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改変しました
「へ〜カインの班の奴、なかなかやるじゃん。特にあの爺さんと、白髪の女が特にいいね」
「そうでしょう?ファインさんも昔と遜色ないぐらい強いですね。流石、“拳のファイン”と呼ばれていただけありますね」
魔法で直接攻撃せず、自身の身体能力を上げて、殴り殺す。その攻撃方法から、彼は拳のファインと呼ばれていたのだ。
「てかあの女、レザリー?」
「そうですけど?それがどうかしましたか?」
「やっぱそうだよね……あいつ、私の唯一の友達なんだよね」
布が巻かれたその顔は、レザリーをじっと見ていた。
「元気そうで何よりだよ…………あいつ、結構ヤバめの過去があってね。大丈夫かと思ったけど、もう良さそうだね」
「ヤバめの過去とは?」
「世の中には聞かない方がいいこともあるんだよ」
それだけを言うと、再び魔族を見る。
形勢はカイン側が優勢だった。
レザリーが集団を潰し、ファインが個人を潰すことで、大きな被害を出さずに一方的な攻勢を繰り広げられていた。
「……チッ!!全員、撤退!!!」
主将は勝ち目がないと見て、大音量で撤退を伝える。
その声を聞いた者が、一目散に逃げ出す。戦っていた者もあっさりと逃亡を始めた。
城壁に群がっていた者も去っていく。
「撤退ですか……意外とあっさり引くんですね」
「ふむ……不思議だな……。普段は全滅になるぐらいまで攻めてくるんだがな…」
2人はその様を不思議そうに眺めていた。
「まあ、守り切ったんですし十分ですね!」
「そうだな。さあ、帰ろうか。これから報告が待ってる」
「うげ…面倒ですね…。ファインさんが全てやってくれないかな…」
嫌そうな顔をしながら戻るカインと、メザリー。その先では鬼が待っていることを知らずに、楽しそうに談笑しながら歩いていった。
「馬鹿かお前らは!!ちょっとは考えて動け!!大体…」
戻ったカインたちには雷が落ち、その後、数時間は説教が続いた。
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「…なんだよ、あいつら!あんな強いとか聞いてないぞ!」
「主将…仕方ないですよ、あれは。規格外です。俺らが勝てる相手じゃなかった。ハズレくじを引かされたんです」
「そうは言ってもなあ!!」
撤退しながら愚痴を吐き続ける男達。
異常なのはその移動する速度と、見た目だ。
人ではない、魔族であるのは確かだった。
「…くっそ…このまま帰っても、魔王様に殺されるだけだ…!なんとかしないと…」
「ちょっと、主将〜ダメダメだったじゃねえかよ。俺が仕事してる間に何してんだよ」
「お前は黙ってろ!!こっちの苦労も知らず!」
1人のチャラそうな男がどこからともなく現れ、主将に文句を言う。
その態度は、目上の人に対する態度ではなかった。
「ああ?1匹も殺せねえやつが何ごちゃごちゃ抜かしてんだよ」
「黙れ、デギ!それよりもだ、お前の方は上手くいったんだろうな?」
デギと呼ばれた男は何処からともなく、1人の子供を引っ張り出した。
その者は、目隠しをつけられ手足を縛られて、身動きが取れない状態になっていた。
「ほらよ。約束通り、適当な子供だろ?とっ捕まえて来たぞ」
「ほう…よくやった。褒めて遣わす」
主将の目が大きく見開かれ、顔が邪悪に歪む。
「で、そいつをどうするんだよ?」
子供を、主将に引き渡すデギ。
子供は暴れるが抵抗も虚しく、縄を千切るとまではいかない。
「決まってるだろ?人質にして、1番強いやつの死と交換するんだ。あいつらにとって、国民は守るべき対象!そんなやつを放っておくわけないだろう」
「お前、結構やばいな。魔族の俺が言えたことじゃないが」
「ふん、どうとでも言え。最後に勝つのは俺たちだ…!」
目は細められ、口角が目元まで上がり、その顔は勝利を確信していた。
デギは呆れ顔でその様子を見ていた。
「ま、俺は強いやつとやれればいいけど」
その顔は不敵に笑っていた。
多分、7時にもう一本