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第2話 目覚めたけど・・

ここは大陸最北端に位置する険しい山と海に接するセルバイヤ王国である。

一年を通して気温は低くく雪に覆われて農作物が育ちにくい為に殆どが他国からの輸入に頼っている。その代わり魚介類が豊富に捕れるのでセルバイヤ王国の特産物となっている。他国からは新鮮な魚介類を求めて訪れる者も少なくないのである。




ここはとある貴族の屋敷の一室。

鑑定士から1歳になる息子の鑑定結果を聞いて父親と母親が顔を歪めていた。


メギル・ライナード

Lv 1

称号

力   1

体力  3

素早さ 1

魔力  1


【固有スキル】


「伯爵様・・何度見ても変わりません。何と言いますか・・私もこのようなステータスは初めて見ます・・・」


ミルトンは同情し言葉選びに困る鑑定士に詰め寄りお互いの鼻が当たらんばかりに顔を寄せる。そして鑑定士の目を威嚇するかのように睨み付けると手を掴かみ金貨を数枚握らせた。


「お前は今日ここに来なかった。誰も鑑定していない。そうだな?!」


「えっ・・・?あ・・・は、はい・・そ、その通り・・・です・・」


「よし・・・だが・・もしもこの事が噂になって俺の耳に入ったら・・・分かっているな?」


「は、は、はい!も、もちろん・・・」


鑑定士はミルトンの言いたい事を察してカクカクと首を縦に振る。


ミルトンは鑑定士の返事を聞くと目を細めて静かに扉に向かって指を差す。すると鑑定士はそそくさと部屋を出て行った。



「くそっ!!それにしてもなんだこの最低な能力値は・・・称号すらないぞ?!それに固有スキルが無いだと?!そんな人間聞いた事がないぞ!!・・・こいつは我がライナード家の恥だ!」


「本当ね・・・とんだ失敗作だわ!メビルが優秀だったらか期待したけど駄目だわ・・・どの道こんな能力では生きて行けないわ!」


両親は顔を見合わせ子の親とは思えない結論を出した。


(いいか?メイナ。こいつは死んだ事にするんだ。例の施設に売り飛ばせば幾らか金にはなる。直ぐにでも話を付けて来る。)


(えぇ、分かったわ。確かにコレはお金にするしか方法が無いわね。また次に期待するわ。)


2人はあどけなく笑う我が子を顔を歪め冷たい目で見下ろすのであった。



・・・んっ・・寒っ?!こ、ここは・・・うん?揺れてる?!・・・馬車か・・・?


メギルはあまりの寒さに目を覚まして少しずつ目を開けると脚を組んで眉間に皺を寄せた男と目が合った。


「ちっ!起きたか・・・後1時間は大人しくしてろよ!騒いだら窓から投げ捨てるぞ?!」


ミルトンは馬車の席に直に寝かせたメギルに面倒臭く白い息と共に吐き捨てる。

メギルは驚いて今の状況を理解出来ずに目を丸くして辺りを見渡した。



それにしても寒い!!ぼ、僕は今どうなっているんだ?!何が起こっているんだ?!・・・それに・・・こ、この身体は・・子供?!・・あっ!・・・生まれ・・変わったのか・・・あれは夢じゃなかったんだ・・・アルフェリア様・・・で、でもこの雰囲気は・・嫌な予感しかしないぞ・・・


恐る恐るミルトンの顔を見ると、また目が合ってしまう。



ん?・・こいつ・・・なんだか雰囲気が変わったような気がするが・・気のせいか?


メギルはすぐさま目を逸らすと神様との会話を記憶から辿った。



えっと・・確か・・この世界での制限と限界を取り払った・・・後は・・スキルを1つ・・・あっ!そうだ!ステータスだ!


メギルがそう思った瞬間目の前にステータス画面が現れた。


ほ、本当に出た!!凄いぞ・・・これが僕のステータ・・・ス?


「あぶわぁ!!!(げげっ!!!)」


「何だ?!」


自分のステータスを見てつい声を上げてしまいミルトンに睨まれる。


メギルは”しまった”と口をつぐんで何事も無かったように俯き誤魔化した。


あ、危なかった・・・でも何だよ・・この最低で底辺なステータスは?!・・・ん?称号もスキルもあるぞ・・・待てよ・・こいつは服装からして貴族だ・・・貴族の子供でこのステータス・・・さっきの態度からすると・・・も、もしかして僕は・・


がががっ!!!


「あぶっ!!」


メギルは自分に降りかかる最悪な事態想像していると目的地に着いたのか急に馬車が止まった。

馬車の扉が開けられるとミルトンはメギルの首の後ろの襟を乱暴に掴んで持ち上げると馬車を降りた。


(ぐっ!!や、やっぱり悪い予感しかしない・・・寒っ!!ど、どうするつもりだ?!)


馬車を降りると真っ白に積もった雪が松明の灯りに照らされキンッと張り詰めたような寒さの中で暖かそうな服装の3人の男の姿が見えた。


「コレだ!!」


ミルトンは吐き捨てるように言うと後ろ襟を鷲掴みにしたメギルを男達の方に差し出した。

するとメギルは寒さで震えながらじたばたと手足を動かしてもがいていた。


(さ、寒い・・死ぬ・・く、苦しい・・は、早く降ろせ!おっさん!)


「おっとミルトンさんよ!商品はもっと大事に扱って欲しいもんだな」


真ん中の厳つい男がニヤつきながら近づいて大きな麻袋を広げた。


「ふん!こんな称号も固有スキルも無い底辺の役立たずなんぞ魔物の餌にしても良かったんだ!とっとと金と契約書を寄越せ!」


右隣の男が金貨の入った袋を投げ渡すとミルトンは片手で受け取り重さを確認して麻袋の中に躊躇なくメギルを落とした。


どさっ!


(ぐふっ!!痛っ・・やっぱりこう言う事か!!アルフェリア様!!生まれ変わっても試練を与えるのかよ!!手助けしてくれるんじゃないのかよ!!!!・・・くそっ!!・・・許さないぞ・・・絶対許さないぞミルトン!!顔を覚えたからな!!必ず仕返しに行くからな・・魔物の餌にしなかった事を後悔させてやる・・・首を洗って待ってろよ・・・)


「ところでガキの名前はあるのか?」


真ん中の男が麻袋の口を閉じながらミルトンに聞く。


「ふん!!そんなもの無い!お前等で決めろ!!」


「・・・あぁそうかい・・ひでぇ親だな・・少しだけ同情するぜ・・・じゃあ此処と此処にサインしてくれ。」


男が二枚の紙をミルトンに渡すと面倒臭そうに書き殴った。


「これでいいか?!」


「あぁ。一枚はあんたの控えだ。無くしても再発行はしねぇぜ?」


「ふん!余計なお世話だ。こっちはきっちり金が入れば良いんだ!ちっ!これからまたこの寒い中二時間掛けて戻らんといかんのだ!全く手間をかけさせる!」


ミルトンは悪態を吐きながら振り向きもぜずに馬車に乗り込み元来た道を帰って行った。


(ぜ、絶対に・・・許さない・・・ぞ)


メギルは麻袋の中で遠ざかる馬車の音を聞きガタガタと震えながら自分の現状を受け入れ復讐を誓うのであった。



「なあ兄貴・・・おかしくないか?普通のガキだったら泣き叫ぶのか普通だよな?妙に静かなのが不気味だぜ。」


部下の男が麻袋を見つめながら呟いた。


「確かにな。だが馬鹿過ぎて今の自分の現状が分からないのかもな・・・だが・・このガキは運が良いいんだぜ・・・」


(ふん・・何を言ってるんだ・・お前らも・・・絶対に許さないからな・・・って・・あれ?そう言えばミルトンの奴・・・僕は称号もスキルも無いって言ってたよな・・・何故だろう・・・ちゃんと称号も固有スキルもあるのに・・・)


メギルは虚空に映るステータスを眺めて首を傾げるのであった。



〈創造神アルフェリア〉


(あっ・・・しまったわ・・神級の称号とスキルは普通の人間の鑑定では見れなかったわね・・・ごめんね・・・てへっ。)

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