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改変しました
「……ところでですが……カインさんは何故、王宮魔法使いになろうと思ったんですか?」
るんるんと鼻歌を歌いながら歩いていた背に質問すると、その言葉を聞いた途端、カインは鼻歌を止め、歩みを止める。
「それを聞きますか……」
「ああ、いえ!そんな絶対知りたいというわけではなくて……ただ興味本位で…すみません……」
振り返った顔にいつものにこにことした笑顔はなく、不満げに歪められており、ディネは咄嗟に謝る。
誰もタイキの二の舞にはなりたくないのだ。
「…いえ…すみませんね…こんな事を聞かれるのは初めてで、少し返答に困りますね…」
不満げな顔を止め、頬を掻きながら苦笑いする。
「…では、こちらからも質問ですが…ディネさん。あなたは何故、王宮魔法使いになろうと?」
唐突に同じ質問をされ、たじろぐがすぐに答える。
「俺には、魔法しかなかったからです。勉強もできないし、力仕事も、運動もできなかった。でも、魔法だけは人より上手かった。だから、こんな俺でも人の役に立ちたい、そう思って王宮魔法使いになろうと思いました」
真っ当な理由。カインは黙って聞いていた。
「なるほど…いい事ですね…………じゃあ、僕の番ですかね……正直、あんまり話したくないんですけどね……」
「ああ、すみません!言いたくないなら言わなくても大丈夫です。さっきも言った通り単なる好奇心ですし…」
「なら、軽く」
カインはフッと笑い、一度瞼を閉じ、開く。
「僕が、王宮魔法使いになろと思った理由は、魔族を、この世から消すためです」
蒼色の目は不気味に笑い、片方の目は無機質に光を放っており、生きているとは思えない。
王宮の壁に取り付けられたガラスから春の暖かい日差しが入り込み、カインを照らす。その顔にできた輪郭の影が他の部分よりも濃く見えた。
得体の知れない何かが、そこにはあった。それは昔から付き纏う怨念か、それとも他のなにかか。
その表情に恐怖心が湧いてくるディネ。
「ま、他には国民を守るためですね。ていうか、こっちの方が重要ですね」
「…そうでしたか」
「はい。それじゃ、いきましょうか」
くるりと背を向けて歩き出す。
蒼い目はいまだに不気味に輝いていた。
ディネはこれ以上、この質問について追及する気にはなれなかった。
うん