表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/101

第91話 新人研修

冒険者ギルドの一階では冒険者達がただならぬ雰囲気にざわめいていた。


「お、おい・・・なんか・・ゆ、揺れてないか?もしかして地震か?」


「あぁ・・確かに揺れてるぞ・・・そ、それになんか寒気がしないか?」


「お、お前もか?!さっきから鳥肌が立って震えが止まらないんだ・・・」


どっごおぉぉぉぉぉぉぉん!!!!


突然、冒険者達が動揺する中、ギルド内に轟音が響き渡った・・・


「な、な、何だ?!」


「訓練場の方からだぞ?!」



「・・・ふん・・あいつね・・・」


「あぁ・・間違いない・・・」


「そうね・・・また壁にでも穴を開けたんじゃない?」


慌てる冒険者達の中リルーナが呆れた顔で天井を見上げる。


すると冒険者の男が口を開く。


「そう言えばよ・・・さっき”撃滅の拳”の奴らをぶっ飛ばしたガキ・・・冒険者登録とか言ってたよな・・・あの強さで新人か・・・ん?という事は・・・アレをするんだよな・・・」


「んあっ!そうか・・・新人か!」


「あぁ!アレか!な、なるほど!!あの強さなら・・・」


「・・・Bランクを倒すほどの新人なら・・・んふっ・・これはチャンスだわ・・・」


その男の一言にギルド内の冒険者達が何かに気付いたようにざわつく。


「なっ・・・あ、あいつ余計な事を・・・」


アルグが思わずこめかみを引き攣らせ声を漏らすのであった。




「・・・あ、あ、あぁ・・・か、か、壁が・・・ご、五重に展開した防御結界を・・・ま、まるで土壁みたいに・・・」


デルマは大きな風穴が空いた壁を力無く眺めていた。そして膝から力が抜けてペタンと座り込む。


(・・あ、あり得ない・・・)


デルマは無意識にゆっくりと首を横に振っていた。



「あぁ・・・外しちゃった・・・」


(こ、これ・・・ご、合格なのかな・・・?)


ゼノアがゆっくり振り返ると、唖然としているデルマがゆっくりと首を横に振っていた。


「えぇっ・・・だ、駄目なの?あうぅ・・・」


「へっ?」


混乱するデルマから呆けた声が漏れる。


(・・・あっ!そうか!聖魔法と光魔法の身体強化魔法を使ってなかった・・・だから全力じゃないって事か!さすがギルドマスター・・・僕の力を見抜いていたんだ・・・よおぉし!今度こそ・・・)


気合いを入れ直したゼノアがデルマに一礼する。


「デルマさん!!ごめんなさい!僕はまだ全力じゃありませんでした!!今度こそ本気で行きます!!」


「・・・ほ、ほへっ・・い、今・・な、なんて・・・?」


デルマは理解が追いつかずいつもの凛々しい表情が崩れ首を傾げる。


「さすが主様ですわ!!相手の方を気遣って手加減されていたのですね!!それにデルマ様もなんだかんだ言っても手加減していた事を見抜いていらしたのですね!」


「ふへっ?」


デルマが呆けたまま見上げると嬉々としたフェルネスと目が合った。



「・・・あ、でもさっきので魔力が・・・足りない・・・」


(そうだ!)


「フェルネス!お願い!魔力を貸して!!」


「ふえっ?!あ、主様が・・この私にお願いを・・・うふっ!は、はい!喜んで!!」


フェルネスはゼノアからの初めてのお願いに嬉々として一瞬でゼノアの背後に立ち抱きしめる。


「どうぞ主様。御存分にお使いください。」


フェルネスが全力でゼノアに魔力を送り込む。


「うん!ありがとう!行くよ!身体強化!!」


デルマの目の前でデジャブのようにゼノアから力の波動が放たれる。


「あっ・・・い、いや、ま、待って!!も、もうやめて・・・」


腰を抜かしたデルマのか細い声はゼノアには届かない。しかし先程まで気を失っていたモーリアが目を覚ました。


「う、うぅ・・・わ、私は・・・た、確か・・・って・・・」


モーリアは訓練場の中がやけに明るく感じ冷たい風を感じた。そして何気なく背後の壁を見上げた・・・


「はぁ?!な、何?!この穴は・・・んはっ!!お、思い出した!!あ、あの子供・・・って・・・?!」


モーリアの数分前の記憶が戻る。咄嗟に振り返ると再び力の波動を撒き散らすゼノアの姿があった・・・


「えあっ?!ま、ま、まさか・・・こ、こ、この穴は・・・ま、ま、待って・・・ア、アレを・・も、もう一回?!む、む、無理ーーーっ!!!!」


モーリアが無我夢中でゼノアに向かって走り出す。


「も、もう合格ぅぅぅぅ!!!だからやめてぇぇぇぇぇぇ!!!」


モーリアが全身全霊で訓練場の床を蹴り抜きゼノアに迫る。ゼノアも意表を突かれ焦る。


「ああっ!!し、しまった!!初撃が躱されたから次は相手の番なんだ!!」


焦るゼノアが腰を落として避けようとしたその時、必死に止めようと飛び掛かるモーリアの鎧にヒビが入りそのまま砕け散る。そしてインナー越しにでも分かるモーリアの豊満な胸がゼノアの前に曝け出された・・・


「お、おっふ・・・すご・・・」


もにゅうん・・・


モーリアの胸に圧倒され逃げ遅れたゼノアの顔がモーリアの柔らかな谷間に勢いよく収まる・・・


「もぶっ!?ぶもっ・・ぶもっ・・・」


(・・・こ、こんな攻撃・・・・あぶっ・・・あ、ありがとう・・・)


「ま、まいびまじた・・・」

(参りました・・・)


ゼノアは抵抗する事なくモーリアの谷間に収まり大人しくなる。


(・・こ、この人間・・・主様を無力化するとは!くっ・・・あ、あの僅かな立ち回りで主様の唯一の弱点を・・・うくっ・・・な、なんでしょうか・・この苛立ちは・・・)


フェルネスはモーリアの胸の谷間に大人しく収まるゼノアに嫉妬と悔しさが入り混じり全身から魔力が滲み出ていた。


「くっ・・い、いつまで主様にくっ付いているつもりですか!?ハレンチな!!」


フェルネスはモーリアの深い谷間に収まるゼノアを奪い取り自らの谷間に収める。


「わぶっ・・・」


(うぶっ・・・こ、これは・・これで・・・)



「んっ?な、何?胸の辺りが・・・」


呆けるモーリアはいつもの感覚の違いに気付き自分の胸元に目を落とした。


「は、はうわっ!!わ、私の鎧・・・鎧が・・・」


モーリアは顔を赤らめて胸元を隠し辺りを見回すと破壊された真紅の鎧が転がっていた。


「なっ?!わ、私の鎧が・・・な、何故・・・ま、まさか・・・さ、最初の攻撃で・・・?!」


(わ、私の鎧はミスリル製だぞ・・・そ、それを掠っただけで破壊?!・・・も、もしも・・もしも鎧が無ければ私は今頃・・・ごくっ・・)


砕け散った自分の鎧を見つめるとモーリアの全身に寒気が走る。そして背筋に冷たい汗が吹き出るのだった。


そして安心したデルマはゆっくりと立ち上がりいつもの威厳ある表情に戻る。


(・・・ふうぅぅぅ・・こ、これは今後の為にきっちりと話しをする必要があるわさ・・・)




「さて・・・言いたい事は多々あるけど、まずはこれを渡しておくわさ。」


(えっ・・なんか怒ってる・・・)


僕達はギルドの訓練場から連れ出されギルドマスターのデルマの部屋に連れてこられた。今、目の前には机を挟み複雑な表情で物言いたげなデルマがソファに腰掛けゼノアの前にBランク国選冒険者証を置いた。


「えっ、あっ・・こ、これは・・・」


デルマの不機嫌に見えるその雰囲気に恐る恐る上目遣いでデルマの顔を見る。


「見ての通り冒険者証だわさ。試験は合格。約束通り冒険者登録はしておいたわさ・・・」


デルマの語尾は続けて何かを言いたそうであったがゼノアを膝の上に乗せているフェルネスの眼光がデルマの口を塞いでいた。


(・・・機密事項・・・あの刺さるような眼光は”余計な詮索をするな”と言う事か・・・改めて見ても対峙してるだけで鳥肌が立つわさ・・・聞きたい事は多々ある・・・だが確かに冒険者の能力についての詮索はマナーに反する事だわさ・・・さて、どうしたものか・・・)


(ふっ・・・要件は済みました。面倒な話を切り出される前に・・・)


フェルネスはデルマの考えが纏まる前にがゼノアを膝から下ろして立ち上がる。


「さあ。これで主様の冒険者登録は終わりましたね。主様。それでは失礼いたしましょう。」


「うん。そうだね!」


「えっ、あっ、ま、待って!」


咄嗟にデルマも慌てて立ち上がる。考えは纏ってはいなかったが、とにかく時間を稼いで考えを纏めたかったのだ。


「ん?」


「まだ何かあるのですか?」


フェルネスの眼光がデルマに刺さる。


「あ、あ、あぁ!!ま、まだ冒険者ギルドの説明をまだしてないわさ!だ、だからもう少し時間をくれるとありがたいわさ。」


デルマがぎこちない作り笑いを見せる。

するとフェルネスはチラリとゼノアの反応を確認する。


「うん。よく考えたら冒険者ギルドの事あまり知らないからいい機会じゃないかな。」


ゼノアがにっこり笑うとフェルネスは軽く肩の力を抜く。


「ふふ・・主様がそう仰るのならお聞きしましょう。」


再びフェルネスはソファに腰を下ろして当然のようにゼノアを膝に乗せた。


(ふぅぅぅ・・・危なかった。こ、このまま帰してあんな力を街中で使われたら大変な事になるわさ・・・)


デルマはスッと息を吸い込み自分を落ち着かせる為に静かに息を吐く。そして背筋を伸ばし目を見開くといつもの威厳あるギルドマスターの雰囲気を漂わせた。


「改めて、私はセルバイヤ王都冒険者ギルドマスターのデルマ・スランダーだわさ。早速だけど君はゼノア君。そちらはフェルネス殿でいいわね?」


「はい。ゼノアです。よろしくお願いします。」


「えぇ。」


フェルネスは口元を軽く緩めて小首を傾げる。


「最初に冒険者のランクにはHランクからSランクまであるわさ。当然の事だがランクによって依頼内容が変わる。基本的にはランクに合った依頼しか受けられない。だけど例外として一つ上のランクの依頼を受ける条件として自分の一つ上のランクの冒険者パーティーの庇護下にあれば受ける事が出来るわさ。だけど、まあ・・現実には、わざわざランク下の足手纏いを連れて行く冒険者パーティーは珍しいわさ。」


「それじゃあBランクの僕がAランクの依頼を受けるにはAランクパーティーの許可がないと受けれないって事ですね?」


ゼノアは笑顔でデルマに首を傾げる。


「・・ま、まあ・・・そ、そう言う事になるわさ・・・」


(ふっ・・・流石ギルドマスターと言った所ですね。主様の実力を解っているようですね・・・)


歯切れの悪いデルマを見据えてフェルネスが満足そうに目を細める。


(・・うくっ・・・こ、この少年は自覚が無いのか?セルバイヤ王国唯一のAランク冒険者を圧倒したのを・・・ま、まあ、それは置いておいて・・・ここからが本題だわさ。)


覚悟を決めたデルマが口を開く。


「さてゼノア君。冒険者登録は基本的には10歳からになっているわさ。だけど君は陛下からの強い推薦で特別に7歳で冒険者登録を認められたわさ。そこでギルドのルールとして学園卒業生や初めて冒険者登録した者には一ヶ月間の研修制度を設けているわさ。」


「研修・・制度?」


「そうだわさ。新人冒険者の死亡率を下げる為に先輩冒険者パーティーの荷物持ちとして参加して冒険者のイロハを学んで貰う。これは国王陛下からの提案で始まった事だわさ。だから例外はない。いいわね?」


その瞬間フェルネスが目を細めデルマを見据える。そしてデルマの背筋に冷たい汗が伝う。


(うくっ・・・やっぱり・・)


「・・・主様に格下冒険者の荷物持ちをさせるですって?ふん・・・デルマ殿よく考えてもみなさい。格下冒険者達が主様の実力を知ったらどうなるかを。必ず私利私欲に塗れた冒険者達が主様を利用しようと殺到するでしょう。」


「・・・うっ・・た、確かにその可能性は有り得るわさ・・・」


デルマはフェルネスに盲点を突かれ言葉を失う。


「それにもう既に小競り合いが始まってるみたいですわ。」


「はっ?」


フェルネスの耳にはギルドの一階で冒険者達の言い争っている声が聞こえていた。


コンコンコンコンッ!!


すると突然、慌てていると分かる扉をノックの音が響く・・・


「何だい?!騒々しいわさ!」


ガチャッ!!


扉が勢いよく開き受付嬢のマリンが飛び込んで来る。


「し、失礼致します!ギ、ギルマス!!今、受付カウンターに新人冒険者の受け入れ希望者が殺到しています!!!もう収拾がつかない状況です!!助けてください!!」


「なっ・・・何だって?!・・・くっ・・・」


デルマが頭を抱える。そして罰が悪い表情てフェルネスを見るとフェルネスが呆れ顔で肩をすくめるのであった。


(あぁ・・・また面倒事が始まる予感がするよ・・・)


ゼノアもまたため息を付き項垂れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ