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改変しました
魔族との戦いから数日、プランタジネットではいつもと変わらない平和が訪れていた。
「カインさん、これはどうですか?」
「ふむ…精度を上げる代わりに、火力を下げたって感じですか…使い所によりますね…」
「じゃあ、こんな感じに…」
王宮にあるカインの自室では、ディネとカインが魔文の開発に勤しんでいた。
魔族の侵略の後、ディネは毎日のようにカインの元へと通っている。見回りの時間以外は、ずっと部屋にこもっている2人。
ディネは若干、ノイローゼになっていた。
魔文開発は、1人でやるよりは効率は上がりはしたものの、十分な成果は挙げられなかったからだ。
「…カインさん…そろそろ休みませんか?」
「もうですか?まだまだ、巡回までには時間があります。こんなところでへばってるわけにはいきません」
「いや…もう、結構限界なんだが…」
その言葉を残すと、ディネは倒れ込む。
「…そういえば、もう朝ですか。う〜ん、僕もそろそろ休みますかね…」
そういうとカインはベッドに飛び込み、すぐに眠りについた。
ジリリリリリリッ!!!!
「……んあ?なんですかね…?」
眠たい目を擦りながら辺りをキョロキョロと見回す。
音は、手につけていた腕輪から鳴っていた。
「ほら、ディネさん、起きてください。なんか鳴ってますよ」
「…ん…」
ディネも起き上がり、目を覚ます。
『こちら、第3班、メザリー。再び、魔族が来た。数は……5……』
「…はぁ?何言ってるんだ?」
「ちょっと待ってください、続きを聞きましょう」
続きの言葉を待つように言う。
『………そして…………奴らが、幼子を人質にしている………』
言い淀んだメザリーから告げられた言葉は意外なものだった。
『…こちら、ゲシン。それは、本当か?』
『ああ、にわかに信じられないが……確かに1人いる……』
『…奴らの要求は…?』
『………ここで、1番強い者の…死だ』
通話を聞いていた者が皆、息を呑んだ。
『…一度会議室に集まろう。ヘンリー様も聞こえてますよね?』
『もちろんじゃ。すぐ行く』
通話が切れ、腕輪はうんともすんとも言わなくなった。
「…ですって、カインさん。行きましょうか」
「……ええ、ええそうですね」
2人は会議室へと走る。
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数分後、会議室に王宮魔法使いたちが集まっていた。
「さて、緊急会議を始める。とは言っても、殆ど結論は出ているもんじゃがな」
その場の空気はピリピリとしていた。
「相手の要求は、ここで1番強い者の死。すなわち、わしが行って死んでこれば、幼子は解放されるはずじゃ」
「そんな!ヘンリー様が行く必要なんてないんです!俺が行きます」
「ゲシン、その言葉は嬉しいんじゃが、奴らが求めているのは1番強い者じゃ。わしが行くしかあるまい。それに、わしはもう歳じゃ。老齢であるわしが死んでも、そこまで痛手ではないじゃろ?」
「そんなことないです!ヘンリー様がいなくなったら、俺たちだけで国民を守れるか…」
「そんなに遜色せんでええ。それに、わしらの目的は国民の安全を守ることじゃろ?その為には、わしが犠牲になってもいいと思っておる」
全員が押し黙る。
「分かりました。けど、僕たちは絶対に諦めませんからね。どちらも助かることに越した事はないですからね」
「もちろんじゃよ。わしもぬけぬけと死に行くわけないわい。人質の安全が保障されたら、奴らは絶対に殺せ」
「わかってます」
カインの言葉に皆が肯定を示す。その様を満足そうにヘンリーは眺めていた。
「さて、行ってくる。主らは城壁にて待っておれ」
それだけ言い残すと、ヘンリーは去っていった。
「…カイン…お前はこれでいいのか?」
「良くないですよ。……僕は敗北なんて絶対認めません。完全勝利しか認めない主義なので。さあ、行きますよ、ディネ」
それだけ言い残すと、カインはディネを連れて、自室に戻っていった。
がんばります。