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あと、3つ
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魔法
それは、生物がもつ魔力から造る、常識を覆すもの。
生物はみな、生まれた時から魔力を持っている。
それを魔法の型に流し込み、完成させることで魔法は発動する。
魔法を放つために必要なものは2つ。
1つは魔力。
これがなければまず始まらない。
そして、もう1つは術式。
術式とは、言うなれば鋳型のような物だ。
魔力を流し込むための型を作る必要がある。そこに、魔力を流し込むことで魔法は完成する。
必要なのはこの2つだけだ。
しかし、そう簡単には魔法は撃てなかった。
何故ならば、術式を作るのが難しいのだ。
先ほどにも述べたように、術式は鋳型のような物だ。
一般の人が見様見真似で砂を、鋳るべき凹凸の形を作ることはできないだろう。
それと同様に、普通の人が術式を作ることはできない。
撃てなかった。そう、昔はそうであった。
その常識を覆したのが魔文だ。
魔法文字、と呼ばれる特別な文字で書かれた文。それが魔文だ。
この魔文は、昔の偉い人たちが作り出した叡智の結晶と言っても過言ではない。
これを、読む。それだけで術式が完成するのだ。
そして、完成したそれに魔力を流し込むことで魔法は発動する。
この魔文の登場により、誰でも魔法を使える時代になった。そしてそれと同時に、埋もれた才能が世に出るようになったのだ。魔力の量が多いものの、術式を作れない者がいなくなったのだ。
これにより、各国の戦力は増強され、さらに強くなった。
話は戻って、王宮の魔法修練場。
カインとタイキの対決を、王宮魔法使いたちが見守っていた。
「まずは、魔法精度からだ!ここから、あの離れた的に魔法を当てる試験で勝負だ!」
タイキはそう言い、40mほど離れた直径30cm程の的を指差す。
「まずは俺からだ!ちゃんとみとけよみとけよ!」
そう言い、腰に吊るしてあった杖のうちの一本を取り出す。
杖の先端には、淡く輝く青色の鉱石取り付けられていた。
この杖は、魔法の精度を上げる能力を持った、特別な杖だ。これ一本で立派な家が立つほど高価な物である。
杖を前に掲げ、タイキは魔文の詠唱を始める。
『火の神よ、我が願いを叶えたまへ。魔力よ、万物を焼き貫く槍になりたまへ!火の槍ッ!(スペアオブファイア)』
詠唱が終わり、杖の先に3本の紅く光る槍が生み出され、的めがけて飛んでいく。
自然現象をはるかに凌駕したそれは、見るものを一度は驚かせ、あるものは魅了され、虜になる。
そんな魔法で作られた槍が、飛翔する。
ヒュンッ!!バスン!
飛び出した槍はどれも的の真ん中までとはいかないが、中心に近い場所に着弾する。
「ふーむ。なかなか、タイキも腕を上げたようだね」
一連の流れを眺めていたゲシンがポツリと呟く。
「ああ、そうだな。40mだろ?なかなかの精度の良さだ」
グレンもその言葉に賛同する。
魔法で40mはギリギリ有効射程なのだ。熟練の魔法使いでも100発100中は難しい。
それを杖ありとはいえやってのけたのは、なかなかの実力だ。
「さあ、お前の番だ!さっさと見せてみろ!」
結果に満足し、自信満々のタイキが振り向き、カインに言葉を投げる。
「はいはい、わかりましたよ。せっかちですよね〜」
カインはひらひらと手を振り、指定の場所まで移動する。
そして、片手を前に突き出し、手のひらを正面に向け魔文を発する。
『火の神よ、僕の願いを叶えたまへ。魔力よ、万物を焼き貫く槍になりたまへ。火の槍(スペアオブファイア』
タイキの魔文とは何ら変わらない詠唱を終えると、同様に3本の槍ができる。
彼の目の前に造られた火の槍は、タイキが作ったものよりさらに紅く、輝いているように見えた。
そして、カインはそれを放つ。
ヒュン
空気を切り裂く音が鳴り、槍はそこそこの速度で的に飛来する。
バスン!
いい音と共に、3本の槍は、全て的のど真ん中へと当たった。
「さすが、いつも通りじゃな、カイン」
「はい!ありがとうございます、師匠!」
ヘンリーに褒められ、ニコニコと元気な笑顔を浮かべながら、ヘンリーの元によるカイン。
そして、頭を撫でようとしたヘンリーを露骨に避けるカイン。
それと対照的なのが、見ていた他の者達だ。
「おいおい…まじかよ…。やべーやつだとは思ってたが、杖なしでど真ん中…」
「…さすが、ヘンリー様の養子ですね…」
グレンと、ゲシンは驚きのあまり、思わず呟く。
魔法を撃つ、というのは銃を撃つのと同じようなものだ。
杖は、例えるならば、スコープやロングバレルみたいなものだ。
銃はこれらを取り付けることで精度を上げたり、火力を上げたりできる。
同様に魔法も杖を使うことにより、魔法の精度を上げたり、火力を上げたりすることができるのだ。
銃にスコープを取り付けず、遠く離れた的を当てるのは難しい。
それと同様に、杖なしで遠く離れた的を当てるのも難しい。
しかし、カインは何ら問題ないとばかりに杖を使わず、見事的の中心を射たのだ。
これには、他の者たちも驚きのあまり声が出ない。
「…た、たまたま運が良かったな!」
これには、タイキも同様を隠せない。何とか威勢を保ちながら、カインに言葉をかける。
「たまたまじゃないですよ?それに、今日は1cmほど中心からずれてますしね」
遠く離れた的を見ながら話すカイン。細かいところまで見えているようだった。
「…っく、つ、次は魔法火力だ!おい、あれを持ってこい!」
「っは、はい!」
タイキの子分が慌てて、何かを探しにその場を離れていった。
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追記、改変しました