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第47話 暗殺者オーレン

ナルベス達はセルバイヤ王都を目立たないように夜半に荷馬車で出発し明け方にはゲイブルの街を通り過ぎその先の森の中で身を潜めていた。ここまでの道中もそうだが身を潜めている間もオーレンとメーリアの”闇の掟”を延々と繰り返し聞かされうんざりしていたのは言うまでもない。


「ふっ・・・こんな面倒な事をせずにこの闇に紛れて始末した方が安全且つ簡単だろう。」


「そう・・例え元Sランク冒険者と言えど気付かれなければいい事。我等にとっては簡単な事よ。」


「・・・だ・か・ら・・それでは駄目なんだ!何度言わせる!!ここでアルバン・ロディアスを暗殺して書類を奪ったら真っ先に疑れるのは私達だぞ?!お前らもプロならどんな条件でも成功させろ!!いいな?!」


ナルベスは何度も二人に同じ事を言いか聞かせこのやり取りを何度となく繰り返していた。


「ふっ・・そうだな。お前の言う事も一理ある・・・我等は闇のプロ・・・暗殺者。どんな状況下でも任務を遂行する。」


「そう。我等は闇のプロ・・暗殺者。どんな状況下に置いても必ず標的を闇に葬り去る・・・そう・・それが・・・」


「「闇の掟!!」」


(・・・あぁ・・・もう帰りたい・・・)


ナルベスは気持ち良さそうにポーズを決める二人を他所に頭を抱える。ドーランド達の気持ちが嫌と言うほど分かったのであった。



ゼノア達は王都から乗って来た豪華な馬車でベルボア帝都へ移動していた。ベルボア帝都は馬車で5日程の距離にあった。そしてユフィリアが護衛対象が近くにいた方が良いと提案しアルバンとイリアが同乗し世話役としてセシーラも同乗していた。


ユフィリアは優雅に紅茶を啜りながら窓の外を眺める。時折口元が緩み悪巧みをするような笑みを浮かべていた。


(ふふ。恐らくアルバン達を襲ったのは弟のヘルバン・ロディアスの仕業・・・あの場でそれを言えばセルバイヤ王都に戻ると言ったに違いないわ。だけど証拠が無ければシラを切られるのが落ち・・・だけど奴等は現場から消えたアルバン・ロディアスの生死は確認出来ていない。それに奴等だって馬鹿じゃない。あの場にもう一台特別な馬車があってガベル達が助けに入った事ぐらいは調べれば分かるはず。だとすれば・・・街で事を起こさなかったのなら、この辺りに来ていてもおかしくはないわ。ふふ・・それにベルボア帝都のロディアス商会は本店だけあって品揃えが半端ないのよね・・・さて。さっさと片付けて楽しい買い物よ!)


「うふふ・・・それも・・ただよ・・無料よ・・うふふ・・・」


イリアがアルバンの服の裾を引っ張る。


「お父さん・・・ユフィリア様も大人なのに心の声が漏れてるわ・・・」


アルバンは慌てて上目遣いで見上げるイリアの口を塞ぐ。


(しっ!・・・ユフィリア殿はいいんだ。大人になると色々とあるんだよ。そっとしておくんだ。)


「ふーーん・・・そうなんだ・・・」


イリアはよく分からないが口を尖らして足をパタパタと動かす。そして先程からメイドのセシーラの膝に座り胸を枕代わりにして寝息を立てているゼノアを見て眉を顰める・・・


(うぐぐ・・・ちょっと余分にお胸にお肉がついてるからって・・・でも今に見てなさい・・・ふふ・・私はまだ成長期・・・うふふ・・・今にばいんばいんのボインに・・・うふふ・・・そしたら・・・うふふ・・・)


「ゼノア様をお胸に埋めて・・・うふふ・・うふふ・・・そのまま・・・うふふ・・・」


「こら・・・お前も心の声がだだ漏れだぞ・・・」


アルバンが頭に手を置くとイリアは我に返って肩を跳ね上げる。


「はうっ・・いけない!私ったらつい・・・」


イリアが俯きもじもじしていると馬車がゆっくりと止まった。


「あら・・・?」


「ん?どうした・・・?」


ユフィリアは警戒して辺りの気配を探る。アルベルトも身構える。ゼノアも心地よい揺れが止まり目を覚ました。


「ん・・・」


「ゼノア様。お目覚めですか?」


セシーラの優しい声に寝惚けながらセシーラの顔を見上げ今度は顎から胸に埋まる。


ぽふ・・・


「んふぅ・・・」


ゼノアが寝惚けていると馬車の扉が開かれキメルが現れた。


「ん?」


「旦那様。失礼致します。只今、すぐそこで荷馬車が横転して立ち往生しております。今、護衛の冒険者達が助けに行っておりますので暫くお待ちください・・・」


「はっ?!駄目よ!!何をしているの?!近付いては駄目!!早く戻るように言って!!罠かも知れない!!」


ユフィリアは危機感のないキメルの行動を叱責するように声を上げる。そして馬車の中に緊張感が走る!


「えっ?!・・あっ・・・」


「キメル!!言う通りにするんだ!!早く行け!!」


「は、はい!」


戸惑うキメルを後押しするようにアルバンが声を上げると足がもつれバランスを崩しながらもキメルは振り返り走り出す。しかしその時、黒い影に覆われ腹部に痛みと共に冷たい感覚が走った・・・


「うぐっ・・・な、なにを・・・」


何が起こったのか分からずキメルが痛みが走った場所を見るとそこには黒い薄刃の刀身が自分の腹に突き刺さっていた。


「な、なぜ・・・」


「ふっ・・我とした事が・・予想外の動きに急所を外したか・・・」


「アースジャベリン!!」


「むっ!!」


異変を感じたユフィリアは馬車から飛び出し黒ずくめの男オーレンに魔法を放った。


オーレンは咄嗟に短剣から手を離しバックステップで逃れようとするが足元から突き出る無数の鋭く尖った岩がオーレンの頬を掠め身体を仰け反り後ろに手を付くとそのまま一回転してユフィリアの攻撃を避け着地する。


「あんた!邪魔よ!!早く中に入ってなさい!!」


「あぐっ・・・」


ユフィリアは血を流し苦しむキメルの襟首を掴むとオーレンを牽制しつつ馬車の入口まで引き摺る。


すると馬車の入口から様子を見ていたアルバンがキメルを掴み馬車の中へ引き入れる。


「ユフィリア殿!こちらは任せろ!!しっかりしろキメル!!」


「うぐっ・・・」


「えぇ。頼むわ。絶対外には出ないでよ。」


ユフィリアは馬車の中のゼノアに横目で頷くと暗殺者オーレンと対峙するのであった。

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