第29話 模擬戦 2
(あー良かった・・・話が纏まったみたいだね。ふふ・・あの人のスキルも気になってだんだよね・・・)
アルセル・セルバイヤ
Lv 21
称号 剣豪
力 220
体力 207
素早さ 103
魔力 28
【固有スキル】〈豪剣技1〉〈威圧1〉〈加速1〉
〈豪剣技〉上級スキル。達人の域まで達した剣技。
〈威圧〉相手を萎縮させ動きを封じる。効果はスキルレベルにより変わる。
〈加速〉瞬間的に素早さが上がる。スキルレベルにより効果は変わる。
ゴルド達が話す中恐る恐るアメリがユフィリアの服の裾を引っ張る。
「ん?何?アメリ。」
「・・お、お母様・・何故ゼノア君は相手の攻撃をわざわざ受けるの?ゼノア君なら受ける前に勝てるはずよ・・・」
「・・えぇ・・普通はそうね。あぁ・・貴女には言ってなかったわね・・・」
ユフィリアはクロード達に聞こえないようにアメリの耳元でそっと囁いた・・・
(・・・・・・・・)
徐々にアメリ黒目が大きくなって行く・・・
「う、うえぇぇぇ!!う、受けたスキルを・・もがもがもが・・・」
ユフィリアが咄嗟にアメリの口を塞ぐ・・・
「こ、こら!!声が大きい!!」
(あいつ等に聞こえたらどうするの?!)
(そ、そんなスキル・・・規格外過ぎるわよ・・・これからゼノア君は・・幾つのスキルを身に付ける事になるの・・・)
アメリはゼノアを遠い目で眺める。そしてクロードの方をチラリと見ると何事かとこちらを見ていたクロードと目が合いぎこちなく目を逸らした。
(むっ?何を騒いでいる・・・い、今・・何と言った・・・受けた・・スキル・・?何の事だ・・・?)
クロードは首を傾げるがこの時は何の事か分からなかった。それよりもアルセル王子の動向が気になり考えるのを後回しにした。
(・・・〈威圧〉に〈加速〉・・・それに〈剣豪技〉・・・どれも使えるスキルだね・・ふふっ・・ふふふ・・・)
ゼノアは自信ありげに目の前に進み出るアルセル王子のスキルを不敵な笑いで眺る。そして知らぬ間に子供らしからぬオーラが漏れ出していた・・・
アルセル王子がレイドルが落とした木剣を拾うとゼノアを見据えて中段に構えた。するとアルセル王子の目付きが変わる。構えもしないゼノアの立ち姿に全く隙がないのだ。その上ゼノアから格上の剣士が放つような気迫を感じていた。
(くっ・・な、なるほど・・・相対すると分かる・・・や、やるな・・・ならば・・)
アルセル王子の頬に冷たい物が伝う。
(・・・ふん!その頑丈さなら死にはしないだろう・・・俺の〈豪剣技〉・・受けれるものなら受けてみろ!)
アルセル王子には必勝パターンがある。〈威圧〉で動きを止め〈加速〉で一気に仕留めるのである。アルセル王子はクロードの開始の合図も待たずにゼノアに〈威圧〉を放つ!
(喰らえっ!)
「なっ?!ア、アルセル王子!まだ開始の合図が!!」
クロードが気付き声を上げるがアルセル王子が放った〈威圧〉はゼノアの頬を撫でて何事も無かったように過ぎ去った・・
(ん?・・・今、何かしたのかな・・・?)
クロードは平然としているゼノアに言葉を失う。
(い、今・・アルセル王子が〈威圧〉を放ったはず・・・な、何故・・平然としているんだ・・・あの少年・・何かがおかしい・・)
ゼノアはステータスを出して虚空を見る。
(・・えっと・・・あっ!〈威圧〉だ!・・・ん?でも今のが〈威圧〉?何とも無いよね・・・スキルも失敗する事があるのかなぁ・・・?)
アルセル王子の〈威圧〉は失敗したのではなくゼノアの膨大な闘気と魔力により効果が打ち消されたのであった。
虚空を見つめ考え込んでいるゼノアを見てアルセル王子は動きが止まったと勘違いして間髪入れずに行動に出る!
「隙ありだ!!〈加速〉!!」
そしてアルセル王子が大地を蹴ると一瞬でゼノアの目の前に迫る!
(あれ?まだ開始の合図が・・・まあ、いいか・・・)
ゼノアはアルセル王子が繰り出した全力の突きを余裕の表情で目で追う。そして迫り来る木剣の先端がゼノアの鳩尾を捉えた!するとアルセル王子のスピードに置き去りにされた風が風圧となって吹き荒れる!
ずどぉぉぉぉっ!!!
しかしアルセル王子の腕に痛みが走り表情が曇る。
(ぬぐっ・・・な、何だ!この分厚い岩を突いたような手応えは・・・う、腕が・・痺れる・・)
「ひゅぅ・・・あいつ・・あの歳で中々やるじゃねぇーか!・・・ふっ・・だが、相手が悪かったな・・」
ゴルドは肩をすくめて微動だにしないゼノアを眺めていた。
アルセル王子がゼノアの反応を見ようと顔を上げるとギョッとする。ゼノアは何事も無かったように虚空を見上げて微笑んでいたのだ。
(ふふっ・・頂きました!〈豪剣技〉と〈加速〉!さて・・後は・・・)
「な、何ぃぃぃっ!!ア、アルセル王子の突きを受けて・・無傷?!」
クロードが思わず声を上げる。アルセル王子の〈豪剣技〉から繰り出す突きは城の練習場の的を貫き外壁まで貫く威力があるのだ。それを知っているクロードの背筋に嫌な汗が流れる・・・
(・・こ、この勝負・・・無事に終わるのか・・・?)
アルセル王子は後ずさる・・・自分の全力を5歳の子供に難なく受け止められたのだ。自分の中の自信と誇りが崩れ去ろうとしていた。
「・・ば、馬鹿な・・・お、俺の全力の突きを喰らって・・む、無傷だと・・・そ、そんな・・・?!」
「んっ!・・・あぁ・・さっきのおじさんよりかは強かったよ!」
ゼノアは驚愕の表情を浮かべるアルセル王子を気遣うように軽く首を傾げて微笑む。するとアルセル王子の頬が引き攣り痙攣する。
「な、な、何だと・・こ、このガキが・・・が、頑丈だけが取り柄の癖に・・・くっ!くくっ・・い、良いだろう!今度はおれが貴様の全力の攻撃を受けてやる!!来やがれ!!」
「「「「えっ?!」」」」
その瞬間、野次馬達がざわつき出す・・・
「お、おいおい・・・何を馬鹿な事言ってやがる・・・」
「ゼ、ゼノアの全力を・・受ける?!し、死にたいのか?!あいつ・・・」
「そ、それより・・せっかく外壁修理したんだそ?!勘弁してくれよ・・・」
(ど、どうしよう・・・全力はいくら何でも・・・まずいような・・・)
ゼノアも野次馬達の声を聞いてどうして良いか分からず恐る恐るゴルドの方を見た。するとシンクロするようにゴルド、ガベル、ユフィリアが”見せてやれ”と言わんばかりに腕を組んだまま親指を立てて悪い顔で頷く。
(えぇーーーー!!いいのぉぉぉぉ!!!ま、まぁ・・し、仕方ないよね・・・この模擬戦は僕の力を試す場だしね・・・)
ゼノアが悪い顔でゴルド達に頷くとゴルドが勢いよく立ち上がり声を上げる!!
「おい!お前等ぁぁぁ!!今からゼノアが本気を出すぞ!!死にたい奴はそこに居ろぉぉぉぉ!!!」
「うえぇぇぇ!!マジかっ!!や、やべぇぇぇ!!逃げろ!!」
「ちょっ、ちょっと待てっくれぇぇ!!」
ゴルドの声にアルセル王子の背後に陣取っていた男達が一目散に逃げ出し物陰に隠れる。
(な、何だ?!何が始まるんだ?!)
アルセル王子は自分の周りから避難するように野次馬が居なくなり動揺しながら辺りをキョロキョロと見渡す・・・すると極太の声が辺りに響いた・・・
「よぉーーし!!ゼノア!!お前の実力を見せてやれぇぇ!!俺達を嘘つき呼ばわりした事を後悔させてやれぇぇぇ!!!」
声を上げるゴルドの後ろでガベルとユフィリアが”うんうん“と頷いている。
(あぁ・・ゴルじい達・・・相当頭に来てるみたいだね・・・それじゃあ・・・全力で・・・)
ゼノアは対峙するアルセル王子を見据えて一礼する。
「解りました。今から僕は貴方に全力で攻撃します。どうか・・・お願いします・・死なないでくださいね・・・」
「・・・はっ?」
アルセル王子がゼノアの言葉の意味を理解出来ずに呆けた声を上げたその時・・・途轍もない重圧がアルセル王子にのし掛かる!!
「ぐはぁぁぁ!!!」
ゼノアはアルセル王子から覚えた〈威圧〉を放つ!更にクロードから覚えた〈身体強化〉を発動するとゼノアの全身が白く輝き出した!
(な、何ぃぃぃ!!!あ、あれは〈威圧〉?!そ、それに〈身体強化〉か?!ま、待て!一体幾つのスキルを持っているんだ?!・・ん?・・ちょっと待て・・・このスキルは私達が持っているスキルばかりだ・・・ま、まさか・・・あの少年のスキルは・・・)
思わずクロードが肩を震わせながらゼノアを凝視する!
「まだだよ!!うりぁ!〈闘気〉解放!!」
ずおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
全力で解放された真紅の〈闘気〉がゼノアの全身から立ち昇る。真紅の〈闘気〉はゼノアの周りの景色が歪んで見える程濃密なオーラを放っていた。
「な、な、何だと・・・レッドオーラだとぉぉ!?あ、あ、あんなガキが?!あんなガキが・・・う、うぐ・・・」
ゼノアの〈威圧〉で膝を付いているアルセル王子が顔を顰める。
(な、な、何なんだ・・・あの少年は・・・あの歳で・・・レッドオーラとは・・・はっ!!こ、これはまずい!!アルセル王子が!!も、模擬戦を止めなければ・・・うくっ・・)
クロードがアルセル王子の身を案じて声を上げようとしたその瞬間!クロードの背筋に激しい悪寒が走る!広場の空気が濃密な魔力の収束により震える!そしてゼノアを中心に吹き荒れる魔力風にクロードが身体を低くして踏ん張る。
「な、な、何だ・・・こ、この膨大な魔力は・・・あ、あの少年は一体・・な、何者なんだ・・・」
そんなクロードの思いを他所にゼノアは更なる段階に踏み込む!
(行くよ!!〈魔力創造〉!僕の魔力を闘気に変換!!)
ゼノアが自分の魔力を闘気に変換するとゼノアを中心に爆発的に黄金の光の柱が雲を突き抜ける!!
ずぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
「・・・あ・・あ・・あれは・・・き、金色の・・オーラだと・・・」
アルセル王子は〈威圧〉から解放されたがゼノアから放たれる闘気に身体が震えて動けずにいた。
「・・・あ、あ、あれは・・・ま、まさか・・伝説の・・・〈英雄闘気〉・・・な、なんて事だ・・・伝説の闘気が目の前に・・・」
クロードは両膝を地面に付きゼノアの闘気をひしひしと受けて驚きに肩を震わせていた・・・
「ゼ、ゼノア君・・・す、凄い・・・」
アメリは物陰に隠れて頭だけ出しゼノアを見つめていた。
「うほーーっ!!改めて見ると凄えな!!ここまでビシビシ闘気が伝わって来るぜ!それに見ろよ!あいつ等の顔!ザマァ見ろってんだ!」
「ふっ。これで分かっただろうな。で、あのアルセル王子・・・どうするつもりだ?確実に・・死ぬぞ?」
「えぇ。そうね!でも散々暴言を浴びせてくれたからね。あの王子にはいい薬よ!それに
なるようになるわよ。」
ゴルド達は止める事なく事の成り行きを眺める事に決めた。
ゼノアは体勢を低く落とすと突きの体勢でアルセル王子に狙いを定める・・・
「さて・・僕の全力の攻撃を受けるんでしたよね?・・・さあ!行きますよ!」
「・・・えっ・・えっ・・・あっ・・あ、あの・・・そ、そ、その・・・や、や、やめ・・・やめ・・て・・お、おね・・おね・・が・・・い・・」
アルセル王子はゼノアから放たれる膨大な黄金の闘気を間近で浴びながら目を見開いたまま膝が激しく笑っていた。構えた木剣も先端の残像が見えるほど震え声もまともに出せないでいた・・・
「そ、そ、そこまでだぁぁぁ!!!も、もう分かった!!分かったぁぁ!!疑って済まなかった!!も、もう勘弁してくれぇぇ!!」
たまらずクロードが覚悟を決めて両手を広げてゼノアの前に飛び出した!ゼノアは構えをそのままにゴルドの方を見るとゴルド達は呆れ顔で“許してやれ“と言わんばかりに軽く頷いた。
「ふーん・・・分かった!所で・・・模擬戦は僕の勝ち?」
ゼノアは〈闘気〉を収めて軽く首を傾げるとクロードが全力で首を縦に振る!
「ふん!ふん!ふん!も、もちろん!き、君の勝ちだ!アルセル王子もそれで・・・あっ・・・」
どざぁぁ・・・
クロードが振り返るとアルセル王子が白目を剥き糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた・・・
「クロードか・・薄々だが気付いたようだな・・・少し話をする必要があるようだな・・」
ガベルの言葉にゴルドとユフィリアも頷くのであった。
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