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見た目騙しの魔法使い  作者: 積む摘む
1 異質な子供
5/92

5

追記 改変しました

「おい」




ゾワゾワとする、ドスのかかった低い声。

子供の声帯で、こんな声を出せるものなのか。周りにいたものの背筋を凍らせる。

唯一、タイキには効果がないようだ。




「…なんだ?」


「さっきから、こっちがいい気で聞いていたからと、何ともまぁ、言ってくれたものだな。大概にしろ」



辺りにいたものの、背筋から冷たい汗が流れる。

ヘンリーは、これからカインを止めるのに面倒になるぞと、内心でため息をついた。

その言葉を間に受けているタイキは、不信感を露わにする。



「誰が、役立たずだ?大事な時に、市民を守れないやつがどんな口聞いてんだよ。ふざけんな」


「な、何を言ってるんだ?いつの話だ!?」


「お前らが、お前らの行動が遅いせいで、こっちは大切な人を失ってるんだぞ」



顔が忌々しげに歪む。実際に体験したそれを思い浮かべているようだった。

側から見る者の目に恐怖を与えるその顔。そこには微塵も笑顔は残っていない。



「ふん!たかが、庶民だろう。庶民の数人、死んでも何ともない!!我ら、貴族さえいればいいのだ!!」



ズレた思考。我らこそ至高の存在と思ってるかの如く発言。庶民がいるからこそ、貴族が成り立っているということがわかっていないようだ。

それが、カインの逆鱗に触れる。



「ああ、そうだよね。どうせ、お前らはそうとしか思ってない。醜いよね」



頭を振り、髪を乱暴に触る。



「庶民が何を言ってるんだ?お前らの代わりなんていくらでもいるんだよ!」


「そうかもね。けど、僕らからしたら、一人一人が大切な人。代わりなんていないんだよ。そんなのもわからないの?」


「ごちゃごちゃと、五月蝿い庶民のガキめ!そんなことを言ったところで、戦況は変わらない!!」



言葉と同時に、魔法も絶え間なく飛び続ける。



「はあ…ごちゃごちゃ五月蝿いのは、お前だ」


「何を……?」



言いかけた、その言葉は途中で消えていった。

自然と無くなったわけではない。突如として頭部に激しい痛みを感じたからだ。





「よかったですね。これで、庶民である僕の声を聞かなくて良くなって」


「ぐがあぁぁ!!!!俺様の耳がぁ!!」


カインが、誰の耳にも留まらないほどの速さで魔文を詠唱し、風の刃がタイキの片耳を削ぎ落とした。

その刃すらも、誰にも見えなかった。


あまりの痛さに、魔法を撃つ手を止めて、耳を抑える。




その様を眺めるカインの顔は、いまだに怒りに染まっている。


「さて、もう片方も要らないですよね?本当に必要な声を聞けず、自分を褒め称える声しか聞けない、ただの飾りですしね」




痛みで疼くまるタイキの元へ歩いていく。



タイキは必死に魔法を放ち続ける。

しかし、そのどれもが当たらず消えさった。それと同時に、タイキの希望も消え去っていく。



「…や、やめろ!!!俺様に近寄るなぁ!!」


ガタガタと、体が震え、顔が恐怖に染まる。額から夥しい量の汗が垂れる。

先ほどまでの威勢はとっくに消えていた。



「じゃあ、さっきの発言を取り消して、謝ってくれますか?」


「…俺様に命令をするの、ギャァ!!」





反発しようとしかけたタイキのもう片耳を容赦なく切る。



「で?どうなんですか?」


「…すみませんでした!!!俺様が間違っていました!!」



このままでは命が危ないと感じ、土下座するタイキ。



「他には?」


「ヘンリー様が1番強いです!役立たずは俺です!」


「よろしい」


無理やり言わせたようにも感じるが、カインは満足している。




「それじゃ、僕の勝ちってことでいいよね?」


「もちろんです!」


「だそうですけど、ゲシンさん?」




あまりにも予想だにしない事が起こっていたため、呆気に取られていたゲシンに声をかける。

声をかけられて意識が現実に戻ったようだ。


「…あ、ああ。それまで!勝者、カイン!」



ゲシンがその言葉を告げる。それと同時に、3人を隔離していた結界が消える。





「師匠ー!どうでしたか?」


テトテトと、ヘンリーの元へ小走りに寄っていく。

さっきまでの不機嫌さを一切感じさせない声。そして、ニコニコの笑顔。



「…カイン…ちょっとやりすぎじゃないかのう……」


「仕方ないでしょう?あれだけ言われたら、カチンときますよ」


「…いくら、回復魔法があるからと言っても、少しやりすぎな気もするがのう…」


「あんな、舐めたやつにはこれぐらいしないとダメですよ!」


「ううむ…なんじゃか、どんどんカインの考えが良くないようになっているような…」


「気のせいですよ師匠!」


ペシペシと叩くカイン。気が重くなると同時に、露骨に撫でるのを避けてくるカインに残念に思うヘンリーだった。


他の者達は、そんなカインの様子の変化に恐れを抱いていた。また、絶対にカインを怒らせないようにしよう。そう心に刻んだのだった。




そして、カインは今後こう呼ばれることになる。



“見た目騙しの魔法使い”

はい。明日は2本ぐらい出します。

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