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第63話 呪いの指輪

ゼノアがセルバイヤ王国に出発した後、ガベルは隣に居るギルドマスターのミランダに一本の小瓶を差し出す。


「これを・・・ギルドでも保管しておいてくれ。」


「こ、これは・・・?」


ミランダは首を傾げながら小瓶を受け取る。そして小瓶に子供っぽい文字で書かれているラベルに目を落とした・・・


「ふ、ふえっ?!・・・りょ、領主様・・・こ、これは・・・」


ミランダの頬が痙攣する。


「・・・あぁ。書いてある通りだ・・・ゼノア君がゲイブルの街が心配だからと、とんでもないマジックポーションを作らされたぞ。まあ・・・ユフィリアは嬉々としていたがな・・・」


「ま、まさか・・これも三十ダース?」


「馬鹿言え!三本だ!三本作るのに毎日ヘトヘトで十日近く掛かったんだ!ユフィリアが張り切ったせいでな!!」


ガベルは作業中の過度の疲労感を思い出し思わず語尾が強くなる。そしてゴルドも大きくため息を吐いた。


「はぁ・・・そうだぞ!!まだ一人じゃ出来ないからってよ!俺達は一本作っては二日休んでを繰り返してやっと三本作ったんだぜ?!ゼノアはもっと作りたいって言ってたがよ・・俺達が限界だったんだ・・・流石のユフィリアも四本目は無理だって諦めたんだ!!全く・・俺の孫は年寄り使いが荒いぜ!」


しかしゴルドは悪態を吐きながらも口元は笑っていた。


「あぁ・・・全くだ。それにゼノア君に付き合っていると私達の闘気や魔力も洗練されているように感じた・・・本当に私達を飽きさせないな・・・」


ガベルも呆れながらも悪い気はしていなかった。


「同感だぜ・・・この歳になってもゼノアの言う事やる事には驚かされっぱなしだからな・・・楽しくてたまらないぜ・・・だがよ・・あのマジックポーションを使う事はまず無いだろうな。」


「そうだな・・・〈王都ゼルガリアの落日〉級の危機が無ければ必要ないだろうな・・・それにゼノア君が限界まで魔力を注ぎ込んだマジックポーションは・・この国の最大最強の切り札になるだろうな・・・」


「あぁ・・・だろうな・・・あっ!そう言えばよ!前から気になってた事があってよ・・・」


「ん?何だ?」


「おう・・ロディアス・アルバンを助けた時によ・・ゼノアが俺達の闘気と魔力を使ったよな?あんな事が普通出来るのか?」


「ふっ・・それは私も思ったが普通は出来ないだろうな。まぁ・・・ゼノア君だからな・・・」


「そうだな・・・ゼノアだからな・・・」


ゴルドはガベルの言葉に共感し笑みを浮かべる。そして豆粒のように小さくなった馬車を眺めて想いを馳せるのであった。




「ふーん・・・呪いの指輪か・・・」


ゼノアはリルーナと食堂へ戻りお昼ご飯を食べながら話を聞いている。


「・・・私のせいで・・・メリーラが・・・日に日に弱ってるのが分かるの・・・聖教会に行ったって金貨200枚なんて大金到底用意出来ないわ・・・ねえ・・・君の回復魔法は聖魔法なんでしょ?」


リルーナが縋るようにゼノアの顔を覗き込む。ゼノアはフォークを止めて皿に残った肉を見つめる。


(・・・うん。この人の話は本当みたいだね・・・でも、ここで聖魔法を使えるって言えば秘密だと言っても絶対噂が広がって行くんだ・・・そうゴルじいが言ってた・・・)


「・・・さっきも言ったけど・・・内緒だよ。」


「そ、そんな・・・」


いい返事が返って来ると思っていたリルーナは落胆の表情でゼノアを見つめる。


「ちょっとあんた!!人助けする為に冒険者になるんじゃないの?!リルーナの妹を見殺しにするつもり?!」


黙って話を聞いていたカミラが立ち上がりゼノアに詰め寄る。


「はぁ・・・助けないとは言ってないよ。僕の個人情報は内緒だって言ってるんだ。それにその指輪は本当に呪いの指輪なの?」


「えっ?・・・どういう事・・・?」


カミラはゼノアの言葉の意味が分からずキョトンとする。


「だって、その指輪は生活感がある隠し部屋にあったんだよね?そこで生活していた人が付けていたとしたらなんで呪われているの?」


ゼノアの問いかけにリルーナがはっと動きを止め目を泳がせる。


「そ、そう言えば・・・不自然だわ・・指輪はちゃんと箱に入って見える所に置いてあったわ・・・あそこに住んでいた人が使っていた・・・じゃあ・・・一体・・・」


リルーナはゼノアの言っている事に気付いた。部屋の住人が普段からわざわざ呪われた指輪を付ける事は考えにくいのだ。


「・・・あのね、僕のじいじが言ってたんだけど、ダンジョンで見つかる装飾品には着飾る以外に魔法やスキルが付与された物があるって。それは付けた者の能力を上げたり補助したりする他に何かの役割がある物もあるんだって。ねえ、その部屋って・・・何か他に変わった所は無かった?」


「・・・そう言われても・・・」


「・・・何かあったかしら・・・」


リルーナとカミラが記憶を辿っているとずっと沈黙を守っていたアルグが弾けたように顔を上げる。


「おい!そう言えばギルドの調査であの部屋に開かずの扉があるって言ってたよな?!」


「あっ・・・あぁっ!!も、もしかして・・・鍵?!」


「あぁぁ!!そ、そうよ!未だに扉が開かないってギルド職員が頭を抱えていたわ!」


ゼノアは暫く考えると口を開く。


「それなら・・・急いだ方がいいよ!!その指輪は付けた人の魔力を吸い取って力を発揮するんだ!大人の冒険者なら問題ないかも知れないけど妹さんの様子を聞く限り危険だよ!!吸い取る魔力が無くなれば・・・次は生命力・・・」


ガタン!!


「わ、私の馬鹿っ!!なんで気づかなかったの?!それなら・・それなら対処は出来るわ!魔力ポーションよ!!」


(えっ?魔力ポーション?)


ゼノアは不思議そうに首を傾げる。


リルーナは自分の考えが及ばなかったことを悔やんだ。それと同時にゼノアの冷静な思考に感謝するのだった。


「そうと分かれば急がないと!!ねえ!お願い!君も来て!!」


リルーナはゼノアの手を引き走り出す。


「えっ・・・あっ・・まだご飯が・・・」


「そんなの後で好きな物好きなだけ奢ってあげるわ!!さあ!早く!!」


リルーナはアルグとカミラを残してゼノアを引き摺るように食堂から出て行った。


「・・それにしてもあのガキ・・・一体何者だ・・・一度話を聞いただけで俺達も気付かなかった事を・・・」


「ふん。大方そのじいじに色々と叩き込まれたんじゃない?はぁ・・・それにしても強くて生意気で頭の良いガキは嫌いよ・・・」


カミラは全てにおいて七歳の子供に負けたと悔しさを滲ませるのであった。




(早く!一秒でも早く!待っててよ・・メリーラ!今行くからね!!)


リルーナは学院の門を飛び出すと馴染みの道具屋に真っ直ぐ駆け込む。


バァァン!!


「おいおい!扉が壊れるじゃ無いか!!」


そんな店主の言葉も聞き流しリルーナがカウンターに詰め寄る。


「おっちゃん!!魔力ポーション!!魔力ポーションを頂戴!!」


「お、おい!どうした?!」


「いいから!魔力ポーションを!!」


リルーナが店主に詰め寄るが店主がバツが悪そうに頭を掻く。


「あ、あぁ・・それなんだが・・・まだ入荷して無いんだ・・・商業ギルドの馬車が遅れているらしくてな・・・多分他の店でも同じだと思うぞ。」


「そ、そんな・・・」


リルーナがその場で崩れ落ち膝を付く・・・すると不思議そうな顔でゼノアは落ち込むリルーナに近付く。


「あのさ・・なんで魔力ポーションなの?直接自分の魔力を渡せばいいんじゃない?」


「・・・ば、馬鹿な事言わないで!!そんな事出来る訳ないじゃない!!魔力は人それぞれ属性が違うのよ?!例え同じ属性でも人それぞれ違うの!!その属性を無視して・・・そもそも魔力を直接渡すなんて・・・」


リルーナは不思議そうな顔をして見つめるゼノアを見てふと実力測定の時の記憶を思い出す。


「・・・あ・・・あぁぁぁ!!!!む、無属性!!無属性魔法ぉぉぉ!!き、君は出来るのね?!君は魔力を・・・魔力を他人に直接渡す事が出来るのね?!」


リルーナが思わずゼノアの両肩を掴んで詰め寄る。


「う、うん。もちろん出来るよ・・・こんなの普通誰でも出来るよね?じいじ達も何も言わなかったし・・・」


「「出来るかぁぁぁ!!」」


リルーナと店主の声が揃い店中に響き渡たった・・・


「ま、まぁいいわ!!さあ!急ぐわよ!!」


ドバァァン!!


リルーナは乱暴に扉を開け放つとゼノアの手を引き走り去って行った。


「はぁ・・・開けたら閉めてけよ・・・」


店主は呆れ顔でカウンターに頬杖を付くのであった・・・

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