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第44話 護衛依頼

「ねえ。その盗賊・・・なんかきな臭く無い?」


ユフィリアは話を聴き違和感を感じていた。

脚を組み直し顎に手を添えるとアルバンを真っ直ぐ見る。


「ん?・・・と言うと?」


アルバンの眉間に皺がよる。


「そいつら本当に盗賊だったのかしら?今の話からするとアルバンさんを狙い撃ちにしたように聞こえるんだけど。」


「えっ・・・」


考えもしなかった言葉にアルバンの眉が跳ね上がる。


「おぅ・・そう言われてみれば奴等の剣技は未熟だったが盗賊の雑さは無かったな・・・」


「ふむ。確かにアルバン殿の傷は致命傷が幾つも執拗に付けられたように感じた・・・」


ゴルドとガベルも冷静に思い出し違和感を感じ始める。


「た、確かに・・・あの時・・奴等は躊躇が無かった・・・私に向けられた目は殺気に満ちていた・・・な、何故だ・・・」


アルバンも当時の恐怖を思い出し違和感を感じる。


しかしユフィリアは憶測では真相に気付いていた。ユフィリアはそれを明かさずに口元を薄らと緩ませる。


「アルバンさん。そこで提案なんだけど・・・ベルボア帝都まで私を護衛として雇わない?」


(なっ・・あの面倒くさがりのユフィリアが護衛を?!)


(・・・こ、これは・・何か企んでるな・・・)


ユフィリアの提案にゴルドとガベルの顔が曇る。


「えっ!?あっ・・・え、Sランク冒険者のユフィリア殿が・・私達の護衛を?!」


ユフィリアの申し出にアルバンは信じられないと言わんばかりに目を輝かせる。目の前に居るのは元Sランク冒険者〈鋼の意志〉のメンバーである。話の流れから不安に駆られたアルバンにはこれ程心強い申し出は無かった。


ユフィリアは神妙な面持ちでアルバンの目を見る。


「えぇ。護衛の冒険者もギルドで治療中よ。明日には動けるようにはなるかも知れないけど当てにはならないわよ。次に襲われない保証もないわ。ただ私はね、ゼノア君が必死に救った命をゼノア君の為に守りたいの。どうかしら?」


(ん?俺の思い違いか・・・ユフィリアの奴かっこいいじゃねぇーか・・・)


(ふっ・・そうだったか・・・誤解していたようだ・・・)


ユフィリアの言葉にゴルドとガベルは反省し顔を見合わせて肩をすくめる。そしてアルバンはキメルと顔を見合わせて頷くと背筋を伸ばした。


「ユフィリア殿!改めて道中の護衛を依頼しよう!よろしく頼む!!


アルバンは座ったまま頭を下げる。


「分かったわ!その依頼受けるわ。こちらこそよろしく。」


ユフィリアも組んでいた脚を下ろして軽く頭を下げる。そしてユフィリアは下げた頭の下で細く微笑むと顔を上げ言葉を続けた。


「そうだ。アルバンさん。今、思い付いたんだけど今回の事を報告するならゼノア君にも来てもらった方が報告し易いんじゃない?」


(えっ!!僕も?!)

(えっ!!ゼノア様も?!)


ゼノアとイリアが弾かれたようにユフィリアの顔を見る。そして横目に刺さるような視線を感じてチラリと見ると大きな目を輝かせもじもじしながら今にも飛びかかって来そうなイリアがいた。


そしてユフィリアがにんまり笑うとゴルドとガベルが頭を抱え心の声が揃う・・・


((前・言・撤・回!!!))


(・・・やっぱりか・・ロディアス商会の札と証書をもらった時から考えていたな・・・)


(・・・やはりこれがユフィリアだ・・・だが護衛が必要なのは確かだ・・・まあここは良しとするか・・・)


そしてユフィリアは駄目押しとばかりに目を輝かせているイリアに視線を合わせ目配せをする。するとイリアが目を輝かせながら大きく頷くと父親アルバンの膝に飛び乗り両手で両足でアルバンにしがみ付く。


「お父さん!お父さん!お父さん!良いじゃない!!良い考えよ!!ゼノア様も一緒に!!色々お話しも出来るわ!!きっと楽しいわ!!ねえ!良いでしょ?!良いでしょ?!良いでしょ?!ねっ!!お父さん!!!」


「こ、こら!イリア!はしたないぞ!女の子がそんな格好をするんじゃない!!それにゼノア君の意見も聞かないと駄目だろう!」


「はっ!わ、私ったら・・つい・・」


アルバンの言葉に我に返ったイリヤは徐に膝から降りて何事も無かったようにソファに腰掛けもじもじとしながら上目遣いでゼノアをチラチラと見る。


「あ、あの・・・ゼノア様は・・ど、どうしますか・・・?」


「・・・はは・・」


ゼノアは力無く笑うと何となく目を逸らす・・


(あーー・・・こ、これは・・・ちょっと嫌かも・・ここはお断りして・・・)


「あ、あの・・・」


「もちろんゼノア君も行くわよねぇ?」


「ええっ?!」


ゼノアの言葉を遮り皆まで言わせないとばかりにユフィリアはゼノアの頭に優しく手を置き耳元まで顔を近づける。


「ゼノア君も・・・ベルボア帝都・・・行きたいわよねぇ・・・?」


ユフィリアの顔は口元は笑っているが目は笑っていなかった・・・頭に乗せた手には心なしか魔力を纏わせていた。


(ユ、ユフィリアさん?!なんで魔力が滲んでるの?!こ、これは・・・)


ゼノアが助け船を期待してゴルドを見るが隣にいるガベルと一緒に頭を抱えて小さく首を横に振っていた・・・


(あ・・・これ、断れないやつだ・・・はぁ・・・)


ゼノアは観念して首を縦に振る。


「は、はい・・・」


(うっし!!)


ユフィリアは心の中でガッポーズを決めた。


それと同時にイリアが再びゼノアに飛び掛かり鼻息荒く少し寂しい胸にゼノアの頭を押し付ける。


「ゼノア様ぁぁぁぁ!!ゼノア様!ゼノア様!!やっぱり私と一緒がいいのですね!もうこれは結婚ですわ!!うふふっ・・・馬車の中でゼノア様と一緒・・・触れ合う手と手・・・うふふ・・・揺れる馬車の中で・・・うふふ・・揺れのせいにして・・・こんな事を・・うふふ・・・うふふ・・そして夜は・・夜は・・・あんな事や・・こんな事を・・うふふふ・・・」


(あーー・・・先が思いやられる・・・)


「こ、こら!!イリア!はしたないぞ!!何度言ったら分かるんだ!!落ち着きなさい!!それに早くその心の声をしまいなさい!!」


アルバンが再びイリアをゼノアから剥ぎ取る。ゼノアはこれから何度この場面を見るのか途方に暮れるのであった・・・

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