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遅くてすみません。
コンコンコン、と部屋の扉を叩く音。
一向に返事が返ってこないので、扉を開けるカイン。
「戻りました」
「……おかえり……お疲れ」
部屋に入ってきた者に視線を向けず、紙の上でペンを踊らせるルイナ。
どこからか取り出した眼鏡をかけている。
机を挟んで、対面に座る。
「…それで、完成したんですか?」
「……ん……」
ペンを置き、机の端に置いてあった物を持ってくる。
「これ。ちょっと使ってみてくれない?」
「分かりました」
ルイナはそれを渡すと、再びペンを取り出してリズミカルに動かす。
望遠鏡を手に取って、窓の外を見る。
「あれ?」
しかし、ぼやけた景色しか見えない。
「あ、言い忘れてた。それ、その目に近いところにあるボタンを押して。それで見れるよ」
言われた通りに、ボタンを押して再び、望遠鏡を覗く。
「おお。遠くまで見えますね」
「あと、オプションとして、幾つかボタンあるでしょ?押したものによって倍率が変わるから」
試しに、別の物を押す。
すると、先ほどあっていたピントがズレる。
「えーっと、ボタンは4つあるから……4段階で調整可能だよ。頑張ればもっと増やせるかも」
「なるほど…うまく行ったようですね」
望遠鏡の確認を終わらせ、再び椅子に座る。
小さな部屋に、ペンが紙の上を踊る音が鳴り響く。
「……今は何してるんですか?」
「時間があるから、新しい魔道具の設計」
「…できるんですか?」
「理論上は」
紙に視線を落としたまま、返事する。
再び、ペンの音しか聞こえなくなる。
ルイナの様子を、じっと眺めるカイン。
「………こんなところかな……」
ペンを置き、伸びをするルイナ。
「…完成ですか?」
「いや、まだ作ってないから完成とは言わないかな」
「そうですか…」
完成した図面をじっと眺めるルイナ。
前に倒した顔に、長い緑の髪が掛かる。
それに気にすることなく、図面を眺める。
目にかかった髪を、丁寧にどかすカイン。
「………どうしたの?」
「いや、かわいいね。眼鏡も似合ってるよ」
微笑みを浮かべるカイン。
「……ありがと……」
ぽっと頬を染めるルイナ。
「その眼鏡、何処から持ってきたの?」
「…持ってきたって言うか……持ってたんだよね。ポケットに入れてたんだ」
「へ〜そうなんですね。誰かからの貰い物ですか?」
「うん……昔、お母さんから貰ったの…」
「…そう、でしたか…」
よくないことを聞いたと思い、気まずくなるカイン。
「これはね、長時間物を見てても、疲れないようになってるんだ。お母さんが、4歳の誕生日にくれたんだ」
「大切な物なんですね」
「うん。カイン君は、何か大切な物はあるの?」
考えたこともなかったことを聞かれて、返答に悩む。
「そう、ですね……。僕にとって大切なものは……みんな…ですかね」
「みんな?」
「そう。師匠や、ファインさん、レザリーさんに、ディネさん。他にも、準筆頭のみなさん。みんなが、僕の大切なものというより、人、ですね」
「そうなんだね」
微笑みを浮かべるルイナ。
「あ、でも、もっと大切なものがありますね」
「なになに?」
「それは、ルイナです」
一瞬、意味が理解できないと言わんばかりに、きょとんとする。
しかし、すぐに意味を理解して、顔を赤くする。
「あ、ありがと…」
「ふふっ……あ、そういえばなんですけど」
「なに?」
「ちょっと、作ってほしい魔道具があって」
そう言い、紙に思いついたことを書き込んでいく。
「なになに……複数の魔法が打てる魔道具?」
「そうです。これ一つで、いろんな種類のものを撃てれば、複数持つ必要がなくなりますからね」
「あー、使えない人ようのやつね。一個で一つは効率悪いからってことね。ちょっとやってみようかな」
「魔法の内容については、僕からいろいろ希望があるので任せてくれますか?」
「いいよいいよ。できれば、魔文の短いやつがいいね」
「分かりました。それじゃ、よろしくね」
「うん。あ、でも先に私は思いついたやつを作ってからね」
「分かりました。それじゃあね」
早速、魔道具の製作に取り掛かるルイナを部屋に残して、出る。
部屋を出た途端、顔が熱くなる。
「……ルイナ、可愛すぎる……あんなの、反則でしょ…」
必死に、赤くなる顔を隠して、自室に戻るカインだった。
どうでしたか?できれば感想ください。
明日は、2本かもです。




