15
改変終いsた
自らを一つの弾丸へと変え、一気に城壁から飛び出すカイン。
一瞬にして目標まで近づき、並走を始める。
「お久しぶりですね!メザリーさん!」
「ん?おお!誰かと思えば、カインじゃないか!久しぶり!」
メザリーと呼ばれた女は、長い紫の髪を纏めずそのまま流して、ゴシックドレスを着てヒールを履いており、些か戦闘には向かない格好をしていた。さらに異端なのが、眼を布で覆い被しており、前が見えなさそうだ。
それでも、飛んできたものがカインだと判別しており、どうにかして見えているようだった。
びゅうびゅうと風が抵抗してくる中、声を張り上げて会話する2人。
時速60kmほどの速度で走る2人。どちらも軽いジョギングのような感覚で走っていた。
「ずるいですよ!抜け駆けなんて!!」
「ははっ!早い者勝ちなんだな、コレが!それより、部下は連れてこなくても良かったのかな?」
「メザリーさんを放置してたら、出番を奪われますからね!それに、僕の班のものは優秀ですからね!すぐにきてくれます!」
「その言い方だと、私の班の者が出来ないみたいな言い方じゃないか!?まあ、そろそろだぞ、準備を始めましょうか!」
途端、2人は一気にスピードを落とし、立ち止まる。すでに、魔族との距離は50mを切っていた。
「さあ、先手必勝!ぶっ放す準備はできてるかい?」
「もちろん!メザリーさんこそ大丈夫なんですか?」
「ふふっ、あまり舐めないでほしいね。バッチリだよ」
「相手も油断しているでしょうし、痛手を負わせるなら今ですね!それじゃあ、行きましょうか!」
相手である魔族は謎の2人の人物に警戒を抱き、塊となって相手の出方を伺っている。
それが間違いであることに気づくのにそう長くはかからない。
カインは手を突き出し、メザリーは何処からか、紫色の宝石が取り付けられた杖を取り出し、構えていた。
「突撃ッ!!!」
その様に嫌な予感を覚えた中隊の主将が叫び、空を、陸を駆ける始める。
しかしそれは遅かった、とても。
『雷の神よ、私の願いを叶えたまへ。対象の動きを封じる電流の領域をここに。電流の縄』
魔文が唱えられ、魔族の足元に電流が走り回る地面が作りだされ、縦横無尽に走り回る電気が、触れるその対象を麻痺させていく。
一瞬にして、前方部隊は身動きが取れなくなった。
「ッ!!…
『風の神よ、僕の願いを叶えたまへ。全てを吹き飛ばす嵐をここに。混沌の嵐』
何かを、主将が叫ぶ前。
全てを取り込み、暴れ回る嵐が、戦場を駆け巡った。
それが、体が麻痺して動けない魔族達、さらには飛んでいた魔族をも、暴風が薙ぎ倒していく。
強い者にも、弱い者にも、等しく死を分け与える嵐が通り過ぎた後には、魔族の中隊の大半が壊滅していた。
これが、準筆頭魔法使いの実力だった。