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第48話 歓喜の叫び

アルバン・ロディアスは腹に短剣を突き立てられ呻くキメルの両脇に手を入れ馬車の中に引き入れる。


「キメル!しっかりしろ!!」


「うぅ・・くっ・・・」


ゼノアもユフィリアと頷き合うとセシーラの膝から飛び降りキメルを引き上げるのを手伝う。


「キメルさん!しっかり!!傷は浅いよ!!大丈夫だよ!!」


(ユフィリアさんの言う通り襲って来た・・・もうこれは盗賊じゃない。)


「ちょっと待ってください!!」


セシールは状況を素早く把握すると馬車の中央にある机を素早く床に収納してキメルを寝かせるスペースを作る。


「さあ!ここへ寝かせましょう!!」


「うむ!助かる!!」


アルバンとゼノアがキメルを中へ引き込み床に寝かせる。


「えっ・・・キメルさん!!どうしたの?!大丈夫なの?!」


腹部に刺さった短剣の根本から血を流すキメルの苦しむ姿を目の当たりにしたイリアがふるふると肩を震わる。


アルバンは短剣が刺さっている部分の服を丁寧に破り傷口を露わにする。


「イリア!見てはいけない!」


「えっ・・あ・・」


イリアは父親が見せた真剣な表情に後退る。するとセシーラがイリアの視界を遮るように優しく抱きしめた。


「イリア様。大丈夫です。」


(あふっ・・・柔らかい・・・)


イリアはセシーラの胸の中でうっとりし

気持ちを落ち着けるのであった。



露わになったキメルの傷口は刺さった短剣の周りから青紫の筋が大きく広がっていた。


アルバンが眉を顰める。


「こ、これは・・・」


「毒・・だ・・・たとえ急所を外しても毒で殺す・・・こいつは人を殺す事を仕事にしているんだ・・・でも・・あいつらの思うようにはさせない!!」


ゼノアは両手をキメルの傷口に翳し魔力を集中する。


(魔力創造で回復のヒールと毒消しのアンチドーテを合成する!!)


「アルバンさん!今です!短剣を抜いてください!」


「うむ!!キメル!少し我慢しろよ!!・・・ふん!!」


アルバンがキメルの腹部からどす黒い短剣を一気に抜き放つ!


「ぐふっ・・・」


「今だ!〈ハイヒール〉!!」


短剣が抜かれキメルの腹部から血が溢れだす。しかし次の瞬間ゼノアの手から放たれた蒼白い光が傷口を包むとあっという間に傷口が塞がり毒々しい青紫の筋が消えて行った。そして真っ青だったキメルの顔色が赤み掛かった色を取り戻す。


「う・・うん?い、痛くない・・・あれっ・・苦しく・・ない・・・傷口が・・・ない?!」


キメルは身体を起こして傷口があった所を恐る恐る見ると何度もペタペタと自分の腹を触りゼノアの顔をゆっくりと見る。


「うん!もう大丈夫です!」


ゼノアがホッとした顔で笑うとキメルがゼノアの手を両手で拝むように掴む。


「えっ・・・」


「ゼノア君!ありがとう!私はもう駄目かと思ったよ!!本当にありがとう!!」


「い、良いですよ。僕に出来る事をしただけです!とにかく間に合って良かった!」


キメルはあどけなく笑うゼノアの手に額を付けて何度も命を救われた事を感謝するのだった。


そしてアルバンもまたゼノアの魔法を目の当たりにして心の何処かで”子供が?”と疑っていた自分を反省していた。


(・・ほ、本当だった・・・回復と毒消しを同時に・・それに確か〈ハイヒール〉は上級魔法だった筈だ・・だが回復魔法に毒消しの効果があるとは聞いた事がない・・・一体この子は・・何者なんだ・・・)


セシーラに胸に収まっていたイリアもキメルの明るい声を聞きセシーラの腕をすり抜けて駆け寄る。


「キメル!大丈夫なの?ねえ!大丈夫なの?」


イリアは心配そうな顔で身体を起こしたキメルにしがみ付き何度も問いかけていた。


「お嬢様。ありがとうございます。私は大丈夫です。ゼノア君のお陰でこの通りです。」


キメルが刺された筈の腹をパシンと叩く。


「うぅ・・・良かったの・・・も、もう大事な人が目の前で死んじゃうのは嫌・・・うぅ・・うあーーん!!良がっだぁぁーーー!!」


「ふっ・・イリア・・・」

「お嬢様・・・うっ・・」


一人ペタンとへたり込んで声を上げて泣くイリアを皆が目頭を押さえて優しく見守るのであった。




「ふっ・・・さすが元Sランク冒険者・・四属性魔導士ユフィリア・・・この我に傷を負わせるとは・・・」


オーレンは頬の傷を指でなぞり指に付いた自分の血を見てフッと笑う。


「ふん!あんたがとろいのよ!それより私が乗っているのを知ってたみたいね。大方、盗賊の仕業に見せるために街では襲わなかったんでしょう?だから早めに来て偵察してたってところかしら?」


「・・・ふっ・・見抜かれていたか・・・だが良いのか?この中で戦力になるのはあんたしかいないだろう?・・・さっきの男・・急所は外したが毒が回って死ぬぞ?助けなくて良いのか?」


「ふん!さあ?どうかしらね・・・あんたの思う通りに行くかしら?」


すると突然馬車のからイリアの泣き声が響く。ユフィリアはびっくりして馬車の中を横目で覗くとゼノアがニッコリ笑って頷いた。


(はぁ・・びっくりさせないでよ・・・)


ユフィリアがほっと胸を撫で下ろす。


「くっくっく・・・遅かったようだな。我は闇の住人・・・絶望の嘆きは心地よい。」


オーレンが優雅に掌で顔を隠すようにポーズを決める。するとユフィリアは額に掌を添え笑みを溢す。


「ふっふっふ・・・何を勘違いしてるのかしら?あれが絶望の嘆きに聞こえるの?はん!最近の闇の住人とやらは耳がおかしいのかしら?あれは歓喜の叫びよ!!


「ふっ・・強がりを・・・」


「じゃあ教えてあげるわ!キメル!出て来なさいよ!生きてるわよね?」


ユフィリアの声にキメルは恐る恐る馬車から身体半分を出して見せる。


「あぁ!生きてるぞ!お陰様でこの通りだ!!」


さっき確実に毒の短剣で刺した男が元気に現れ冷静沈着なオーレンの頬があからさまに引き攣る。


「・・・何っ?!馬鹿な!?あの毒は魔獣でさえも死に至る猛毒だぞ・・お前・・・何をした?!」


「さあね?教える訳ないでしょうが!!行くわよ!!アイスジャベリン!!」


「うおっ!!!」


ユフィリアの声と共に瞬時に無数の鋭い氷の棘がオーレンの足元から突き出る。咄嗟にバック転で避けるが黒く長いコートが氷の棘に貫かれコートを捨てたオーレンがバランスを崩して地面に膝を付く。


ずざぁ・・・


「ちっ・・・お気に入りのコートが・・・」


「ほらほらどんどん行くわよ!!エアバレット!!フレイムランス!!ロックバレット!!」


ユフィリアは問答無用で魔法を連打する。オーレンは堪らず斜め後ろにバックステップで逃れようとする。しかしオーレンは勢いよく固い何かに背中を打ちつけた?


どぉぉん!


「うぐっ!!な、何っ?!」


オーレンが振り向くとそこには逃げ道を塞がれるように大きな岩の壁がそそり立っていた。


「馬鹿ね?同じ手が何度も通用すると思ってるの?さあ!喰らいなさい!!」


「ちぃ!いつの間に!?」


ユフィリアが放った魔法が一斉にオーレンに襲い掛かる!!


「くそっ・・・・」


ずどどどどどどどどどど!!!!


全弾着弾し水蒸気と土煙が晴れる。そこには辛うじて致命傷を避けたが傷だらけで血を流すオーレンが膝を付き肩で息をしていた。


「へー・・・アレを凌いだんだ・・・もしかしてその黒装束・・魔法耐性付き?」


ユフィリアご目を細めてオーレンの図星を付く。オーレンは膝を付いたまま正解とばかりに口元を歪める。


(くっ・・こ、これがSランク冒険者・・この黒装束でなければ死んでいた・・・流石だ・・魔法の発動も速いがそれ以上に威力も段違いだ・・・こ、このままでは・・・まずい・・か、考えろ・・・何か突破口がある筈だ・・・そ、そうだ・・何故あの男は回復出来た・・・?確か・・あの馬車には・・ユフィリアとアルバン・ロディアスとその娘・・・メイドと男の子供・・・・んんっ?男の子供・・・何故・・・だ・・・我等が襲ってくると分かっていて・・・なぜ子供を乗せた・・何故・・・っ?!・・・ま、まさか・・・もしそうなら・・・)


オーレンは一つの仮説に到達し声を上げる!


「メーリア!!馬車の中の男の子供を拘束ろ!!」


「なっ?!まだ仲間がいたの?!」


ばりぃぃぃぃん!!


ユフィリアがガラスの割れる音に焦り馬車に振り向くと馬車の反対側からゼノアの首に腕を回し黒い刀身を突き付けた黒装束の女が現れたのであった。

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