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第33話 ゼノアの一撃

ゼノア達は近衛騎士団専用の訓練場に通される。中では男達が熱の入った模擬戦を繰り広げていた。


(うわぁ・・・凄い熱気だ・・・)


「皆集まってくれ!!陛下もご一緒だ!!」


ベリオールが声を上げると男達が無駄な動きもなく集まる。そして訓練場の2階にある特別席に座るセルバイヤ王に向かい跪く。


「皆ご苦労。楽にせよ。」


「はっ!」


男達はキレ良く立ち上がると腕を後ろで組み横一列に並ぶ。そして副団長ラースが一歩前に出た。


「団長!今日は何事ですか?あの者達は何者ですか?」


「ラース。お前も聞いただろう?ゲイブルの町のスタンピードの話を。」


「はい。レイドルが話していたゼノアって子供の話ですよね?まあ、俄には信じられませんが。」


「そのゼノア君があの子だ。陛下がゼノア君の力を見たいそうだ。そこで陛下の命令で私がゼノア君と模擬戦をする事になったんだ。」


ベリオールがゴルドに肩車をされているゼノアを紹介するべく手をかざすと厳つい男達の視線がゼノアに集まる。


(あうぅ・・・し、視線が痛いよ・・・)


「ど、どうも・・・ゼノアと言います。よろしくお願いしゅ・・・」


(あっ・・・噛んだ・・・)


「・・ぷっ・・くくっ・・」

「・・ぷぷっ・・・」

「ぶはぁぁぁ!!あーっはっはっはっ!!」

「勘弁してくださいよぉぉ!!あんな子供にレイドルは負けたんですかい?!」

「ひぃーーひぃーーっ!団長ぉぉ!!笑い死にさせる気ですか?!」


男達が列を乱しゼノアを指差して笑い転げる。ベリオールが男達を制しようと声を上げようとした・・・


「お前たt・・・」


「ごおぉぉぉらぁぁぁぁ!!!俺のゼノアを笑った奴!!!前に出ろやぁぁぁぁ!!!」


ベリオールの声を打ち消し訓練場の壁が震えるほどのゴルドの怒気が男達の笑い声を吹き飛ばした。そしてゼノアを肩車したまま男達へと真っ直ぐ怒りの形相で向かって行く。


(あぁ・・また始まった・・・)


「し、師匠・・・お、落ち着いて・・・」


「てめぇはすっこんでろ!!」


「あうっ・・・」


ゴルドの性格を知っているベリオールはゴルドの前に立がゴルドの迫力に負けて道を開けてしまう。


「ガ、ガベル殿!!何とかしてください!!」


ベリオールがガベルに救いを求めるがガベルはゆっくり首を横に振る。


「ふっ・・ああなったらもう誰にも止められない。君も分かっているだろう?」


男達は真っ直ぐ向かってくるゴルドの迫力に身体が動けないでいた。


「し、師匠?!団長の師匠って・・・まさか・・」


「は、鋼のゴルド・・・」


「あ、あのゼルガリアの守護者・・・〈鋼の意志〉のリーダー・・鋼のゴルドか・・・」


ゴルドがづかづかと近付きラースの目と鼻の先まで来ると鼻息がかかる程まで迫る!


「はうっ・・・」


「おいテメェ・・・いい度胸してるな・・・ふん!いいだろう・・・貴様等が笑ったゼノアの力を体験させてやる・・・貸せ!」


ゴルドはラースから木剣を引ったくるとゼノアを肩から下ろしゼノアの背丈までしゃがみ小声で話す。


(いいかゼノア。ベリオールの前にこいつらで肩慣らしだ。だがななるべく〈闘気〉は使うなよ。クロードの奴が気を利かせてお前の闘気の事は伏せてある。お前の身体能力なら余裕だ。お前を笑った馬鹿共を軽く揉んでやれ!!)


「はぁ・・・揉むのは肩じゃないんだよね・・・」


「あぁ、そうだ。これで揉んでやれ!!」


ゴルドは面倒臭そうな顔をするゼノアにラースから引ったくった木剣を握らすのであった。



「陛下。よろしいのですか?」


2階から事の成り行きを見ていたマリス宰相がセルバイヤ王に声を掛ける。


「ふむ。良い。団員等もベリオールには届かないとは言え近衛兵団は選りすぐりの優秀な人材の集まりだ。ゼノアの力を測るのにはうってつけだろう。」


「はい。仰せのままに。」




ラース・シルバート

Lv 45

称号 剣闘士

力   355

体力  289

素早さ 106

魔力  54


【固有スキル】〈上剣技2〉〈強撃2〉〈闘気1〉


(剣闘士・・・確かにレイドルさんやアルセル王子よりも強いね・・・他の人達も似たようなステータスだ・・・」


ゼノアが近衛兵団の鑑定していると横から団員の赤毛の若い男が声を上げる。


「団長!!俺にやらせてくれ!!子供相手に皆は気が引けるだろう?だから新入りの俺がまず相手をしてやるよ!!」


男はニヤニヤとゼノアを見下ろしていた。


「マルクスか。いいだろう。用意してくれ。」


「ほい来た!!」


マルクスはベリオールの許可を得ると木剣を肩に担ぎながら舞台の開始線に立ち呆れ顔でゼノアに手招きする。


「ゼノア君だったっけ?早く来なよ!近衛兵団の凄さを教えてあげるからさ!」


ゼノアはニヤつくマルクスを見据える。


(・・・確かに・・こんな子供が相手だから分かるけどさ・・・あからさまにあの態度はね・・・ムカつくよね・・・)


ゼノアの目尻が引き攣るのをゴルドは見逃さなかった。


(馬鹿な奴だ・・あいつ・・療養所送り第一号だな・・・)



ゼノアが開始線に立つとマルクスはニヤつきながら木剣をゼノアに向ける。


「君に最初の三手あげるよ。いきなり終わったら可哀想だからね。ほら?いつでもいいよ?打っておいでよ!」


マルクスはゼノアに向けた木剣をゆらゆらと揺らして挑発する・・・


(ふーーん・・・じゃあお言葉に甘えて・・)


「・・行くよ・・」


ゼノアは一瞬身を屈めると舞台を蹴り弾丸のように飛び出す!!


だぁぁん!!!


「うえっ?!」


「まず一手!!」


驚くマルクスを他所に懐に飛び込んだゼノアは勢いそのままにマルクスの胴に平行に木剣を打ち込む!


ずどぉぉぉぉぉぁ!!!


「ぶべぇぇぇぇ!!!」


ゼノアの木剣はマルクスの身体に深々とめり込みそのまま振り切った。


「ふっ・・・馬鹿が・・・」


ガベルが哀れんで首を横に振った瞬間マルクスは呆けた声を残こし身体をくの字に曲げてガベルの横を通り過ぎて行った・・・


どがぁぁぁぁん!!


マルクスは勢いそのままに木剣置き場に激突し木剣を撒き散らして気を失った・・・それを目撃したセルバイヤ王を始め近衛兵団の面々は口をあんぐりと開けて生唾を飲み込んだ・・・


「ふん!一手で終わったね。」


ゼノアは鼻息で笑うと開始線までトコトコと戻って行く。



セルバイヤ王は思わず2階の窓から身を乗り出した。


「・・・な、なんと・・・あ、あれがゼノアの力か・・・い、いや、まだまだ本気ではあるまい・・・むう・・あ、あれが5歳の子供の力か・・・ふふ・・面白い・・・」



「お、おい・・・い、今、何が起こったんだ?」


「わ、分からん・・・気付いたらマルクスが消えていたんだ・・・」


団員達が動揺する中団長ベリオールも内心、

驚愕していた。


(な、何なんだ・・あ、あの踏み込みの速さと木剣で大人を吹き飛ばすあの怪力・・・あ、あれで5歳?!ど、どうなっているんだ?!)


「ふん・・これで分かったか?馬鹿共!さあ!次は誰だ?!何なら全員でもいいぞ?!」


ゴルドが団員達に詰め寄ると我に返った団員達が明らかに目を逸らす・・・しかしゴルドは逃がさないとばかりにゼノアを笑った団員と強引に肩を組み団員の顔を覗き込む。


「なあ?お前、俺のゼノアに笑い死にするとか言ってなかったかぁ?おおう?んんー?」


「あ、あの・・その・・・あ、あれは・・じょ、冗談と言うか・・・な、何と言うか・・・」


「あぁ?!テメェ!!俺のゼノアを冗談で小馬鹿にして笑ったってのかぁ?!あぁん?!よし!テメェもゼノアに揉んでもらえやぁぁ!!」


「あっ・・いや・・その・・」


ゴルドが男の襟首を掴んで引き摺って行く。

すると慌ててベリオールがゴルドの前に出る。


「し、師匠!!ま、待ってください!!ゼノア君の実力は分かりました!ゼノア君を笑った事は近衛兵団団長として私が謝ります!!実の所・・私も半信半疑だったのです。この通りです!!」


ベリオールが深々と頭を下げると団員達も慌てて一列に並び頭を下げる。引き摺られていた団員もそのままで声を上げる。


「「「申し訳ありませんでした!!!」」」


ゴルドは頭を下げる団員達を眺めると怒りが冷めて少しだけ大人気なかったと頭を掻きながら反省する。


「ふ、ふん・・まあ・・分かればいい。で、ベリオール。今のでゼノアの実力が分かったんなら模擬戦はどうするんだ?」


ベリオールはゴルドの言葉に笑みを浮かべながら顔を上げる。


「ふふ。模擬戦を仰せつかったのはこの私です。もちろん任務は果たします。久しぶりに楽しい模擬戦になりそうです。」


「ふっ。さすが団長と言われるだけはあるって事か・・・」


ベリオールはゼノアの力を見て萎縮するどころか計り知れない力を前に心が躍っていた。まるで初めての舞台に赴くようにベリオールは少し緊張しながら開始線に立つのであった。


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