第83話 ゼノアの告白
ゼノア達はセルバイヤ王都に戻るべく馬車に揺られていた。
そして僕とフェルネスはガベルさんとユフィリアさんが乗る馬車に載せられた。一緒に来ていたクロードは操馬席へと追いやられている。
目の前の二人はどう切り出すか考えを纏めると軽く顔を見合わせ頷いた。口を開いたのはガベルであった。
「さてと。ゼノア君。」
「は、はい。」
「今からする質問に答えるか応えないかはゼノア君の自由だ。だが、ゼノア君の側にいる者として君の力を知っておきたいのも分かって欲しい。いいかね?」
「は、はい・・・」
「ふむ。それでは単刀直入に聞く。君は必要なスキルを自由に身に付ける事が出来るのかい?」
(うっ・・・き、来た・・やっぱり気付くよね・・・あの時、ガベルさんがした皆んなへの質問はこれを確認する為だったんだ・・・でも、ガベルさんやユフィリアさんなら・・・)
僕はガベルとユフィリアの目力に圧倒され意を決して口を開いた。
「・・・は、はい。で、でも、自由にいつでもって訳にはいかないんです。スキルポイントがあってスキルポイント以上のスキルは無理で・・・そ、それに神級スキルの制限は守らなくちゃいけないって言われてて・・・」
「ちょっ・・ま、待ちなさい!!」
ゼノアの話を呆気に取られながら聞いていたユフィリアが我に返り思わずゼノアの話を遮った。
「えっ?な、何?」
不思議そうに首を傾げるゼノアにユフィリアが詰め寄る。
ガベルに至っては目をぱちくりさせて固まっていた。
「・・な、何?す、すきるぽいんと?!し、しんきゅうスキル?!い、一体何の話をしているの?!分かる様に説明しなさい!!」
「えっ・・・」
(・・・あ・・そ、そうか・・確かに皆んなを鑑定してもスキルポイントは誰にも無かった・・・これは創造神アルフェリア様からの特別な力・・・この世界には無い力なんだ・・・神級スキルもアルフェリア様から貰った特別な力・・・ぼ、僕はこの世界で・・・どんな存在なんだ・・・アルフェリア様は僕を見てくれるって言ってだけど・・・)
「ユフィリア。落ち着け。そんなに詰め寄ったらゼノア君も話し辛いだろう。」
ゼノアが俯き思い悩む姿を見て詰め寄るユフィリアの肩に手を置いた。ゼノアに詰め寄ったユフィリアが我に返り俯くゼノアに気付いた。
「・・・あ・・う、うん・・そ、そうね・・こ、ごめん。」
ユフィリアは珍しくゼノアの事を思い迫り出した身体を引いた。
そしてガベルは優しく身体を乗り出し膝の上で手を組む。
「ふむ。ゼノア君。私達は君を責めている訳じゃないんだ。私達は君の事を他人だとは思っていない。ゴルド同様家族のように思っている。だからいざという時君の事を守る様にに君の事を知りたいだけなんだ。どうだろう?ゼノア君。私達の事を信じて君の力の事を教えてくれないか?」
ガベルの優しく真っ直ぐな目にゼノアは肩の力を抜いた。
(そうだよね・・・ゴルじいもガベルさんもユフィリアさんも僕の事を大切にしてくれた人なんだ・・・この人達なら僕の全てを話してもいいよね・・・)
ゼノアの口元が緩む。
「分かりました。ガベルさん。ユフィリアさん。今から僕の全てを話します。」
「うむ。ありがとう。」
「ふふっ・・楽しみね。」
僕は自分の身に起こった事を二人に話し出した。前世での出来事、創造神アルフェリアに導かれた事、そしてアルフェリアから授かった称号とスキルの話を全て話した。その話を聞いている二人の表情は自分達の想像越えた内容に驚きの表情が幾つあるのかと思うほど表情豊かに驚愕していた。
「・・・ふ、ふぅぅぅ・・・よ、予想以上だ・・・す、少し考えさせてくれ・・・」
「・・・ふはあぁぁぁ・・・そ、そうね・・・私も少し頭を休ませてよ・・・」
ゼノアが話終わると驚き疲れたのか二人は目線を虚空に遊ばせ背もたれに同時に背を預けた。
すると隣に座り黙ってゼノアを見つめていたフェルネスが黒く大きな瞳に涙を浮かべゼノアをそっと膝の上に抱き寄せた。
「うん・・?わぶっ・・・」
「・・あぁ・・・なんと・・このフェルネスは胸が締め付けられる思いです。主様はこれまで同胞からの信じられない程の裏切りを・・・想像を絶する生き様を経験されて来たのですね・・・」
フェルネスはゼノアを我が子のように抱き締める。
「・・・うぶっ・・・フェルネス・・・」
ゼノアがフェルネスの胸の谷間に埋まって行く。
「・・・これからは・・この私が主様を御守りします。主様に仇なす輩をこの私が全て排除いたします。
この世界の創造神アルフェリア様の使徒である主様に御使い出来てこのフェルネスは歓喜に震える思いです。」
(・・えっ・・・僕がアルフェリア様の・・・使徒?)
「あぶっ・・おぶっ・・・ぷはっ!!」
ゼノアがフェルネスの胸の谷間から慌てて顔を出しフェルネスの顔を見上げる。
「フェルネス!僕がアルフェリア様の使徒ってどういう事なの?!」
フェルネスは口元を緩ませ頭を少し傾げる。
「そのままの意味です。主様は全ての世界の創造神アルフェリア様に魅入られ神の力を持ちこの世界に降り立った使徒様なのです。即ち神の代弁者なのです。この世界の生きとし生ける者は主様に跪くのです!皆が主様を崇めるのです!そう!主様はこの世界の神なのです!!」
フェルネスは誇らしげにゼノアを再び抱き締める。
(ええっ・・・そ、そんな・・・)
「ふむ。確かにフェルネス殿の表現はあながち間違いではない・・・だが、ゼノア君はそんなつもりはないんだろう?」
黙って目を閉じて考え込んでいたガベルが目を開ける。
「は、はい。ぼ、僕はただ・・・これまの人生で味わった惨めな死に方をしないようにこの世界に転生したんです。だからこの世界では自由に楽しく今の人生を生きたいだけなんです・・・」
「・・・別にそれでいいんじゃない?」
突然ユフィリアが肩をすくめながらゼノアを見る。
「えっ・・・」
「だってゼノア君は前前世でも前世でも碌な人生じゃなかったのよ?だからせっかく神様がくれた今の人生を好きに謳歌すればいいのよ。ゼノア君なら悪の道に逸れる事もないと思うし。」
ユフィリアが含み笑いをゼノアに向ける。
「そ、そんな・・あ、悪の道って・・・」
ゼノアはびっくりした顔で頭を小刻みに横に振る。
「・・・ふふ。分かってるわよ。・・・でもまあ・・・絶対に目立つ存在になるのは確実だけどね・・・」
「ふむ。私達もついゼノア君の力ばかりに目が行っていたようだ。そうだな・・まだ子供だ。自由に伸び伸びと生きるべきだ。その結果、この世界でゼノア君がどんな存在になるか楽しみだな。
・・・でも、まあ・・・多少の自重はして欲しいがな・・・」
ユフィリアとガベルが顔を見合わせて”くすっ”と笑うとゼノアを優しい目を向ける。
「うん。ガベルさん。ユフィリアさんありがとう。僕も今回の事で分かったんです。力の出し惜しみが皆んなを危険な目に合わせてしまった事を。最初から暗黒魔法を使っていれば・・・だからこれからは自分が思うように生きてみるよ!」
ゼノアのスッキリした笑顔にガベルとユフィリアが口元に笑みを溢し頷いた。
(・・うん。二人に話して良かった。全部話して楽になったよ。帰ったらゴルじいにも話そう。)
「それはそうと・・・ゼノア君。少し質問していいかな?」
ユフィリアの表情が変わり、まるで聴きたい事が溢れ出しそうな好奇心全開の表情で前傾姿勢になった。
「は、はい・・・」
(す、少しじゃないよね・・こ、これは長くなりそうだね・・・)
ゼノアは作り笑いを浮かべながら頬に冷たい物が伝うのであった。




