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「…え?」
恐る恐る、目をあける。
狭くなった視野に映ったのは、首が無くなった魔族だった。
「大丈夫か?!」
カインの後方から、一つの集団が走ってくる。
先頭を走るのは50歳ほどの男、そう、ヘンリーだ。
「…なんとか、危機一髪じゃったな。お主ら!ぼさっとしとらんと、早く助けにいくんじゃ!!」
「「「はい!」」」
後ろにいたものたちに命令を下し、ヘンリーはカインの元へよる。
「大丈夫か?」
「…おじさんは?」
「わしはヘンリー。王宮魔法使いの1人じゃ」
「…ヘンリーさん?」
「そうじゃ」
「…僕のお父さんと、お母さんは?」
足元に転がる、二つの人を見て、どういうことか察する。
「…死んじゃったの?」
「…そうじゃ」
「…もう…会えないの…?」
「……そうじゃ……」
カインはそれを聞くと、両方の目から雫が溢れ出す。
片方は紅く、片方は透明。
声をあげて、泣く。
ヘンリーは頭を撫でて宥めていた。
「お前が、ここで1番強そうだな」
ばっと、顔を上げるヘンリー。
そこには、蝙蝠のような1対の翼を持った魔族がいた。
「…なんじゃ?こっちは忙しいんじゃが?」
「そういうなよ。つまんねえ奴とやりやってもおもんくねえんだ。ちょっと付き合えよ」
「…はぁ……仕方ない……」
ため息を吐いて、立ち上がる。
「ほれ、主は少し下がっておれ」
「……うう………はい………」
言われた通り、ヘンリーから離れる。
「さあ、始めようぜ!俺も、魔法が得意なんだよ!!」
魔族はそういうと、懐から杖を取り出して、魔文を唱え始める。
『風の神よ、我が願いを叶えたまへ。対象の体を切り裂き、砂埃を巻き起こす風の刃をここに!風のやい…』
「遅い」
パァン!!!
「えっ?」
魔族の魔法が発動する前、ヘンリーが即席で作り上げた水の弾丸が、額を貫く。
「ふん。誰が、お前の魔法の完成を待つか。こっちは、忙しいんじゃ」
魔族が使う魔法の欠点は、固有の魔文がないことだ。昔の人類がそうであったように、センスがあるものしか魔法を撃てない。
そして個人が放つ魔法を、個々で作るため、色々と欠点が多い。
それに対して、人類が持つ魔文は作られた当初から、改良が加わっているため、欠点が少ないのだ。
「ヘンリーさん!こっちも終わりました!」
辺りに散らばって、魔族と戦っていた者たちが戻ってきて、報告する。
「うむ。それで、被害は?」
「……村民50人のうち、半数ほどがやられました…」
「チッ……クソ貴族どもが……何が、平民なんて助けなくていい、じゃ。殺してやろうか」
忌々しげに、顔を歪めるヘンリー。その顔に、他の者たちは恐怖する。
「…それで、後ろの彼は?」
気まずい雰囲気をどうにかするため、話を変える。
「おお、そういえば何も言っておらんかったな。彼は……ええと、名前は?」
「……ぐすっ………カインです……」
「カインか。で、カインは親を殺された。奴らにな」
「……そうでしたか……」
顔を、俯ける。
「…それで、カインをどうするんですか?」
「う〜む……とりあえずこの村の復興は、特に何もしてないのに威張ってる国の騎士どもに任せるとして、カインをどうするかのう……」
「ヘンリー様が引き取ればいいじゃないですか?」
誰かがそんな事を言い出す。
「確かに。それはアリですね」
「…いや、なしじゃろ…」
「子供ですよ?癒されますよ?かわいいですよ?」
「………」
「それに、ヘンリーさんは結婚してないでしょう?なら、いい機会じゃないですか」
「…カイン。主はどうしたい?」
困ったヘンリーは、当事者であるカインに聞く。
「……僕は、どっちでもいいです……」
「う〜む……その返答が1番困るんじゃが……」
「いいじゃないですか。魔法でも教えてあげれば。優秀になるかもしれませんよ?」
「おじさん、魔法使えるの?」
突然、カインが会話に入ってくる。
「そうじゃぞ?わしが1番強いと言っても過言ではないはずじゃ」
「…じゃあ、僕に魔法を教えてください…」
「ほ?何故?」
「……復讐するためです。奴らを殺す手段が欲しいです」
真剣な表情で訴えかける。
「……そうか……わかった。主を、わしの次に強い魔法使いにしてやる」
「ガチで引き取るんですか?!」
「今更なんじゃ?言い始めたのは主じゃろ?それに、カインを放っておけないじゃろ。こんな怨念もりもりのやつを置いておいたら、何しでかすかわからんしな」
皆、呆気に取られる。
「それより。とりあえず、寝泊まりできる場所と、ある程度生活できるようにはしていくぞ。さっさと終わらせて、あとは騎士団にお任せじゃ」
「「「了解です!」」」
ヘンリーの命令に従って、行動し始めた。
整えている間、カインは静かに眠る2人をじっと眺めていた。
結構時間かかりました。
ただ無双を期待してる人、もうちょっと待ってください。




