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第59話 実力測定 3

「ゼノア君凄いよーー!!やっぱり私が思った通りゼノア君ってゲイブルの街の守護者なんでしょう?!」


ナリアが興奮気味で軽く飛び跳ねながら駆け寄りゼノアに詰め寄る。ゼノアも照れくさそうに目を逸らす。


「・・え・・う、うん・・周りの人達は僕の事をそう言うけど・・・あれはゲイブルの街の皆んなが自分の街を護ったんだよ・・・僕はその中の一人だよ・・・事実、皆の力が無かったらもっと大惨事になっていたんだよ・・」


ゼノアはゲイブルの街の魔族スタンピードで自分だけ守護者と持て囃されるのが納得出来なかった。あの場で見せたゴルド達の命を賭けた必死な姿が目に焼きついているのだ。もしそれがなければ街はどうなっていたかと思うと今でも背筋に寒気を感じる程であった。


しかしナリアはそんなゼノアの想いも知らず夢中でゼノアの手を取り更に詰め寄る。


「でも!お兄様が言っていたわ!ゲイブルの街を救ったのは途轍もない魔法で魔族を倒した年端も行かない子供だったって!!それがゼノア君なのよね?!・・・それに・・・」


「僕だけじゃないんだ!!」


「えっ?!」


ナリアは予想外のゼノアの強い言葉に息を詰まらせる。ゼノアは握られた手を軽く振り払う。


「・・・ど、どうしたの・・・?」


「君は何も分かっていない!ゲイブルの街を護ったのは僕だけじゃないんだ!街の皆んなが・・・命を賭けて・・・ボロボロになって・・・何度も立ち上がって・・それでも諦めなかったから奇跡が起きたんだ・・・僕一人の力では街は護れなかった・・・なのに・・・周りの人は僕一人だけ守護者なんて・・・」


ゼノアはナリアから目を逸らし俯く。唖然としていたナリアはゼノア言いたい事に気付き自分の言動を恥じるように俯いた。


「・・・あ、あの・・その・・・」


ナリアが言葉を選び話そうとすると気不味い雰囲気を打ち破るようにマリーナが目を潤ませて駆け寄りゼノアを抱きしめた。


「あうっっ!!」


「もう!!君はなんて良い子なのぉぉぉぉ!!私!感動したわ!!さぞかし君のご両親は素晴らしい方なんでしょうね!!」


ゼノアの話を聞いていたマリーナは感極まり目尻に光るものを滲ませゼノアを胸に収め力一杯抱きしめた。


「もぶっ・・もぶっ・・・」


(こ、これは・・・ふん・・・むぶっ・・・中々・・)


マリーナの胸に収められたゼノアは先程の感情も忘れマリーナの胸の中で光悦な表情を浮かべていた。そんな姿をナリアがジト目で眺めていた・・・


(・・・ゼ・・ゼノア君・・・ついさっきまで真面目な話をしてたのに・・・なんだろう・・このもやもやする気持ちは・・・)


ナリアは胸の真ん中に手を添えて口元を引き攣らせながらゼノアの緩んだ顔を眺めていた。



「ん゛っ・・ん゛んっ・・・ゼ、ゼノア君・・お楽しみの所悪いのだけど・・・」


ラミリアがマリーナの胸に挟まっているゼノアに声を掛ける。ゼノアは慌ててマリーナの凶悪な胸から顔を出す。


「ぶばっ!!い、いや!こ、これは・・・楽しんでいる訳じゃ・・・不可抗力と言うか・・・決して・・・」


(嘘ばっかり・・・)

(嘘ね・・・)


ナリアとラミリアが目を細めてゼノアを見つめる・・・


「まぁいいわ・・・それよりあの冒険者の子・・あのままだと危険よ・・・」


ラミリアに言われて外を見るとカミラが職員達に壁から助けられその場に寝かされていた。カミラはマットと共に対物理結界を突き破り強固な外壁にめり込んだのである。全身の骨は悉く折れ呼吸するのも儘ならない状態であった。


(あっ・・・そうだった・・・まさかマットの後ろに隠れるとは思ってなかったから・・・つい力任せに蹴っちゃったんだよね・・・)


ラミリアは学院長サーメリアからゼノアが強力な聖魔法を使うと聞いていた。

この世界では聖魔法使いは希少であり、このセルバイヤ王国でもたつた二人しかいないのだ。ラミリアは聖魔法を見た事が無くこの機に見てみたいと思いゼノアに声を掛けたのだった。


「そうですね・・・ちょっと行って来ます!」


「あん・・・」


ゼノアは後ろ髪を引かれながらマリーナの抱擁から抜け出すとその場から駆け出すのだった。


(まあ・・・教職員は有事に備えて回復ポーションを持っているから大丈夫だと思いますが・・・)


ラミリアは駆けて行くゼノアの背中を見ながら歩き出すのであった。




カミラが部屋の壁を突き破り灰色のマットと共に学院の外壁に激突する・・・


ずどぉぉぉぉぉん・・・・


「うえっ!?な、何?!何が起こったの?!」


外で魔力の実力測定をしていた黄色髪の女性が突然の轟音に驚き思わず自分の杖を抱きしめる。キョロキョロと辺りを見渡し砂埃の向こうに目を凝らした。

砂埃が晴れると黄色髪の女性がギョッとして一瞬息が止まる・・・外壁に三分の一程めり込んだ灰色のマットからまるで生えたようにだらりとカミラの手足がはみ出していた。


「えっ・・・な、何・・・って・・あ、あの服・・・ま、まさか!!」


黄色髪の女性は見覚えのある仲間の袖の色柄に慌てて駆け寄ると灰色のマットが自然に壁から剥がれて地面に倒れる。


ずたぁーーん・・・


「うえっ?!」


黄色髪の女性が絶句する。


そこにはマットに押し潰されて髪は乱れ鼻は曲がり白目で気を失っているカミラが外壁にめり込んでいた・・・


「あ・・・あぁっ!!や、やっぱり!!カミラ!!どうしたの?!大丈夫?!何があったの?!」


カミラは声を掛けられ薄らと目を開ける。


「・・・リ、リルーナ・・・た、助け・・て・・ば、化け物が・・・がふっ・・・」


カミラが虚な表情で譫言のように呟くと外壁から剥がれて正面にいた黄色髪の女性に受け止められた。


「カミラ?!大丈夫?!だ、誰か!!手を!手を貸してぇぇぇ!!」


「あっ・・・は、はい!!」


黄色髪の女性の声に我に弾けるように我に返った学院の教員達が動き出しカミラに駆け寄りゆっくり静かに地面に寝かせた。


「・・・ぐふっ・・あぐっ・・」


「こ、これを!」


学院の職員の女性が緑色の液体が入った小瓶を差し出すとリルーナは小瓶を鷲掴みで受け取る。


「カミラ!回復ポーションよ!!飲んで!!」


リルーナがカミラの頭を抱えて小瓶を口元に傾け液体を流し込むとカミラの喉が少しだが上下に動く。


「うぐっ・・げほっ!!ごほっ!・・・うぐっ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」


カミラは回復ポーションのお陰で完治とは行かないが話せるぐらいに回復する。


「カミラ!!どう?!大丈夫?!」


リルーナがカミラの顔を覗き込むとカミラは思い出したかのように目を見開きリルーナに必死にしがみ付く。


「リ、リルーナ!!は、早くここから逃げないと!あ、あいつが来る!!あ、あいつが・・・」


「カ、カミラ!落ち着いて!どうしたのよ?!何があったのよ!!」


「お願い!あ、あいつが来る!!あいつは普通じゃない!!化け物よ!!は、早く!早くここから私を連れ出して!!」


リルーナはカミラを宥めようとするが怯えきったカミラは更にパニック陥る。そしてカミラが気配を感じてチラリと自分が突き破った壁の方に目を向けると自分を蹴り飛ばした男の子がこちらに向かって駆けてくる姿があった・・・


「ひっ!ひぃぃぃぃぃぃ!!!や、やっぱり来たぁぁぁぁぁ!!!は、早く逃げないと!!こ、殺される!!は、早くぅぅぅぅ!!!もう!ど、退いて!!」


カミラは更に慌てふためき、訳が分からず唖然としているリルーナを押し退け地面を這いずりながら逃げようとする。


「な、何よ!どうしたのよ!!あの子が何なのよ?!・・・もう!!」


リルーナはカミラが怯える元凶が駆け寄る男の子だと判断し駆け寄るゼノアの前に立ちはだかった。


「あんた!止まりなさい!!」


(ん?あの人・・・誰?でも取り敢えず・・・)


ゼノアはリルーナの目の前で加速する。


しゅばっ・・・


「えっ?!き、消えた?!」


ゼノアは加速してリルーナの脇をすり抜けると這いずるカミラの前に立ちはだかった。


「・・うえっ・・・・うきゃぁぁぁぁぁ!!


「えぇっ?!いつの間に?!」


カミラは目の前に現れた足を恐る恐る見上げゼノアの顔を見るなり回復し切れていない身体で飛び起きる。そして尻餅を付き脚をばたつかせながらながら後ずさる・・


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!」


(ん?意外と元気みたいだ・・・でも・・後で何かあったら困るし・・・〈ヒール〉・・)


ゼノアはカミラに黙って手を翳すとカミラは何かをされると恐怖でビクッと肩を跳ね上げ蹲る。


「ひっ!ひぃぃぃ!!!」


すると怯えて蹲るカミラの身体が蒼白い光に包まれる。しばらくカミラは蹲って震えていたが身体の異変に気付き恐る恐る身体を起こす。


「ひっ・・・へっ・・・い、痛みが消えた・・・か、身体が・・・軽い?!あ、あれ?!この前ダンジョンで痛めた肩が・・・治ってる?!」


(あ、あれは!聖魔法?!それも完全無詠唱?!・・・こ、この子・・も、もしかしたら・・・)


リルーナはゼノアの聖魔法を期待に満ちた目で見つめていた。


カミラはその場で立ち上がり不思議そうに身体のあちこちを捻り身体を確認していた。そして気付く・・・これは目の前の子供の仕業だと・・・


「あ、あんた・・・何故・・・」


「言っておくけど僕はただ副学院長がおばさんの事を心配していたから助けただけだよ。あんたが僕達に言った言葉は絶対に許さない!僕達は冒険者に夢と希望を持ってここに居るんだ!!その夢や希望を踏み躙ったあんたは冒険者としても人間としても最低だ!!」


ゼノアはカミラを見上げ軽く睨むと脇をすり抜ける。カミラはゼノアの言葉が胸に刺さり俯き下唇を噛み締めていた。何かを言いたげにゼノアを目で追うが言葉が出なかった。


ゼノアが戻ろうとすると目の前に副学院長ラミリアがいた。


「あっ!副学院長!次は魔力の実力測定ですね!!」


ゼノアの笑顔にラミリアはなんとも複雑な笑みを浮かべた。真っ直ぐで正義感の塊のような性格、七歳とは思えない言動、規格外の身体能力・・・そして希少な聖魔法の使い手である。そしてそれでもまだ実力測定を続けるつもりなのかと少しだけ呆れが入った表情であった。


「・・・はぁ・・ゼノア君。次は何も壊さないようにね・・・お願いよ。」


ラミリアはため息をつくとゼノアの頭に手を置く。


「・・・は、はい・・ごめんなさい・・・」

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