第3話 至福の時
メギルは麻袋の中で周りが見えずにニ時間近く馬車に揺られていた。
そして下半身から温かい物が溢れ出していた。
(くそっ・・・我慢出来なかった・・幼児の身体だから仕方ないけど・・・どこまで行く気だ・・・身体は痛いし、寒いし、お腹空いたし、臭いし、おむつの中が気持ち悪くなってきた・・それにさっきから身体が怠い・・・身体の底から震えが来る・・・熱でもあるのか・・ほ、本当に泣きたくなって来た・・・)
馬車は王都から西に約50km程に位置するゲイブルの町の中へ消えて行く。
ゲイブルの町は人口1200人程の港街である。
治安も良く領主のガベル・セルバン子爵は街の人達にも評判が良く悪く言う者は居なかった。
「どう!どう!!」
がががっ!!
馬車は町のはずれに建てられた木造二階建ての長屋の前で止まった。
(くっ・・馬車が止まった・・・着いたのか・・)
すると突然馬車が止まり外から足音が近づいて来るのが聞こえる。
そして馬車の扉が開く音がすると麻袋が持ち上げられ床の硬さから解放された。
(いつつつ・・・)
「コレだ。いつも通り世話をしろ!名前はゼノアだ!」
「はい。かしこまりました。」
男は赤毛のメイドらしき女に麻袋を突き出して渡すとそのまま馬車で元来た道を戻って行った。
(・・・と、取り敢えず殺される事は無さそうだな・・・ん?ゼノア?もしかして俺の名前か?・・・まあいい・・・あいつの付けた名前よりましだ。)
ゼノアを受け取ったメイドのミリアは麻袋を地面に置いて袋の口を大きく開けるとそのまま両手をゼノアの脇に入れて取り出し顔を覗き込む。
「あら・・まあまあ可愛いじゃない・・・って・・臭っ!・・あーあ・・全部漏らしてるわね・・・」
ミリアは顔を顰めて顔を背ける。しかしゼノアも負けじと手足をバタつかせながら表情をムッとさせる。
(はいはい。すいませんね!さっきまでの寒さも痛さも怠さも慣れたけどオムツの中は慣れないんだよね・・早くなんとかしてくれないかな?!俺も気持ち悪いんでね!)
「あら・・この子一丁前に文句でも言いたそうね・・・それにしてもこの子泣かないわね・・・普通なら麻袋に入れられて馬車に揺られてお漏らししてたら泣きじゃくってもおかしくないのに・・・まぁ・・うるさいよりはマシだけどね・・・」
ミリアはよいしょと小脇にゼノアを抱えると麻袋を片手に長屋へと歩いて行った。
(それにしても一体ここは何をする所なんだろう・・奴隷商の類か・・・?)
建物に入るとミリアはゼノアを抱えたまま目の前の廊下を横切り正面の大きな引き戸を開た。部屋の中からは良い匂いが漂い長机と椅子が並べられ食堂のようだった。
するとミリアが入って来たのに気付いて小柄で黒髪の女性が机を拭いている手を止めて深々とお辞儀をする。
「ミリアさん。お帰りなさいませ。」
ミリアは女性に歩み寄ると麻袋とゼノアを両手で突き出す。
「シーラ。この子が例の新入りのゼノアよ。今日からあなたが教育係よ。お漏らししてるから取り敢えずお風呂に入れてオムツを替えてあげて。それじゃあ頼んだわよ!」
「はい。かしこまりました。」
シーラは頭を下げるとゼノアと麻袋を受け取りそそくさと広間を出て行った。
お風呂場は火を落として間も無いのか湯気が立ち昇り冷えた身体には心地よかった。
(あぁ・・暖かい・・生き返る・・)
シーラはタオルを折り畳みゼノアの頭の下に敷くと湯船の横の板張りに寝かせた。
「あらあら・・・気持ち悪かったでちゅね!今綺麗にしまちゅからねぇ・・・」
(あう・・何か・・この体制は・・何か恥ずかしい・・・)
シーラは湯船からお湯を汲んで下半身を重点にゆっくりとお湯をかけてくれる。
ざざぁぁぁ・・・
(おっふ・・・はぁぁぁ・・あったかい・・)
寒さで強張った身体が緩んでいく。冷えた身体の先端まで痺れるように温まっていった。目覚めてからろくな事が無かった一日でやっと気が抜けた瞬間であった。そしてお湯の温かさに身を委ねて全身の力を抜いた・・・
(ふぅぅぅぅ・・・・)
しゃぁぁぁぁぁ・・・・
びしゃびしゃびしゃ・・・
「あうっ?!この子ったら!!!」
全身の力を抜いた瞬間、ゼノアの股間から黄金色の噴水が立ち昇りシーラの顔面を捉えた・・・
(あうぅぅっ!!こ、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!自分ではもう止められないんですぅぅぅぅ!!あうわぁぁぁ・・・)
出続けるゼノアの洗礼を顔面で受けたシーラはジト目でゼノアを見ると口元を緩ます。
「もう・・・仕方ないわね。・・・そうね、私もお風呂まだだったからついでに入ろうかな。・・・ちょっと待っててね。」
シーラはそう言うと脱衣所に消えて行った。
(ん?お風呂に入る?・・・一緒に?!)
すると脱衣所の扉が開いてシーラの声がする。
「はい。お待たせ!」
ゼノアが声のする方に目をやると、そこには湯気の中から一糸纏わぬ姿にタオルを一枚持って入って来たシーラの姿があった。そして小柄な身体にはにつかわない凶悪な二つの膨らみを揺らしながらシーラが近付いて来た。
(おっふぅぅぅ!!!お、お、おっぱい・・・が・・・おっぱいが・・・歩いて・・)
「はい。キレイキレイしましょうねーー」
シーラは固まるゼノアを抱き抱えてゼノアの顔を胸に収めると背中にお湯をかけ始めた。
(おぶっ・・・むぶっ・・や、柔らかい・・けど・・く、苦しい・・・だけど・・・なんか良い・・あうぅぅ・・気持ちいい・・・)
そしてゼノアはシーラの胸の中で成すがままに洗われ至福の時間を過ごすのであった。
「ほーら!キレイになったでちゅねぇ〜」
ゼノアは緩み切った顔でシーラに抱き抱えられてお風呂から出てきた。
(はふぅぅぅ・・・気持ち良かった・・・色んな意味で・・・で、でも・・・お腹空いたな・・・)
ぐぅぅぅぅ〜〜・・・
そう思った瞬間ゼノアの意志を伝えるようにお腹から催促の音が鳴り出した。
「あら。お腹空いてるのね?・・じゃあ食堂に行きまちゅねぇ〜〜」
(しょ、食堂?!やった!!)
シーラは足速に食堂へ行くとゼノアを子供用の椅子に座らせた。そして厨房で野菜スープの残りを器に入れて具材を潰し始めた。
(・・いい匂いがする・・・早く・・・)
ゼノアはソワソワしながらシーラの作業を凝視していた。
「うん。これで良いわ。」
シーラは離乳食のようにしたスープをスプーンに乗せて目を輝かせて待っているゼノアの口元に持って行く。するとゼノアは待ってましたと言わんばかりにスプーンごとかぶりついた!
「がぶっ!!!うん・・うん・・うん・・」
(う、うまい、うまい、うまい・・・)
まるでスプーンごと食べる勢いで必死にスープを食べる姿を見てシーラは自分がここへ来た時の事を思い出して目頭に熱いものが込み上げて来た。
「・・・こんなにもお腹を空かせて・・・大丈夫よ・・誰も取らないわ・・まだあるからね・・・」
シーラはゼノアが空になったスプーンを口から出す度に何度もスープをすくいゼノアの口に運んでやった。
「げふっ・・・」
(食ったぁぁ・・・ふぅぅぅ・・・)
ゼノアはパンパンになったお腹を摩りながら背もたれに身を任せた。
(あぁ・・・今日は災難だった・・・だけど・・もういいよな・・・)
「うん?もうお腹いっぱいになったの?良かったわ。じゃあ今日はもう遅いから寝ましょうね。」
「すーーすー・・・」
シーラが厨房に食器を片付けて戻って来るとゼノアは座ったまま寝息を立てていた・・・
「ふふっ・・・今日は大変な一日だったんでしょうね・・・もう大丈夫よ。さあ、お部屋に行きましょうね。」
シーラは微笑みながら寝息を立てるゼノアをそっと抱き抱え部屋へ向かうのだった。
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