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第73話 VSブラッドガルム 2

第73話 VSブラッドガルム 2


ブラッドガルム

Lv 378

称号 魔狼

力   2798

体力  2479

素早さ 3291

魔力  2170



(・・・とは言うもののステータスは僕より上・・・油断は出来ない・・・ん?何だろう・・・あれは・・)


ゼノアがブラッドガルムを中心に鑑定をしているとブラッドウルフの群れの中に見慣れない表示がある事に気付いた。


【魔物玉】

・魔物が好む波動を放ち興奮させて魔物を集める。


「魔物玉?!魔物を集める?!もしかしてあれが原因?!・・・あんな物・・誰が・・・だとすると・・・このブラッドガルム達ただ魔物玉に釣られて出て来ただけって事だよね・・・」


ゼノアは目の前の魔物達は悪意が無くただ釣られて出て来た事を知り一瞬集中力を切らしてしまう・・・


「ゼノア君!!危ない!!」


「えっ?!」


リズナーの焦る声に我に返るとゼノアの目の前にブラッドガルムが振り下ろす前脚の黒いオーラを纏った大きく鋭い爪が迫っていた。


「しまっ・・・」


ブラッドガルムは目の前の獲物の実力を見抜いていた。そして攻めあぐねていた野生の集中力が獲物の一瞬の気の緩みを逃さなかったのだ。


ずがぁぁぁぁん!!


容赦なく振り下ろされた凶悪な前脚がゼノアに直撃する・・・


「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ナリアの絶望にも似た叫びが辺りに響き渡る・・・ミレードとエルスも息を飲み声すら出せずゼノアの絶望的な状況を想像していた。

メルローラは涙を浮かべ膝と両手を付きゼノアが見せた横顔が脳裏に蘇る・・・


「そ、そんな・・・ゼノア君・・・わ、私の生徒が・・・そ、そんな・・・」


だがしかし・・この状況で微笑む者がいた。


「あ、あれを見ろ!!大丈夫だ!!ゼノア君は健在だ!!」


「「「「えっ?!」」」」


リズナーの確信した声に皆が顔を上げる。そして皆がリズナーの目線を恐る恐る追うとそこにはブラッドガルムの前脚を右腕一本で防御しているゼノアの姿であった。


(あ、危なかった・・・スキル〈堅固〉が無かったら耐えられなかった・・レイドルさん様様だよ・・・それにしても・・今の声は・・・リズナー枢機卿・・・)


「・・う、嘘・・・ぶ、無事なの・・?」


メルローラはゼノアの無事な姿を見て驚きと安堵で感情が入り乱れていた。


「す、凄えぇぇぇ・・・あ、あれを受け止めた・・・」


「・・・あ、あり得ない・・・あ、あいつは・・一体・・・」


ミレードとエルスも口を閉じるのも忘れ固まっていた。


(・・・い・・今、分かったわ・・・何故あれ程猛反対されていたお父様がサーメリア学院への入学を許してくれたのか・・・)


驚きの余り言葉を詰まらせ唖然としていたナリアは突然態度を変えて優しく許可を出した父親の顔を思い出すのだった。



「リズナーさん!!皆んなをお願いします!!僕は魔物玉を破壊してブラッドガルム達を森へ追い返します!!」


ゼノアはブラッドガルムの前脚を押し返しながら叫ぶ。


(・・・ただ魔物玉で釣られて来た魔物を殺すのは駄目だ・・・この魔物達には・・悪気がないんだ!)


「・・何だって?!ま、魔物玉を破壊?!」


「そうです!!この魔物達は魔物玉でここへ誘われただけなんです!!悪気は無いんです!」


「魔物玉?!ま、まさか!!ここは危険度Bランクのブラッドガルムが棲息地域という事で魔物玉の使用禁止区域の筈だ・・・それなのに・・なぜ魔物玉が・・・」


(そ、それよりなぜゼノア君は魔物玉が原因だと知ったのだ・・・元来魔物玉は貴族が登録制で所持を許された物・・となると・・・ゼノア君は・・一体何者・・・)


リズナーはゼノアの背中を見つめ思いを馳せるのであった。




ブラッドガルムは小さな子供程の腕で自分の渾身の攻撃を防がれ一瞬たたらを踏み後ずさった。


「ぐるぅぅ・・・」


「ごめんね・・・君達は悪くないよ。だから今から森へ帰るんだ。」


(・・・魔物玉の位置は・・・あそこか!よし!この前覚えた魔法で・・・)


ゼノアは鑑定で魔物玉の位置を確かめると魔力を集中させる。


「アースジャベリン!!」


「んんっ!魔物玉を破壊?!あっ!!し、しまった!!だ、駄目だ!!ゼノア君!!魔物玉を破壊しては駄目だ!!」


「えっ?」


考え事に気を取られていたリズナーは大事な事を忘れていたとばかりに声を上げる。だがしかし時既に遅かった・・・


ばりぃぃぃん・・・


ゼノアの放った〈アースジャベリン〉が魔物玉を貫き粉々に破壊した・・・魔物玉の破片は透明で中の黒い物体が地面に転がる・・


どさっ・・・


「・・・お、遅かった・・・」


リズナーが事既に遅しと肩を落としたその時、魔物玉からより強力な波動が広がりブラッドガルム達が全身の毛を逆立て耳を劈く遠吠えを上げる!!


「「ぐろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」


ゼノアも思っていた状況と違い後退る・・・


「えっ・・・ど、どうして・・・魔物玉を壊したのに・・・何で・・・」


(ま、まずい・・魔物玉は魔物を興奮させる波動を放つ魔石を分厚い水晶で覆って波動を調整した物だ・・・その水晶を割ってしまったら・・・魔石の波動が制御出来ずに魔物がより凶暴になってしまう・・・)


ブラッドガルム達の威嚇に身動きが出来ないリズナーは必死に絞り出すように声を出す・・・


「・・ゼ、ゼノア・・・君・・き、君は・・理由があって・・実力を隠しているのだろう・・・だ、だが・・今は・・・た、頼む・・・皆を・・・子供達を・・・助けてやってくれ・・・」


リズナーは自分の力ではどうしょうもない状況に追い込まれていた。目の前の未来ある子供達を護る事も出来ない自分に無力感を感じていた。そしてなりふり構わずに目の前にある希望という名のゼノアの力に縋ったのであった。


「・・・リズナーさん・・・分かっています。全力で止めて見せます。」


ゼノアの胸にリズナーの真っ直ぐな言葉が深々と刺さった。そしてゼノアは自分の持てる力を全て出す事を選択するのだった。



「ぐるおぉぉぉぉぉん!!」


数十頭のブラッドウルフ達が痺れを切らしてゼノア達に襲いかかる!!ゼノアは焦る事なく身構える。


「させるか!!〈剛気〉解放!!」


ずごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


ゼノアは〈闘気〉の上位スキル〈剛気〉を解放した。ゼノアの身体からに深く紅いオーラが爆破的に広がり襲い掛かって来たブラッドウルフ達を吹き飛ばした!!


「ぎゃいぃぃん!!!」

「ぎゃぎぃぃぃん!!」


吹き飛ばされたブラッドウルフ達はゼノアの剛気に当てられ身体を低くして後ずさっていく・・・


「・・・な、何と・・魔法ではなく闘気?!そ、それも・・レ、レッドオーラ・・・あ、あり得ん・・ま、魔法だけでなく闘気も操るのか!」


リズナーはいつもの興味がある時に浮かべる笑みも忘れ只々唖然としていた。


「綺麗・・・真紅のオーラ・・・」

「えぇ・・・本当に綺麗・・・」


ナリアとメルローラは立ち登る真紅のオーラに包まれたゼノアの背中に見惚れていた。


「ば、馬鹿か?!見惚れてる場合か!?あ、あいつは魔法と闘気を両方使えるんだぞ?!・・・絶対あり得ねぇんだよ!!お、俺は信じねぇぞ・・・」


ミレードはゼノアの力を目の当たりにして唇を噛み締める。


「・・・そ、そうだ・・闘気と魔力は水と油・・・闘気が流れる身体に魔力は流れない・・・そして逆もあり得ない・・・だけどそれを可能にする称号とスキルをあいつは持っているんだ・・・」


(・・・こ、これがお父様が言っていた異端の力・・・)


エルスは聖教会のリズナー枢機卿を横目に、これからゼノアが直面する試練を子供ながらに想像するのであった。




森の中で息を潜めている上級生達の引率の先生が周りの静けさに顔を上げる。


「さっきのは一体何だったのでしょう・・・まさかブラッドウルフがここまで出て来るなんて・・・」


ニ年生の引率のイーシアが辺りを見回しながら警戒をする。すると魔法学専門のナルメーラが顎に手を添える。


「油断は禁物です。ブラッドウルフ達は森の外へ向かって行ったわ・・・もし森を抜ける事があれば一年生が危ないわ!!」


「えぇ!行きましょう!だけども魔物学的には今回のブラッドウルフ達の動向は異常よ・・・考えたくは無いけど人為的な何かを感じるわ・・・」


話を聞いていたラグベルが気不味そうに目を逸らす・・・


(まずい!まずい!は、早く回収しないと・・・)


ぱきっ・・・


「へっ?」


ラグベルが考え込んでいると、ふと背後に気配を感じた。ラグベルの背中に嫌な汗が流れる・・・


「・・ま、まさか・・んふっ・・ふはっ・・ふはっ・・ふはっ・・・んぐっ・・」


ラグベルの鼓動は耳元で聞こえる程高まりカタカタと震えながらゆっくりと振り向くとそこにはブラッドウルフの特徴を持った幼い狼が何かを探すように鼻を動かしラグベルの背後まで迫っていた。


「ぶっ!ぶばぁぁぁぁ!!!」


どざぁっ


「な、何だ?!お、驚かせやがって!」


ラグベルは思わず驚き尻餅を付く。するとラグベルの懐から深い青色の箱が転がり落ちた・・・


コトッ・・・


「ラグベル君!大丈夫ですか?!・・・ん?こ、これは・・・?」


イーシアが振り向き駆け寄ると落ちた深い青色の箱を見つけて手に取った・・・


「あっ・・・そ、それは・・・」


焦るラグベルを他所にイーシアが青い箱に目を落とし目を見開く・・・


「なっ・・何でこんな物をラグベル君が持っているの?!こ、この箱は・・・サーメリア学院でも使う魔物玉の波動を抑える箱よ!?・・・あ、貴方・・・ま、まさか・・・」


イーシアが鋭い目つきでラグベルを見下ろすとラグベルは目を逸らし口元を歪める。


イーシアはその反応を見て確信する。


「な、なんて事を・・・自分が何をしたか分かっているの?!皆んなの命を危険に晒しているのよ?!」


「ふ、ふん!!あ、あいつが!!あいつが悪いんだ!!!あいつがこの俺に恥をかかしたんだ!!あいつが全部悪いんだ!!」


「黙りなさい!!!!」


「ひっ・・・」


「貴方は事の重大さを分かっていないわ!!この魔物玉を使用禁止区域で使って強力な魔物のスタンピードが起これば近隣の村や町の人達の命にも関わるのよ?!もしこの事が国王陛下に知れれば貴方のお父様の地位にも影響があるかも知れないのよ?!」


「えっ・・・うぅ・・そ、そんな・・・」


ラグベルは事の重大さに気付き言葉を失う。


「ナルメーラ先生!急ぐわよ!!」


「そうね!行きましょう!皆んな!ちゃんと付いて来てね!!」


「う、うん・・・」


子供達は不安そうな顔で頷く。イーシアとナルメーラが頷き合い森の外へと向かおうと一歩踏み出したその時・・・森の入口の方角がざわめき地響きが迫って来るのであった・・・

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