメですか?」
「……ダメじゃろ。悪魔を呼び出すなんて、他国にバレたら非難をがっつり喰らう。なんせ、あの悪魔じゃぞ?過去に、幾つもの国を滅ぼして、何千万もの命を奪った奴らを呼び出すなんて、バレたらひとたまりもないわい」
「…そうですか、ダメですよね。無理を言ってすみませんでした」
飲み干したカップを、置き、部屋を去ろうとする。
「……いや、待て」
部屋を出ようとしたカインに声をかける。
「……悪魔を呼び出すことは、絶対に必要なのか?」
「絶対ってわけではないです。ですが、賢い奴が来てくれれば、一気にこの状況を打破できるはずです。次元の魔物に対して有効打がないこの状況を」
「……そうか……」
「どうですか?」
腕を組み、うんうんと唸る。
「……条件付きなら、許そう」
「本当ですか!?やったぁ!!」
「条件付きじゃぞ。ちゃんと守るなら、じゃぞ?!」
「分かってますよ」
再び、席につき、対面する。
「条件は、3つ。
1つ、呼び出した者がどうしようもない者なら、即座に殺すこと。
2つ、主がその悪魔と契約を交わし、主が死んだらそいつも死ぬようにすること。
3つ、呼び出した悪魔の全ての責任は主、カインが負うこと。
この3つが守れるなら、呼び出してもかまわん。あと、その正体は隠すこと」
指を一つずつ折り、説明する。
「なるほど…分かりました。重々承知しました。それでは明日、早速呼び出してみます!!」
「うむ。絶対に守るんじゃぞ!変な真似はするんじゃないぞ!」
「わかってますよ!師匠!ありがとうございました!!」
笑みを浮かべたカインは、風のように素早く、部屋を出ていった。
「本当に大丈夫かのう……」
ゆっくりと閉まる扉を眺めながら、ヘンリーはポツリと呟いた。
ふいいいぃぃぃ。
もう一本どうかな




