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辺りを、太陽の光を奪った月が照らす時間。ひんやりとした空気が漂っている。
薄暗い廊下を小さな1つの人影が、歩いている。暗闇に蒼い光が二つ、光っている。
ちょこちょこと、とある場所を目指して歩く子供。
人影は、一つの部屋の前で止まる。
小さな背を精一杯伸ばして、ノッカーを掴み、引っ張る。
部屋の中から、光が漏れ出て、人影の正体がはっきりとわかる。
「なんじゃ、カイン?こんな時間に何用じゃ?」
いつもなら、尋ねることのないカインの訪れに驚くヘンリー。
「師匠、夜遅くすみません」
「よい。それより、中に入るが良い。外はまだ寒いじゃろ」
「では、お言葉に甘えて…」
部屋の中に入るカイン。
一瞬、外の暗さと中の明るさの差で、目が見えなくなるが、すぐに戻る。
「それで、なんのようじゃ?」
ヘンリーの部屋に備え付けられた椅子に腰掛けたカインに、飲み物を用意し、用を聞く。
「ルイナのことで、少し相談で…」
「おお、どうじゃ?うまくいっておるか?」
興味深そうに尋ねる。
「まあ、そうですね…彼女、精神的に結構辛そうですけど…」
「…そうか……まあ、頑張るんじゃ…」
沈黙が2人の間に流れる。
「…あ〜それで、今日来た理由は?」
「えっとですね……魔道具を作る場所ってありますか?」
「ほ?」
予想外すぎる質問に困惑する。
「…何故…?」
「彼女の、趣味が魔道具を作ることらしいんです」
「おお、そういうことか……」
「…どう…ですかね…?」
「あるぞ」
「ですよね。ないです………え?」
期待してなかったカインは、予想した答えと違ったことに困惑する。
「あるぞ。魔道具を作る場所は」
「あるんですか?」
「うむ。昔、趣味で新しいなんかを作ろうとしたんじゃ。主の義眼もそうじゃ」
「これも?」
右目を手で抜き取るカイン。
知らないものからしたら、恐怖ものだろう。
「そうじゃ。……あんまり、みてて気分のいいものじゃないから、戻しとくれ」
「ああ、すみません…」
取り出した義眼を再び戻す。
「それで、場所の提供と、軽い素材の提供でええかな?」
「そうですね。そんなに提供してくれれば、十分だと思います」
「場所は……あの立ち入り禁止になってる部屋じゃ。主の隣じゃな」
「ああ、あそこですか…あそこ、なんで立ち入り禁止になってるんですか?」
「ん?ああ、色々危険物があってな。魔道具を作るものじゃないとわからんものが色々あってな」
「そういうことですか…。わかりました。ルイナにも注意を呼びかけておきます」
「うむ………さて、主はそろそろ寝るんじゃ。まだ、子供じゃからな」
「言われなくても分かってますよ。それじゃあ、お邪魔しました」
静かに扉を閉めて、暗闇を進む。
暗闇に一切躊躇いを持たずに、自分の部屋まで歩く。
扉を開ける。
部屋は、月の光によって薄明るく照らされている。
「………すう………すう………」
大きなベッドで、寝息を立てる少女。
緑色の髪が、月の光を反射して美しく輝いていた。
「…君を…1人には…させない…」
その綺麗な髪を、撫でながら、ぽつりとつぶやいた言葉は、闇に消えていった。
ギリギリすぎる。
明日は、2本かな…




