見た目騙しの魔法使い 1
はい。今日は5本投稿します。書き溜めたやつです。
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見た目騙しの魔法使い
ここ、プランタジネット王国は、国の南側に造られた城壁が民の生活を守っている。
この世界では、魔族と呼ばれる人の見た目をした何かが、魔王城と呼ばれる壮大な城を中心とした魔族領内で生活している。
彼らは、この世界を征服し、我がものとするため人を襲う。
それに抵抗すべく、魔族領の周りを囲む4国、プランタジネット国、ランドバルド国、ケイユーブ国、ムゲル帝国。この4国が同盟を組み、それぞれ魔族領に面している部分に城壁を造ったのだ。
プランタジネット王国の、王城の一室。
100人は優に入りそうな会議室。
暖かい春の日差しが、大きなステンドグラスで屈折し、キラキラと輝いている。
会議室、と言っても内装は教室のようになっていて、無数の机と椅子が置かれている。
そこには、30名ほどの王宮魔法使いたちが、ある人の到着を待っていた。
「なあ、グレン。ヘンリー様は何の用があって俺たちを呼び出したか知ってるかい?」
ビシッと支給されている制服を着こなす白銀の髪の男、ゲシンは隣にいた赤髪の男、グレンへと問いかける。
「さあ?俺には何も聞かされてねえなぁ。なんか、伝えたいことがあるとかなんとか」
グレンは、その燃え盛るような紅色の髪を整えながら答える。
「そうだろうな…。はあ、まったく。ヘンリー様も何か教えてくれればいいのに…」
「まあ、仕方ねえだろ。あの御方のことだ。どうせいつも通りしょうもないことだろうに…」
「そうだろうね。あの人はいっつもそうだからね…」
はぁ、とため息をつくゲシン。
そんなやりとりをしていると、不意に扉の奥からコツコツと足音が聞こえてくる。
「どうやら来たようだね」
「ああ。今回は思ったより早かったな…確か、前回は30分だったか?」
「静かに、聞かれるぞ」
ギギギ…と音を立て、大きな扉が開く。
そこから、白い髭を生やし、モノクルをかけた1人の老人が入ってくる。
「いやあ、皆の者、待たせてすまぬな」
その言葉と共に、座っていた王宮魔法使いたちが一斉に立ち上がる。
「いえいえ、心配はご無用です。ヘンリー様」
代表して、ゲシンが答える。
「そんなに改まる必要はないと思うんじゃが……。まあ良い。皆の者も、座ると良い」
男、ヘンリーがどかっと部屋の1番奥に置かれた椅子に座り、それに伴って他の者も座り始めた。
「それで、伝えたいこととはなんでしょうか、ヘンリー様?」
「おお、そうじゃったな。おーい、カイン入ってこい」
「はい!」
ヘンリーの言葉の後に、元気の良い返事が聞こえてくる。視線が声がした方へと向けられる。
何が出てくるのかと、緊張の瞬間。
そして、ヘンリーが入ってきた扉から、ひょこっと幼い子供が出てきた。
茶色の髪は、先の方がクルクルと巻いていて、クリクリとした蒼色の目は爛々と輝いている。
背は低く、大人の腰ほどしかない。背伸びをしたくなる年齢に見える。
「なんでしょうか、師匠?」
子供、カインは、周囲の大人たちの視線を全く気にも止めず、てくてくとヘンリーの元へと寄っていく。
「よくきたのぉ〜。よーしよしよし」
そういい、デレデレとした顔でカインを撫でるヘンリー。その姿はまるで、孫を可愛がる祖父のようだ。
「ちょっと、師匠。これでも僕15歳なんですよ?いつまでこれするんですか?」
「おっと、すまんすまん」
そう言いながらも、手を止めないヘンリー。
そんな様子に、王宮魔法使いたちは唖然とする。
「…あ、あの?…ヘンリー様?」
「む?おっと、紹介がまだじゃったな。もう知ってる者もおると思うが、この子はカイン、わしの養子じゃ。今日から、カインには王宮魔法使いの準筆頭になってもらう」
「………え?」
ぽつり、と誰かが声をこぼす。
「「「「「「ええええええ!!!???」」」」」」
その声を皮切りに、部屋にいた殆どのものが驚きのあまり叫んだ。
「本気で言ってるんですかヘンリー様?!」
「まだこんな幼いのに準筆頭ですか?!」
「てか、子供がいたんですか!?」
「「「どうなんですか?!?!」」」
「わ、わかった、わかったから落ち着くんじゃ。ちゃんと説明するから…てか、ゲシンとグレンはもうすでに知っとるじゃろ?」
「いや…そんなこと言われましても…」
「ああ、わからんな」
「…ちっ、この可愛いカインを覚えとらんとか、どんな脳みそしてるんじゃか…」
助け舟が来ないことを理解したヘンリーは、いつまでも続きそうな質問攻めを終わらせるために、彼らを落ち着かせる。
落ち着いたのを見計らって、ヘンリーが再び口を開く。
「…とりあえず、カイン。主の自己紹介から先にしとくれ」
「はい!分かりました」
カインはそう言うと、彼らの方を向く。
「えー先ほど、紹介にもありました。今日から、王宮魔法使いの準筆頭となりました、カインです!この見た目でアレですが…実は、15歳です!」
明るい声で自己紹介をするカイン。さらっと不思議なことを言っている。
「……え?」
「……15歳?準筆頭?嘘だろ…?」
「ほんとじゃよ。どうじゃ?思い出したか、主らは。まさか、忘れたとは言わんじゃろうなこの可愛」
「……まさか、あのカインですか?!ヘンリー様の部屋にいたあの少年が?!」
「確かに…見た目は全く同じだ…。以前見た時からなんも変わってねーじゃん…」
グレンとゲシンは以前に見たことがあったため、すぐに理解して、落ち着く。
しかし、他の者たちはまだ、言っていることが理解できていないようだった。
「なるほど…。あの少年がカインで、ヘンリー様の養子だったとは…」
「ああ、俄かにも信じがたいが、本当なんだろう」
それと対照的に、グレンとゲシンはどんどんと物事を理解していく。
「まあカインなら、準筆頭でも大丈夫だろ。前見せてもらった時はド肝を抜かれたしな…」
「そうだな…、アレはまさに………膝を壊す前のヘンリー様に匹敵すると言っても過言ではなかったからな…」
「……おほん!まま、準筆頭であるお主たちならわかってくれると思っておったぞ!さすがじゃ!」
先ほど言っていた、悪態はなかったことになっているようだ。思わず突っ込みそうになったグレンとゲシンだった。
ちなみに、王宮魔法使いは筆頭であるヘンリーをはじめとし、その下に準筆頭である、グレン、ゲシン、そして、この場にいないメザリーの3人、そして今、準筆頭へとなったカイン。
この4人をリーダーとした班があり、総勢30名ほどのメンバーからなる、超エリートの集団だ。
彼らの目的は、ただ一つ。魔族を殺し、自国の民を守る。
だが、全ての者がその目的のためにこここにいる訳ではない。
承認欲求のため、お金のため、戦うため………
これらのために、ここに所属している者もいる。しかし、民を守ってくれてはいるため、そのようなものを辞めさせるわけにはいかない。
しかしこの発言に対し、変わり者の代表であり貴族の息子であるタイキが反発する。
「…おいおい、ヘンリー様よぉ。そんなへなちょこなヤツより、この俺様の方がよっぽど準筆頭にふさわしいだろ!」
彼は、平民出身であるヘンリーを嫌っている。だが、ヘンリーの強さを知っているため、滅多に逆らうことはない。
が、今し初めて紹介されたばかりの幼子が、準筆頭に抜擢される…
そんなことをされてタイキがそれを黙って聞いているはずもない。
「…はあ、タイキよ。これはもう決定したことなのじゃ。覆すことはできん。あと、可愛いをへなちょこと言い換えるな」
「でもよぉ!急に出てきた名も知らねえ子供を準筆頭にします、って言われて納得するわけねえだろ!準筆頭に相応しいか、その実力を見せてみろよ!」
そう言い、タイキはカインを指差す。
一部の者たちもその言葉に、頷き、賛成する。
「実力を示せばいいんですね?」
「ああ!この俺様と、王宮魔法使いになるための試験で勝負だ!そこで、俺様より優れた魔法使いがあることを証明して見せろ!もし、それで俺様より弱かったら、俺様に準筆頭の座を明け渡せ!」
「らしいですけど、いいですか?師匠?」
こくん、と首を傾げ、ヘンリーに聞くカイン。
「…もちろんええぞ。まあ、手続きが面倒じゃが、そんな心配はないじゃろう…」
ヘンリーは渋々だが、承諾する。それは、カインの可愛さゆえに許しているわけではないと言い訳を考えるヘンリーだった。
その言葉を聞き、タイキは人の悪い笑みを浮かべる。
「二言はないな?よし、それじゃあ、修練場へと行くぞ!」
タイキの発言で、そこにいた者たちが一斉に移動を始めた。
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追記
後半に行くにつれて、文章を進化させていくつもりなので、よければ途中まで読んで欲しいです。いいねだけでもお願いします。
追追記
いちから直していくので、少し待っていただければ幸いです。