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見た目騙しの魔法使い  作者: 積む摘む
1 異質な子供
3/92

3

もうちょい

3/5

次の投稿は30分後です

少しして、子分はマネキン人形のようなものを抱えて帰ってきた。


「よし。これは知ってもいるとは思うが、魔法の火力を測るための魔道具だ!」



魔道具、それは魔法の技術で作られらた特別な道具だ。

杖は魔道具とは少し違い、特別な効力を持った鉱石を取り付けたもののことを指す。



この人形は、魔法を受けた際のダメージを100点中何点かで示してくれる便利な魔道具だ。

入団試験などにもよく使われていて、あちこちに焼けた跡や傷などが見られる。




「それじゃあ、わしが起動させるが良いな?」


ヘンリーは、タイキから魔道具を受け取ると、自身の魔力を注ぎ込んでいく。



数十秒すると、ビクン!と体を震わせて人形が立ち上がる。





「ふむ…もう少し足しておくかのう…」


人形の頭にポンと手を置き、さらに自身の魔力を注ぎ込んでいく。この道具は、注がれた魔力の量によって耐久が変わるのだ。




「こっちは準備ができたぞ。いつでも大丈夫じゃ」



タイキはそれを聞き、紅い色の鉱石が取り付けられた新たな杖を取り出す。この杖も同様に特殊なもので、魔法の火力を上げる能力を持ったものだ。

杖が2本、すなわち大きな家が二つ建つとなると、平民出身である者は白目を剥きそうだった。それと同時に、嫉妬の視線を飛ばすも、タイキは集中しているのか、慣れているのかわからないが、全く気になっていないようだ。



『火の神よ、我が願いを叶えたまへ。太陽から噴き出す紅炎の如く、あらゆるものを消し去る、擬似的なその火力を我が目の前に!プロミネンスッ!!!』



先ほどよりも幾分か長い魔文を唱えられ、杖の先から紅い龍が現れ、あたりの温度が急激に上昇する。

紅い龍は人形に巻きつき、対象を焼き尽くさんと、その牙で噛みつき、尻尾で殴っているかのようにも見えた。




数十秒後、紅い龍は四散し、そこには、布が少し焦げた人形が立っていた。


魔法を撃ち終わったタイキは、肩で息をしており、額から滝のような汗を流している。


「…はぁ…はぁ……どうだ見たか!何点だ?!」



残った力を振り絞るかのように叫ぶタイキ。


人形は何処からか紙を取り出し、悩むような素振りを見せたかと思うと、すぐに数字を書いて表示する。



「70点!どうだ!これで俺様の強さがわかっただろう!」



結果に満足して威勢を取り戻すタイキ。子分からは歓声が上がり、囃し立てられ、さらに気分が良くなる。



「70か…。なかなかだね。ヘンリー様が魔力を注ぎ込んだことだし、どうせ馬鹿みたいに硬くなってそうだしね」


「ああ。そうだな…多分、ダイヤモンドぐらいだろう」



魔法というのは、初級、中級、上級の三段階で、上級になればなるほど術式が長く、そして複雑化していく。

それを維持するためには、とてつもない気力、集中力、そして技術力が必要になる。


タイキが放った魔法は中級。しかも、火力を上げるため、術式を大きくしていたため、制御の難易度がとても高かった。




魔法の火力を上げるためには、術式を大きくし、そこにより多くの魔力を注ぎ込む必要がある。言うなれば、大きな鋳型を作り、そこに溶かした鉄を流し込むようなものだ。

大きくなったそれの形を維持するのは難しい。しかし、タイキはやってのけたのだ。



成功するかどうかは運だったが、うまくいったことも重なり、上機嫌になっている。



「さあ!次はお前の番だ!精々、ミスって暴発しないようにな!」



魔法は暴発することがある。例えるならば、鋳型に鉄を流し込み過ぎてしまい、鉄が溢れてしまう。



これに似ており、作り上げた術式に魔力を流し込み過ぎて、術式が壊れ、暴発してしまうことがあるのだ。



「はいはい。忠告ありがとうございます」


微塵も有難いとは思っていない声色で、適当に返すカイン。子分はいちゃもんをつけるが耳に手を当てて、無視するよう努力する。

耳を塞いでいるのに無視するとは、これいかにと思うカインだった。



一度、目を閉じて再び開く。

そこには、先ほどまでの面倒な顔は消えており、蒼色の瞳は人形だけを見つめていた。



『風の神よ、僕の願いを叶えたまへ。万物を切り裂く刃をここに。風の(ウインドオブカッター)


カインは魔文を唱え、腕を振るう。

瞬間、風の刃が飛び出る。




風の刃は目にも留まらぬ速さで人形に触れ、甲高い金属音を鳴らし、火花を散らす。



風の刃と、人形。どちらも、引け劣らない。



数秒後、風の刃はフッと消え、人形の胴体には大きな傷ができていた。人形の内部の機構がくっきりと見えるほど、大きな傷だ。



「ふう…。こんなもんですかね。どうでしたか?」



人形は紙を取り出し、書き込む。

そして、掲げられたそれには99点と書かれていた。



「よしよし…!完璧な調整。我ながらうまくいったものですね〜」


「さすがじゃな。して、カインよ。主なら100も行けたじゃろ?」


「まあ、そうですね。けど、あれを完全に壊すのはちょっとあれなので…」


近づいてくるヘンリーに警戒しながらも、褒めてもらえて喜ぶカイン。

そのやりとりに、周りのものたちは再び唖然とする。



「…は、ハッタリだ!俺より強いはずがない!そう…そうだ!カインが攻撃を加える際に、ヘンリー様が人形の機能を切ったんだ!」


苦し紛れの言い訳をするカイン。




「そんなことするわけないじゃろ。何でそんな面倒なことをせねばらん。魔力が無くなるまで放置しとくわ」


「…う、嘘だ!そんなはずがない!杖なしなのにそんな火力を出せるはずがない!」


「出せますよ?魔文をちょこっといじって、術式を変えれば」


「はあ?そんなこと、できるわけがない!ハッタリだ!」



どうにかしてハッタリであることを証明しようとするが、いい案が浮かばず黙り込んでしまうタイキ。


周りのものも哀れみを持った視線でタイキを見ている。





「なあ、タイキ。もうわかっただろ?お前じゃ勝てない」


グレンが言葉を掛ける。

わなわなと、タイキの肩が震えているのが誰からでもわかった。




「…いや、まだだ!最後の内容、実際の戦闘だ!いくら魔法が強くても、戦闘に活かせなければ意味がない!そうだろう?!」


辺りにいる者に必死に訴えかける。

絶対に認めたくない。そんな意思を感じさせるタイキの言葉。




「…まあ、そうじゃな。一理ある。はあ…、カインよ、よいか?」


なんと、それがヘンリーによって承諾される。



「いいですよ、全然。それに、まだ対人はやったことないですしね〜」


「…フィールドを用意する。それまでしばし待っておれ」




そういうと、ヘンリーは地面に術式を書き込んでいく。




ふんふんふーんと、呑気に鼻歌を歌うカイン。

その様をタイキは忌々しく睨んでいた。


両者の差は、精神面でも一目瞭然だった。

ぜひ、ブクマ登録、いいね、評価お願いしましす。

追記、改変しました

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