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第65話 トラブルの予感

ゴルドは昼休憩を終え午後からの仕事に取り掛かっていた。


「お前等ぁ!!気合い入れろぉぉ!!」


「「「おおう!!」」」


ゴルドの檄に男達に気合いが入り力強く持ち場に散って行く。


「ふう・・・ゼノアは今頃、実力測定が終わった頃か・・・ふっ・・どうせ皆んなの度肝を抜いてるんだろうぜ・・・」


ゴルドが何気にセルバイヤ王都の方角を見ると突然途轍もない魔力の波動が押し寄せる!


「ぶはぁぁ!!な、な、何だ?!この魔力の波動は・・・って・・・な、な、何だありぁぁぁ!!!」


セルバイヤ王都の空にゴルドの目が釘付けになる。雲を突き抜け青い空までも越えていく勢いで蒼白く光輝く柱が空へと突き抜けて行った・・・


「・・・あ、ありゃぁぁ・・・十中八九・・・間違いなく・・・ゼノアだ・・・ふっ・・早速呼び出し決定だな・・・」


ゴルドは頭を掻きながら苦笑いを浮かべセルバイヤ王都の空に立つ光の柱を眺めるのであった。




教皇の間。黄金が光輝く煌びやかな装飾が壁一面に施された大きな部屋である。入口から伸びる真っ赤な絨毯の先には玉座とも思える幾つもの宝石を散りばめた大人の背程もある黄金の椅子が鎮座している。初めて見る者には聖職者とは思えぬ金と権利を象徴するような印象を受ける。


聖教会最高責任者シュメール・アルデバルス教皇もまた聖職者を象徴する純白のローブにでっぷりとした身体を包み込み司祭を示す黄金のストラを首から下げている。そして太い両手の指には様々な色の指輪が光を放ち二重顎の下にはこれでもかと宝石を散りばめた大きな首飾りを下げていた。


シュルメール教皇は自分の身体に合わせて設えた黄金の椅子に身体を収め大きな肘掛けに頬杖を付きながらリズナ・セルナード枢機卿の報告を受けている。


「・・・報告は以上です。その他何かございますでしょうか?」


黒髪で身長も高く端正な顔立ちのリズナー枢機卿が軽く一礼する。リズナー枢機卿は聖教会の中でも男性女性関係なく慕われ憧れの的である。同じ男でもシュルメール教皇とは全く違う人種に見える程である。


「ふむ・・・毎日変わり映えせん内容だな・・・たまには面白そうな話はないのか?」


(ふん・・・)


リズナー枢機卿の目尻が僅かに歪む。


「・・・はい。面白いかは分かりませんが・・・ゲイブルの街での魔族スタンピードの功労者の少年がサーメリア学院に入学したそうです。」


「ふん・・・あの眉唾功労者か・・・馬鹿馬鹿しい・・・たかだか五歳の子供に魔族が倒せる筈がないだろう。大方Sランク冒険者共が祭り上げているに違いないわ。そんな子供を学院に推薦など陛下も何をお考えなのか・・・」


その瞬間リズナー枢機卿が驚いたように目を見開き部屋の扉に振り返る!


(何だ?!この魔力は?!)


シュルメール教皇は何も気付かず脂ぎった眉間に皺を寄せ重い身体を背もたれに預ける。その時である・・・教皇の間の扉がけたたましく叩かれ慌てふためいた声が聞こえて来る。


どんどんどんどん!!!


「きょ、教皇様!!た、大変で御座います!!そ、そ、外が・・・外が・・・」


「何だ!!!騒がしいぞ!!外が何だ?!」


シュルメール教皇が面倒くさそうに吐き捨てる。しかしリズナー枢機卿は周りの空気が変わったのを感じとっていた。


「こ、これは・・・この波動は・・・聖魔法です!!」


「な、何だと?!聖魔法だと?!おい!リズナー!!間違い無いのか?!」


「はい。間違いありません。それも濃密でそれでいて洗練された途轍もない魔力の波動です。何重にも魔法結界を施したこの部屋に居ても感じる程です。」


リズナー枢機卿は〈魔力感知〉で感じる聖魔法に驚きと嫉妬の念を抱く。この聖教会に来てから早二十年。聖魔法の研鑽を続け今ではシュルメール教皇よりも実力は上だと囁かれる程になっていた。研鑽を続けた恩恵でスキル〈魔力感知〉を習得する事が出来た程である。リズナー枢機卿は自他共に〈聖魔法〉に確固たる自信を持っていたのだった。


(これ程の聖魔法力・・・どれ程の研鑽を積めば辿り着けるのだ・・・一体何者なんだ・・・)


リズナー枢機卿が口元を緩ませ思いを馳せていると、それを邪魔するようにシュルメール教皇の濁声が響く。


「おい!!リズナー!!何をしている!!早く外の様子を見て来い!!」


自らの我儘を何も考えずに言い放つ教皇に苛つきを覚えながらリズナー枢機卿の頬が一瞬引き攣る。


(ちっ・・・自分で動け・・・だがもう遅い・・・魔力が収束して行く・・・)


リズナー枢機卿は心の声を抑えながら顔を上げる。


「教皇様。既に聖魔法力は消えました。願わくばこの発生源の特定の調査の許可をこの私にお命じください。」


「う、うむ。良いだろう。お前に任せる。」


「ありがとうございます。それでは早速。」


リズナー枢機卿は話を打ち切るようにシュルメール教皇に一礼すると足早に部屋から出て行く。


(ふっ。今は教皇様の相手をしている暇などない。ふふっ・・それにしても一体どんな人物なんだ・・・興味深い・・・)



リズナー枢機卿が出て行った後シュルメール教皇は大きな背もたれに身体を預ける。


「ふん・・リズナーはいつも真面目過ぎて困る。もっと楽に生きれば良いものを・・・のうバルガー・・・お前もそう思わんか?」


シュルメール教皇の問いかけに背後の緞帳の影から白い法衣を纏った堅いの良い赤髪の男が姿を現す。


「はい。そうですな。最近では空いた時間に魔法の素質ある者の為に講義を開いているとか・・・ふっ・・殊勝な事です。」


「ふん・・・まぁ良いわ。お前はリズナーよりも早く聖魔法使いを見つけろ。使えるなら良し・・・もし私の邪魔になるようなら・・・分かっているな?」


「はっ!神の名の下に!」


バルガーはいつもの事のように笑みを浮かべ一礼するのであった。




「さてと・・・ゼノア君。君は私に何か言わなければならない事があるでしょう?んーー?」


ゼノアはマジックポーションを使った次の日の朝、学院寮の入口で待ち伏せしていたラミリアに捕まった。そして今目の前には両掌で顔を支える様に頬杖を付き意味ありげな笑顔で見つめるサーメリア学院長がいる。


(あーー・・・やっぱりこうなるよね・・・でも証拠は無いし・・・)


「え、えーーと・・・何の事・・・かな?」


ゼノアが目を逸らすとサーメリアの笑顔が不適な笑顔に変わる。


「そう言えば昨日、実力測定の時に来ていた冒険者リルーナさんが夕方訪ねて来たのよ。」


ゼノアは自分の顔が熱くなるのを感じ頬に汗が伝う・・・


(・・・リ、リルーナさんが・・・で、でも見られて無いよね・・・)


しかし間髪入れずにサーメリアが続ける。


「リルーナさんがゼノア君にお礼が言いたいそうなの・・・リルーナさんに理由を聞いても教えてくれないの。ゼノア君はリルーナさんに・・・何をしてあげたのかな?あーーそうそう!昨日のあのもの凄い聖魔法陣の中心がリルーナさんのお家だった様な気がするんだけど・・何か関係があるの・か・し・ら?」


サーメリアの眼が段々大きく見開いて行く・・・


(・・・む、無理だ・・・もう誤魔化せないね・・・し、仕方ない・・・)


「・・・ご、ごめんなさい・・ぼ、僕がやりました・・・」


ゼノアは取り調べで自白する犯人のように観念する。そして鞄の中から空になった小瓶を取り出して大きな机の上にそっと置いた。


コトッ・・・


「はぁ・・でしょうね・・・って・・これは・・・ポ、ポーション?」


サーメリアは騒つく胸騒ぎを抑えながら小瓶を手に取りラベルに目を落とす・・・


”みんなをりざれくしょん”


サーメリアは子供っぽく書かれた文字に目を見開く。まさかと頭の中で何度も言葉の意味を反復する。そしてサーメリアの思考が追い付き肩を震わせながら立ち上がりふらふらとゼノアの前に両膝を付いた・・・


「ゼ、ゼ、ゼノア・・く、君・・・??こ、これを・・・ど、ど、どこで・・・?」


「えっ・・・作ったの・・・じいじ達と一緒に・・・」


「ふ、ふへっ?!つ、つ、作った・・・?こ、これを?!」


サーメリアは驚きの余り思わず小瓶とゼノアの顔を交互に見る。


「・・・うん。それは瓶に魔法を詰めたマジックポーションだよ。色々作ったんだけどそのマジックポーションだけは僕一人じゃ作れないからじいじ達に手伝って貰って作ったんだけど・・・」


サーメリアは思わず小瓶を落としてゼノアの両肩を掴み詰め寄る。


からぁん・・・


「はうっ!!」


「か、か、簡単に言わないで!!リ、リザレクションは今やロストマジックなのよ!!リザレクションが使われたのはお伽話にもなっている三人の救世主の内の一人!エルフ王フェール・ザルバリアン様ただ一人よ!!!それも聖魔法使いを何十人も集めて自分の娘を生き返らせたの!!これは私達エルフ族に伝わる真実よ!そして誇りでもあるの!そ、それを・・・簡単に・・・・んっ?」


サーメリアはゼノアの言葉を思い出して違和感を覚える・・・


「・・・ゼノア君・・今、じいじ達に手伝って貰ったって言ったわよね?」


「う、うん・・・」


「そ、そのじいじ達は聖魔法使いなの?」


「えっ?!違うよ・・・」


「じゃ、じゃあ・・どうやって伝って貰ったの?!」


「えっ・・・じ、じいじ達の闘気と魔力を貰って・・・聖魔力に変えて・・・」


「は・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!?!た、他人の闘気と魔力を聖魔法に変えるぅぅぅぅぅ?!そ、そもそも他人の闘気や魔力を貰う事は出来ないのよ?!」


サーメリアの両手に更に力が入りゼノアに詰め寄る!


「えっ・・・えぇっ?!が、学院長なら普通に出来るよ・・・ほら・・」


ゼノアはサーメリアの手に触れ魔力を纏う。しかしサーメリアの纏う魔力に阻まれゼノアの魔力が霧散して消えた・・・


「あ、あれ?ど、どうして・・・」


「当然よ!闘気も魔力も人それぞれ波長が違うのよ?!それを取り込むなんて不可能なの!」


「えっ?!だ、だって学院長も〈魔力創造〉のスキルを持ってるんですよね?だったら他人の闘気も魔力も自分の魔力に創造すれば取り込んで使えるじゃないですか!!」


「は、はへっ?!・・・な、何それ・・・そ、そんな事が・・・」


サーメリアはゼノアの発想に考えが纏まらずに力無くペタンと座り込む。


(・・・あぁ!!そ、そうか・・・普通は自分のステータスを好きな時に見れないんだった・・・だからスキルの説明を見る事が出来ないんだ・・・)


ゼノアは座り込んで放心状態のサーメリアを気まずそうに見つめていた。


「・・・そ、そんな・・・〈魔力創造〉にそんな使い方があったなんて・・・なのに・・この三百と三十二年間・・・魔力操作を極めたと思い込んで・・・私は・・」


(えぇっ?!さ、332歳?!で、でもそうは見えないよね・・・)


サーメリアは肩を落として項垂れる。自分が弟子を取り得意げに魔力操作を教えていた事を恥ずかしく思う。


「・・・はぁ・・この私が・・まさか七歳の子供に教えられるとはね・・・私もまだまだ若いって事ね・・・」


(わ、若くないよーーー!!歳の差325歳!!)


ゼノアは首をぷるぷると振りながら心の声を抑えてつっこむ。


そんなゼノアを見ながらサーメリアはゆっくりと立ち上がり握手を催促するように手を出す。


「ゼノア君。君は明日から授業は受けなくても良いわ!君はここに来て私に色々教えて欲しいの。君の知識と技術を私に・・・」


「お断りします!」


「ふへっ?!」


ゼノアはサーメリアの申し出を皆まで聞かずに切り捨てた。そしてサーメリアの呆けた顔を見据える。


「僕はここに学院生活を満喫しに来たんです!学院長の為に来たんじゃないんです!!じいじ達が言っていたよ!”お前を利用する輩が現れるから気を付けろ”って。僕には学院長がその輩に見えるよ・・・」


サーメリアは学院長としての立場を忘れていた事に気付きゼノアの言葉に詰まる。


「・・えっ・・いえ・・・あ、あの・・じゃ、じゃあ・・週3・・・いえ・・週2で・・・」


(はぁ・・・この手の人は甘い顔をすれば癖になる・・・楽しい学院生活を満喫する為にここは断固拒否で。)


「お断りします!ヒントはあげました!もう大人なんだから自分で考えてください!」


ゼノアは懇願するサーメリアを一瞥するとそのまま踵を返して扉へ歩き出す。


「えっ・・・そ、そ、そんな事言わないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」


サーメリアは数日前の繰り返しのようにゼノアにしがみ付きそのまま引きずられて行く・・・


「お願ぁぁぁぁぁぁい!!!しゅ、週一・・・いえ!月二でもいいからぁぁぁぁぁ!!!」


「お断りします!」


ゼノアはそのままサーメリアを引き摺りながら部屋の扉に近付くと勢いよく扉が開きラミリアが入って来た。


「学院長!!どうかされましたか?!」


振り返ればサーメリアはいつの間にか立ち上がり何事も無かったようにすました顔でラミリアを見ていた。


「騒がしいですよ。ラミリアさん。何でもありません。」


「え・・・は、はい。も、申し訳ありません・・」


(うわ・・・この変わりよう・・・でも今のうちに・・・)


「それでは失礼しましたーー!」


(あっ・・・)


首を傾げるラミリアの脇をゼノアがすり抜けて行く。その後ろ姿をサーメリアは物欲しげに見送るのであった。

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