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ちょいと長め
「よくやったぞカイン。あとはわしに任せておけ」
「僕も殺したいんですけど…」
不満そうに呟くカイン。
「今回は譲ってくれんかのう」
「…分かりました。じゃあ、戻ってますので、お気をつけて」
それだけ言うと、カインは魔族たちに背を向ける。
「さあ、行きましょうか」
人質の少女ににっこりと笑い、転移を発動させて消える。
「さて、これで不安要素は無くなったわい。主ら、覚悟せい」
気迫のこもった声を発する。
その声を聞いただけで、魔族たちの体からは汗が流れ、恐怖を覚える。
「ははっ!面白えじゃねえか!」
デギだけは違い、強者と戦えることに興奮していた。
「わしらの大切な国民を人質に取った。それ相応の罪を償ってもらうぞ!」
そう言い、杖を取り出した。
『水の神よ、我が願いを叶えたまへ。ここに、地を濡らし、人を濡らす雨を。恵みの雨』
魔法が発動し、あたり一帯を濡らす、大粒の雨が降り始める。
「おいおい…そんなしょぼい魔法しか撃てないのか?期待はずれだぜ!」
落胆しながらも、警戒しつつ、突撃するデギ。
残像が残るほどの速さで、一気に距離を詰める。
他の魔族たちも、ヘンリーを殺すべく、デギの後に続く。
「そんなに焦るでない。さっき準備が終わったところじゃ」
そう言うと、再び魔文を唱える。
『万物を操る神よ、我が願いを叶えたまへ。対象の温度を、どこまでも低く。物質冷却』
発動した瞬間、ヘンリーを中心としたあたりの水が凍りつく。
「なっ!」
全身を濡らしていたデギたちは、体を氷で覆われることになり、一瞬だが身動きが取れなくなり、転倒する。
かなりの速度で走っていたので、頭から倒れる。
「ほらほら、どうじゃ?地面にひれ伏せる気持ちは」
「テメェ…!絶対殺す!」
すぐさま、体に纏わり付いている氷を割り、立ち上がる。
ーーー幸いにも、水を氷にさせる魔法は常時発動しているわけではなさそうだな…。なら、今のうちに一気に…!
そう考え、動き出そうとする。
しかし、相手の方が早かった。
『万物を操る神よ、我が願いを叶えたまへ。物質の性質を我が望む物に。性質変化』
魔法が発動し、内容に沿ってその現象を引き起こす。
ーーーなんの魔法だ?さっきのとは違う。だが、何も起こらない…チャンスだ!
魔法が発動したにも関わらず、何も起こっていない事に困惑したが、すぐに好奇と捉え走り出す。
10m……9m……8m……
徐々に、ヘンリーとの距離がつまっていく。
7m………6m………5m………
ーーー不発だったのか?何はともあれ、これで決め切る!
4m…………3m…………………2m……………………
近づけば近づくほど、ヘンリーとの距離の縮まり方が小さくなっていく。
ーーー何故だ?俺は本気で走ってるはずだ!何故縮まらない!
1m………………………………それ以上縮まることはなかった。
「え?」
気づいた時には、デギは地面に屈していた。
「ふむ、ここまで痛覚が鈍いやつは初めてじゃな。馬鹿だと、効きにくいのかのう」
頭上から声が聞こえてくる。
体を上げようとするが、うまくいかない。
「お前……何をした?」
「水の性質を変化させただけじゃよ」
「どういう、事だ?」
デギは何を言っているか理解できていなかった。
「簡単じゃよ。水を酸性にさせたんじゃ」
デギは自分の体を見ている。
服が溶け、その下では皮膚、そしてそこから見える筋肉、そして肉までもが溶けていた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」
思い出したかのように、痛みが全身を襲う。
「今更じゃな………ま、そう言う事じゃ。主はもう動けん」
後ろを振り返ると、他のものが痛みに悶えていた。
「さて、主が死ぬにはまだ早い。もう少し苦痛を味わってもらわんとな」
「ひっ…や、やめてください!人質で脅そうってしたのは、あいつなんです!」
死体の主将を指すデギ。
惨めな言い訳。
「で?だからなんじゃ?」
「全ての責任はあいつにあるんです!」
それを聞き、呆れるヘンリー。
「だからなんじゃ?わしらの仕事は、国民を守る事。じゃから、国民の脅威となる分際は排除せねばならん」
「やめ、やめてください!」
後ずさるデギ。
その速度に合わせるようにヘンリーは前に出る。
「さて、言い残すことはないな?」
「やめてください!お願いします!なんでもしますから!」
「じゃあ、死ね」
ザン!
ドスッ、ゴロリ。
ヘンリーが放った風の鎌が、デギの首を刎ねた。
あと少しで2章は終わります。
もしかしたら、10時とかに出されてるかも。




