第38話 可能性の光
ゴルドからの合図がありゼノア達はゴルドの元へ馬車で向かっていた。ゼノアはメイドの膝の上に座り用意されたお菓子を頬張っている。密かに後頭部でメイドの大きな胸の弾力を楽しんでいるのは言うまでもない。
「ゼノア様はお強いのですね。一介のメイドごとき私を守って頂き本当にありがとうございます。」
「僕は冒険者になって困っている人を助けたいんだ!当然の事だよ!!」
メイドは自分の頬に手を添えたゼノアを思い出し心から愛おしくゼノアの身体を優しく抱き寄せる。そしてゼノアの頭はメイドの胸に埋まって行く。
(お、おっふ・・・こ、このおっぱいは凄い・・・僕はこのおっぱいに助けられたんだよね・・・このおっはが無かったら・・皆んなを守れなかったかも知れない・・・本当におっぱいは偉大だよね・・・)
ゼノアはメイドの胸に埋まり頭を撫でられながらながらうんうんと頷くのであった。
馬車が近付くと微かに女の子の声が聞こえて来る。その声は遠くからでも不幸なものであると分かった。近づくに連れてその声は大きくなり予想通り女の子の悲痛な叫びは辺り一面に響き渡っていた。
「いやぁぁぁぁぁ!!お父さんぁぁぁん!!目を開けてぇぇ!!お願い!!お願いだからぁぁぁ!!!うあぁぁぁぁぁん!!!!」
(これは・・・急がないと!!)
「お姉さん!ちょっと行ってくる!!」
「あっ!ちょっと!あぶない!!」
ゼノアは女の子の悲痛な叫びに居ても立っても居られなかった。ゼノアは走る馬車から飛び出し叫び声に向かって走った。するとゴルドとガベル、数人の男女が項垂れ一点を見つめているのが見えて来た。
「ゴルじい!!」
「おう・・・」
声を掛けられたゴルドが控えめな笑顔でゼノアを見る。
ゼノアが皆の目線の先を見ると予想通り父親であろう男の人に女の子が縋り泣き弱っていた。
「いやよ!!いや!!逝かないで!!お父さぁぁぁぁん!!あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
女の子の叫びがゼノアの心の傷に触れる。ゼノアは奥歯を噛み締め拳を握る。
「・・・駄目だよ・・・こんなの駄目だ!!絶対に駄目だ!!!助けるんだ!!ゴルじい!!」
「ゼノア!!!」
ゴルドはゼノアの頭に勢いよく手を乗せる・・・
「な、何?!」
ガベルも顔を軽く背けてゴルドが言いたい事を思う。
「・・・お前の気持ちは分かる・・・だがな・・俺達が来た時には・・・もう遅かった。死んだ奴はもう戻らねぇ・・・
ばしっ!!
「なっ?!」
ゼノアはゴルドの手を払い退けてゴルドを見据える。ゴルドは驚いたが真っ直ぐ見つめるゼノアの目の奥に可能性という名の光を見た。
「ゼ、ゼノア・・お、お前・・まさか・・・」
ゼノアは頷く。
「馬車の中でゴルじいが僕に言ったよね。”何か隠しているんだろう”って。今、答えを見せてあげるよ!・・・でも今の僕じゃ足りないんだ!!だから手を貸して!!ゴルじい!ガベルさん!!そしてここにいる皆んな!!闘気と魔力を僕に!!今ならまだ間に合う!!
あの子のお父さんを助けるんだ!!!」
ゼノアの言葉を他の大人達が訳も分からず力無く頭を横に振る。しかしゼノアに可能性を見たゴルドはわなわなと打ち震えいた。
「よぉし!分かったぁぁぁぁ!!!ゼノアぁぁぁ!!もう何にも言わねぇ!!お前に任せたぞ!!ガベル!!お前等ぁぁぁ!!聞いただろう!!!闘気と魔力を俺の孫に集めろ!!つべこべ言ってる暇はねぇ!!出来ねぇ奴はあの子の面倒を見てやれ!!さっさと始めるぞ!!!」
ゴルドの怒号にも似た声が響き渡る!!するとガベルが頬を引き攣らせながらゴルドを見る。
「ま、待て。ゴ、ゴルド・・ゼ、ゼノア君は何をしようとしているんだ?ま、まさか・・だよな?まさか・・・」
「あぁ!!そのまさかだ!!ゼノアがやるって言うんだ!!何かとんでもない事を仕出かすんだろうぜ!!ガベル!お前もつべこべ言わずに闘気を搾り出せ!!」
「・・・な、なんて事だ・・・」
泣き弱っていた女の子もゴルドの怒号に驚き涙でくしゃくしゃな顔を上げるとそこには自分よりか歳下と分かる男の子が力強く立っていた。
「な・・何?!何をするの・・・」
ゼノアは動揺し混乱する女の子に優しく手を差し伸べる。
「大丈夫。お父さんを助けるんだ!君も協力して欲しい。」
「えっ!お父さんを助ける?!」
「そうだよ。でも時間が無い!だからお父さんの名前を教えて!」
「えっ・・あっ・・アルバン・ロディアス・・・よ。」
「分かった・・ありがとう。お父さんは必ず助ける!だからもう泣かないで。」
ゼノアは女の子の頬に手を添えて優しく微笑んだ。すると女の子の頬が赤く染まる。眩しくひかるゼノアの笑顔に高鳴る胸を押さえてただ黙って頷いた。
ゼノアが立ち上がるとゼノアの後ろにはゴルドとガベルしか居なかった。他の者達は訳が分からず疑心暗鬼になり周りで傍観していた。
ゼノアの表情が曇る。
(・・・そうか・・皆んな怖いんだね・・・でもやるしかない・・ゆっくりレベルを上げたかったけど・・・ステータス・・)
ゼノアはステータスを開くとスキル欄から〈魔力強化〉を選びスキルポイントを全て注ぎ込んだ。
〈魔力強化9〉になりました。
頭の中にアルフェリアの声が響いた。
「これでよし・・・ゴルじい!ガベルさん!!行くよ!!闘気解放!!」
「おう!!いくぜぇぇ!!気合い入れろぉぉぉ!!闘気解放ぉぉぉぉ!!」
「お手柔らかに頼むよ。闘気解放!!」
ずぼぉぉぉぉぉぉぉ!!
ゼノアの真紅の闘気が爆発的に立ち昇る!
そしてゴルドとガベルは蒼い闘気を纏いゼノアの肩を掴みゼノアに闘気を送り込む!ゼノアの闘気がゴルドとガベルの闘気を取り込むと更に勢いを増して行く!
(・・・あんな子供が・・レ、レッドオーラ・・・だと・・信じられん・・)
馬車の操馬席から監視役の男が唖然として見下ろしていた。
(よし・・・〈魔力創造〉!!闘気から魔力を創造する!!)
ゼノアは魔人マグリアル戦で魔力を闘気に創造した。そこで闘気を魔力に創造する事を思いついたのだった。そしてその考えは正しかった。ゼノアは闘気を魔力に変換する事で膨大な魔力を得てこの世界の人間では到達出来ない領域の魔法を使えるようになっていた。しかし・・・当の本人はそれに気付いていなかった・・・。
ゼノアから激しく立ち昇る膨大な闘気が蒼白く輝く魔力に創造されゼノアの中に取り込まれて行く。その魔力は闘気とはうって変わり優しくゼノアを包んでいた。
「い、一体・・何を・・・助ける・・まさか・・・そんな馬鹿な事・・・」
「な、なんて神々しい姿なんだ・・・」
「ま、まさか・・本当に・・・死んだ者を助ける・・・?!」
周りで傍観している者達もゼノア達が何をしようとしているのか気付き始めるのであった。
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