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見た目騙しの魔法使い  作者: 積む摘む
3 楽しい今と、辛い過去
44/92

43

長め

「っ………あ、あ…」


その光景を目にしたカインの手が、足が、体が。全身が震える。

顔も少しながら青い。

若干ながらも、息が上がり始める。




「おい、カイン?大丈夫か?!」


その様子を、不審に思ったグレンが問いかける。



「…あ……ああ……」


あやふやな返答しか返ってこない。

体の震えも徐々に大きくなっていく。




「あああああぁぁぁぁぁ!!!!」


突然、背を向けて走り出す。



「おい?!カイン!どこにいく?!」


「ああああああ!!!!」



グレンの声は届かず、一目散に逃げていく。




「チッ……よくわからんが、撤退だ!!魔法で牽制を続けろ!!!」



その指示に従って、各々が魔法をM53に放ちつつ、後ずさる。

ダメージが入っている様子はないが、




「おらっ!!これでも喰らえ!!」


グレンがM53向けて、特大の爆発を起こす。




M53は、視界を奪われ、標的を見失う。


「……ニゲタカ………マアイイ。イツデモコロシニイッテヤル」


元いた場所へと歩き出した。




****


「おい、カイン!止まれ!」


「ああぁぁ!!」


「カイン!!止まるんだ!」



必死に、逃げ惑うカインを、グレンはがっしりと掴む。



「っは………僕は何を……」


「大丈夫かよ、カイン。急に発狂して、走り出したから心配したんだぞ」


「…そうでしたか……すみません……」


ばつが悪そうに、顔を俯ける。

額からは汗が流れ、滴っている。



「…やつは…?」


「一旦撤退した。追ってきている様子はないようだ」


「そうでしたか」



辺りを見渡すと、みんながぐったりとして休んでいた。



「それで、お前は急にどうしたんだよ?」


「……レザリーさんが傷つくのを見て、少しトラウマが思い出されて……」


「トラウマ?」


「……はい………グレンさんには昔、一度話しましたよね?」


「え〜っと…、親を殺されたって話か?」


「はい。僕の親は、僕が子供の頃、魔族に殺されたんです」



顔を俯けて、ぽつぽつと話し始める。


****

昔、カインが生まれた村では、魔族の襲撃があった。

敵は特殊な転移魔法を使い、城壁を越えたのだ。



運悪く、魔族が転移した場所がカインの生まれた場所であったため、魔族たちはその村に住んでいたものたちを蹂躙し始めた。



「お前らだけでも逃げるんだ!!」


「…あなたは…?!」


「…俺は、あいつを足止めする。その間に、お前らは逃げるんだ…!」


そういうと、彼は壁に掛けてあった剣を抜き取り、魔族目掛けて走り出した。



「…っ、カインちゃん、いきましょう」


「お父さんは?どこに行ったの?」



純粋無垢な表情を浮かべる。

子供であるため、何が起こっているか、どうするべきかがわかっていない。


「…お父さんんは、私たちを生かすために戦いに行ったの」


「すぐに返ってくるかな?」


「………そうね。さあ、私たちもいきましょうか」



頑張って、笑みを浮かべる。唇は、微かに震えていた。

その様子に不信を覚えたカインだったが、連れられるがままにする。




ドゴオオン!!!!



家を出ようとする2人の、足を止めるほどの爆発轟音が響き渡る。


そこは、カインの父が出向いて行った方からだった。



「さあ、早くいきましょう!」


カインは抱き抱えられて移動する。




一歩、二歩…踏み出した足取りは、先に進むことなく、急に倒れ込む。



そのまま、抱き抱えられていたカインは吹っ飛ぶ。


「お母さん?どうしたの?」


「………」


「お母さん…?お母さん?」


ぺしぺしと、母を起こすために叩く。しかし返答はない。



母の背中を見る。そこには、体を貫かんとする大きな傷ができていた。



そこから、血が流れ、地面を濡らす。



カインは、それを触り、不思議がる。



「……ごめんね……もう……私は……むりだわ………」


「お母さん?」



母は、カインの手をぎゅっと握り、無理やり笑みを作る。


「……ごめんね……幸せにできなくて………カインは……長生きするんだよ………」



それを最後に、握りしめていた手の力がスッと抜ける。



「お母さん?お母さん?」


ゆさゆさと、体を揺さぶる。声は返ってこない。



「やっと死んだか。手間暇かけさせやがって」


その奥から、剣を持った1人の男がやってくる。

しかし、見た目が異常で、額に角が生えている。



「おじさん、誰?」


「ああ?俺は、魔族だよ魔族」



カインは、意味がわからずに首を傾げる。



「お父さんは?」


「お父さんだと?こいつのことか?」



魔族の男が、何かを放り投げる。



「っ!お父さん!」


僅かに息があるようだったが、もう虫の息だ。



「…カインか……すまんな……俺にはもう無理だ……」


最後の力を振り絞り、カインの頭を撫でる。



「………お前は……長生きするんだぞ……」


「お父さん?お父さん!!」



必死に呼びかけるも、声は返ってこない。



「お父さん!お母さん!」


「ああ、そいつらなら死んだな」


「死、ぬ?」


5歳であったカインには、全く理解できないことだった。



「そうさ。この世からいなくなることだ」


「うそ、だよね?ここに、お父さんとお母さんいるんだもん」


「いないさ。もう、どこかにいったんだ」



必死に、2人の死骸を揺さぶるが、全く反応がない。

2人からは、いつもの温もりはなく、とてつもなく冷たい。




「嘘だっ!!嘘だっ!!!そんなはずがない!!!」



カインの瞳から、ボロボロと涙が溢れる。



「おしゃべりもこれくらいにして、俺も仕事をまっとうするか。お前も、親と同じところに送ってやるよ!!」


血に濡れた剣を振り上げる。



その間も、必死に呼びかけ、揺さぶる。




「そんなはずない!!!嘘つきだっ!!!!」



途端、カインからとてつもない魔力が溢れ出す。

魔力が、風圧となり、魔族に吹き付ける。




「っ、なんだ?気のせいか?」


魔族は不審に思いながらも、振り上げた剣を振り下ろした。




ザン!!!!!




「ああぁぁぁ!!!!!!」


咄嗟に体を逸らしたため、体を切り裂くはずであった剣は、片方の目を切り裂いた。



カインに激痛が走り、泣き叫ぶ。




「ちっ…、まあいい、死ねっ!」


避けられたことを不服に思いつつも、再び剣を振るった。



真っ直ぐに、カインを捉えた剣。





咄嗟に、残った片目を閉じる。





ザン!!!!!!





血が溢れ、地面に赤い水溜りを作り出した。

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