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第16話 スタンピード

創造神アルフェリアはゼノアを映した鏡を見つめ話しかける。


「・・気付いてしまったのね。そう。君は産まれる事なくこの世を去ってしまったの。だけど・・君は特別なのよ。

君のお母さんメラリルは代々〈神の民〉の血筋なの。この私が最初に産み出した最初の人類・・・それが〈神の民〉。それは代々女性に受け継がれる。でもこの事実は本人は知らないわ。そして気の遠くなる年月を受け継がれる事によって血筋は薄れ力も薄れて行ったの。だけど・・・メラリルは死の直前必死に君を護ろうと強く願い〈神の民〉の力が覚醒したのよ。残り少ない自分の命と引き換えにお腹の中の君に全てを託したの・・最後の最後であなたのお母さんは奇跡を起こしたのよ。そしてその願いをこの創造神アルフェリアが聴き届けたの・・・さあ!これからはあなたに託された力で好きなように生きればいいわ!・・それじゃあまた会いましょう・・・」


声が遠退きゼノアは身体の揺れを感じてうっすらと目を開ける。するとシーラの柔らかな背中に頬を付け揺られていた。


「・・・んっ・・夢?・シーラさん・・僕は・・」


「あら?起きたの?今日は色々あって疲れたのね。早くお家に帰りましょうね。」


「・・・うん。」


シーラの母親のような優しい言葉をゼノアは心地よく感じた。ゼノアはまるで母親に甘えるようにシーラの背中に頬擦りしながら再び目を閉じるのであった。




ー2年後ー


「クッ・・こ、この日をどれだけ待ったか・・・あの領主とガキは絶対に許さねぇ・・この俺をこんな惨めな姿にした罪を償ってもらうぞ・・・」


髪は整える事もなく伸び放題で頬はこけて無精髭を生しているエビラス・サーランドが森の木陰からゲイブルの町を睨み付けていた。あの事件でエビラス・サーランドはセルバン子爵の娘を襲った上にセルバン子爵の殺人未遂の罪で国からも見放され冒険者資格を剥奪された。そして1年半の強制労働を課せられたのだ。セルバン子爵に斬り飛ばされた腕は若い治癒士が治療したのだが思うように動かなくなっていた。


「クククッ・・・見てろよ・・この町ごとぶち壊してやるぞ・・貴様等も全てを失え!」


エビラス・サーランドはポケットからドス黒いオーラを放つ指輪を取り出すとぎこちなく動く右手の人差し指にそっとはめた。すると指輪からドス黒いオーラが立ち昇りエビラス・サーランドの身体を覆い尽くす!!


「ぐっ!!ぐはっ!!な、何だ?!俺のか、身体を・・・何かが・・・くそっ・・あ、あの野郎・・だ、騙し・・やがっ・・」


めきゃぁぁぁぁぁぁ!!!!


「ぐべぼぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


纏わりつく闇が大きなドス黒い手を模るとエビラス・サーランドを握り潰す!!そして血を吹き出し項垂れるエビラス・サーランドを大地に開いた闇の空間へと引き摺り込んだ。闇の中からは人体から聞こえてはいけない絶望的な音が断続的に響く・・・


ぐきゃっ・・・ごきっぃ・・びちっ・・びききっ・・ぐちゃっ・・・ごきゅ・・・


暫く咀嚼音のような耳障りな音が響く。そして耳障りな音が止むと大地に開いた闇の空間から三メートルを越える二足歩行の褐色の雄牛が現れた・・・


「ぶもぉぉぉぉぉぉ!!!!」


褐色の雄牛が巨体を震わせて雄叫びを上げると大地に幾つもの影が現れ赤く目を光らせた凶悪な魔物達が数百体現れた。


そしてその様子を木の枝に腰掛け足をぶらつかせ黒いフードを被った男の子が笑顔で眺めていた。


「ふふ・・ミノタウロスか・・中の中クラスかな。まぁ・・Bランク冒険者程度にしては良しとするか。それにしても感情に溺れた馬鹿な人間は扱いやすいね。そうさ・・その指輪は〈魔物召喚の指輪〉じゃない。僕の長年の研究の成果。悪魔を呼び出す為の〈生贄の指輪〉さ。・・ふふ・・さあ!お前の名はデリブリアだ!力試しついでにあの馬鹿な人間の望みを叶えてやれ!!」


「ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


黒いフードの男の子がゲイブルの町へ手をかざすとデリブリア率いる魔物の軍団がゲイブルの町へと走り出すのであった・・・




今日はゼノアが2年の職業訓練最終日を迎え、いつもの〈港食堂〉で昼ご飯を食べていた。ゼノアはゴルドの亡き娘であるメラリルの子の生まれ変わりという実事は皆には伏せていた。ゴルドに嫌な事を思いださせたく無いというゼノアの考えからであった。


ゴルドが昼ご飯をほうばるゼノアの頭に手加減なく手を乗せるがゼノアは微動だにせずに食べ続けている。


「よぉ!!もう2年経ったのかぁ??ゼノアよ!もうここでずっと働いたらどうだぁ!!わぁっはっはっはっはぁ!!!」


ゼノアがムッとして顔を上げる。


「ゴルドさん!何度も言うけど僕は冒険者になりたいんだ!ここでは働けないよ!」


「そうです!!絶対に駄目ですよ!2年の契約なんですからね!」


同調するようにシーラが頬を膨らます。


(・・・私だって2年も我慢したんだから・・・)


ゼノアは盗賊に殺された両親を思い強くなって弱い者を護ると決めたのだった。そこでS級冒険者であったゴルドに頼み込み週に一度戦い方を教えてもらっていた。


「あぁ!分かってるさ!冗談だ!確かにお前はこんな小さな町で終わる器じゃねーな!だが・・気が向いたらいつでも来いよ!待ってるからな!わぁっはっはっはっはっはぁ!」


ゴルドが容赦なくゼノアの背中をバシバシと叩いていると勢いよく〈港食堂〉の扉が開かれゴルドの部下が飛び込んで来た!!


バァァァァァァン!!


「親方ぁぁぁ!!大変だぁぁ!!スタンピードだぁぁ!!300はいるぞ!!」


「な、何だと?!こんな突然に?!よし!野郎ども!付いて来い!!他の皆んなはギルドに避難しろ!!俺達は様子を見て来る!急げ!!」


ゴルドが勢いよく立ち上がると部下の男達も頷き立ち上がる。そして騒つく食堂を出て行こうとするとゼノアも立ち上がった。


「ゴルドさん!僕も行く!僕も戦うよ!!」


するとゴルドが立ち止まり背中越しにゼノアを見下ろす。


「馬鹿野郎!!いくらお前が強くても実戦は寸止めも手加減も無ぇんだ!!少しの油断が命取りになる!!ゼノア!お前にはまだ早い!!お前はギルドへ行け!そこでギルマスと協力して皆んなを護れ!!いいな?!」


ゼノアは初めて見る本気ゴルドに圧倒され声が詰まる。


「・・・う、うん・・わ、分かったよ。でも!!ゴルドさんも気を付けてよ!!」


「あぁ。任せておけ!皆んなを任せだぞ!」


ゴルド達は肩越しにニヤリと口元を弛ますとそのまま食堂を出て行った。


「さあ!ゼノアちゃん!私達も早く行かないと!!」


「・・う、うん。行こう!!」


(なんだろう・・・この胸騒ぎは・・嫌な予感がする・・・)


ゼノアは不安が湧き上がりゴルドが出て行った扉をただ見つめるのであった・・・

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