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「そろそろ、見覚えのある場所になってきましたか?」
歩くこと数十分、王宮に続く大通りを外れ、少し減った人だかりの中を進む。
「う〜ん……もうちょっとで思い出せそうなんだけど………ちょっと、あそこの角を曲がってみない?」
「わかりました」
てくてくと、歩いて角を曲がる。
「どう?何かわかる?」
「あれ…?なんだか見たことあるような……確か、あそこを曲がったところ…?」
心臓の鼓動とともに、ルイナの歩く速度も速くなっていく。
カインを握る手には、汗が浮かぶ。
「……みんなに………また……あいたい!」
ほとんど走るのと同じほどの速さで、勢いよく飛び出す。
「あ、れ…?」
ルイナは、そこで目にした光景に思わず目を見開いた。
「……ここが“孤児院だった”場所ですか?」
「……そう……」
元々、孤児院があった場所は更地になっており、そこに建物があった形跡は、ほとんどなかった。
「……みんな……どこ行っちゃったんだろう……」
その光景を呆然と眺めながら呟く。その様子は、どこか哀愁が漂っていた。
「おや、そこにいるのは…ルイナさん、ですか?」
突然、横から声が聞こえ、2人ともばっと顔を向ける。
「院長!」
「やっぱりそうでしたか。私の目に、迷いはなかったようです」
暖かい微笑みを浮かべる、院長。顔や手の所々には皺が刻まれており、歳をとっていることがわかる。
「…院長………みんな、どこに行ったんですか…?」
「……彼らはあの後、それぞれ新しい親に引き取られました…」
「…そうですか……みんな、大丈夫なんですね……」
胸を撫で下ろすルイナ。
「今のところは、ですけどね…。ところで、ルイナさんは何処かに引き取られたんですか?」
「…まあ、あの後、いろんなことがありましたけど、今はこのカイン君が世話をしてくれてます」
「君が、ですか?先ほどから気になってはいましたが……誰なんですか?」
院長の目が大きく開かれ、それと同時に困惑してくる。
「どうも、王宮魔法使い準筆頭のカインです。訳あって、ルイナを引き取ることになりました」
さらに、院長の顔が驚愕に染まっていく。
「ほんと、ですか?子供の冗談…」
「院長、ほんとですよ。あと、カイン君は15歳らしいですよ?」
驚きの連続で、物を言えなくなる院長。
「院長?大丈夫ですか〜?」
「……もしかして、君はあの噂の……見た目騙しのカイン、ですか?」
ーーーどっからその情報が流れたんですかね。風の噂ってやつですかね。
「そんなふうに知られてるんですね。多分あってますよ」
苦笑しながら答えるカイン。
「ははぁ…そうでしたか………では、何があって、カイン君が引き取ったんですか?」
「それは……」
何があって、カインが引き取る事になったかを伝える。
「…なるほど……そんなことがあったんですか……あの時は、ふらっといなくなって心配したんですよ?」
「…ごめんなさい…」
「まあ、無事で何よりです。これで、みんなが引き取られたって事ですね」
再び、口元に暖かい微笑みを浮かべる。
「……すみませんね……ここを潰してしまって…」
「…それを言えば私だって、役に立てなくてすみませんでした…」
「…ルイナさんが謝る必要はないですよ。逆に、魔道具を作って利益を出してくれた事には、感謝しかありません………もっと、私がお金を稼げればよかったんですけどね……」
院長の顔に、苦笑いが浮かぶ。その笑みは自嘲にも見えた。
「…まあ…何はともあれ、皆さんも無事引き取り先が現れてくれて、本当に助かりましたよ。これで、私は安心です」
「そうですね……」
2人の視線は、更地をじっと眺めていた。
脳内ではつい先日まであった、ここでの賑やかな雰囲気が浮かび上がってくる。
今は、賑やかな雰囲気など一切なく、風が強く吹きつけていた。
「…カイン君、と言いましたね」
「なんでしょうか?僕に何かありましたか?」
「………ルイナさんを、頼みましたよ……彼女、過去に色々あった人ですから…」
「…知ってます…本人から聞きましたから」
2人の視線は、未だ、更地を眺めるルイナに向けられる。
ルイナは、それに気づかないまま、じっと眺めていた。
「…それでもですよ……みんな、彼女のことを理解するのは難しいですしね…」
「わかりますよ」
「…え?」
「僕には、ある程度ですが、彼女の気持ちは理解できます」
「……15歳しか、生きていない君に、何がわかるんですか?」
少しの怒りがこもった声。
それに怖気つくこともなく、カインは院長をしっかりと真正面から見る。
「実際に、体験したことがあるからです。それだけのことです」
カインに向けられる視線に、驚きが含まれる。
「…そうでしたか…、心配した私が馬鹿でしたね…」
苦笑いを浮かべ、頭をかく。
「…確かに、ルイナのことを全て理解することはできません。………でも、実際に殺された人じゃないとわからないことは、わかります」
真剣な眼差しを向ける。
「だから、出来る限りのことはします。彼女から貰ったものは大きいですしね」
「…頼みましたよ?絶対に、彼女を1人にしないでください」
「もちろんです」
しっかりと頷く。決意のこもった目の奥は、蒼く輝いていた。
長い2本。
明日は、2本ですかね。できれば出します。
ブクマ登録してくれれば。3本になるかもです




