12
改変しました
「さあ、着きました。ここが僕の部屋ですね。ささ、入ってください」
王宮の離れにあるカインの部屋に辿り着き、カインに促されるままに部屋に入る。
「…結構汚いんですね…」
「そうですか?置いてあるのは魔法に関する本だけですし、そこまで汚いとは思いませんけど?」
カインの部屋はあいも変わらず本が積み上がっており、足の置き場が殆どない。
「まま、そんなことはどうでもいいとして……早速魔法の話をしましょう!」
カインは適当な場所に座り、ディネに座るよう促す。
足の踏み場に困るなか、無理やり本をどかして空間を作る。
「ええと…まずは何を知りたいですか?」
「…ではまず、魔文を創るとは?」
「そのままの意味です。自分で魔文を創り出すんですよ。ほら、コレみたいに」
適当に積み上がっていた本と本の隙間から一枚の紙を取り出す。
そこには、魔法文字が癖のある字で乱雑に書かれていて、ほとんど読めない。
「えーっと……例えばコレなら、火の槍をいろいろ改造したものですね。具体的には、魔力を詰め込めるだけ詰め込めるように、大きい術式を作り上げる物です。こっちは、出来るだけ最小限にして、バカスカ打ち込めるように、ちっちゃい術式を作り上げる物です。他には………うんたらかんたらうんたらかんたら…」
言っていることが謎すぎて、思考が止まるディネ。
その様子を気にせず、どんどんと話すカイン。まるで水を得た魚のようだ。もっとも、ここまで活発になるともはや打ち上げられた魚のようにも思える。
「…おーい、大丈夫ですか?ディネさん?」
「…ああ……ああ……」
「ダメみたいですね。ちょっと荒治療ですけど……」
そういい、魔法で水の玉を作り出し、投げつける。
「っわ!ど、どうしたんですか、カインさん」
「大丈夫みたいですね。それじゃ、続きを…」
「ああ、もう十分です!よくわかりました」
まだまだこれからと、嬉々として話そうとするカインを止めるべく、無理やり話を切る。
「そうですか?まだ物足りないんですが」
「ええ、もう十分わかりました。それで、質問なんですが…どうやって魔文を創ったんですか?何か書物にでも書いてあったんですか?」
「自分でいろいろ試してみました」
「……は?」
何を言っているかわからないという様子のディネ。
それはそうだろう。ここ最近、新しい魔文が創られたという話は彼が生きてきた中で、聞いたことがない。
それを、カインが自分で試して創ったというのだ。
「え?冗談でしょう?」
「がちですよ」
「…どうやって、試したんですか?」
「まず、いろんな魔道書に書いてある魔法文字を書き出して、適当に組み合わせて新しいのを創りました。結構、失敗もあって爆発とかしましたけど、いいものはできました。なんせ、魔法文字の意味がわからなかったもので、1から調べたんですよね。5年前から、試しては書き出してを繰り返しました」
「まじですか……」
「まじです。てか、まだ魔法文字のほとんどの意味がわかってないんですよね。昔の魔道書とか漁ってると無限に出てきますしね。今でも3割ぐらいだと思います」
魔法文字の解読など、彼は聞いたことがなかった。
普通の者なら、魔法文字は魔文を構成する不思議な文字、としか思わず、その意味を調べようとはしなかった。魔法が撃てれそれでいいと考えているため、そこまでしようとは思わないのだ。
言うなれば、アルファベットの1文字1文字がどのようにできているかなどを調べるようなことだ。
普通の人ならしないだろう。
それをやっているカインは異常としか言えない。
「……じゃあ、俺でも新しく魔文を創れるんですか?」
「できますよ。まあ、それが実際に使えるかどうかは分かりませんが」
「…ごもっともです…」
「けど、やってみる価値はあると思います。それに、人手が増えますしね!僕としたら大歓迎です!」
悩むディネ。その様子をわくわくと待つカイン。
数十秒間悩み、結論を出したディネが口を開く。
「…俺に、魔文の創り方を教えてもらえますか?」
「もちろんです!こちらこそ、よろしくお願いします!」
ニコニコとした顔で、小さな手を差し出すカイン。
それを、ディネはぎゅっと握り返した。
はい