第13話 鑑定
ゼノアは大きな庭を眺めながらシーラに手を引かれて屋敷の庭を横切って行く。すると庭の一画に小さな森のように木々が植えられ花が咲き誇った場所に目を引かれた。
(本当に広い庭だな・・・僕なんかが一生かかっても住めない場所なんだろうね・・・へー・・庭に森か・・あんなに綺麗に花が咲いて、ちゃんと手入れが行き届いて・・・んっ・・あれ?・・待てよ・・・な、何だろう・・この違和感は・・・)
ゼノアは庭の一画にある小さな森を見ているうちに何かに気付きそうで気付かない違和感に襲われていた・・・
「さあ!入って!お父様の来るまで寛いでね!」
アメリの声にゼノアの思考が止まり振り向くとメイドが屋敷の大きな扉を開けて一礼していた。
「ありがとうございます。さあ!ゼノアちゃん!行くよ!」
「あっ・・・は、はい・・」
ゼノアはシーラに手を引かれるが小さな森を見つめながら屋敷の中へと消えて行くのだった。
「待たせたな。」
「いえいえ!!とんでもありません!!」
治療を終えて着替えたセルバン子爵が部屋に入って来るとシーラは慌てて立ち上がり頭を下げる。ゼノアは食べかけの菓子を一気に口に放り込みシーラを見習って立ち上がる。
「・・むぐむぐ・・もぐ・・」
(このお菓子美味しいな・・・)
そんなゼノアの姿にセルバン子爵はふふっと笑みを溢し軽く手を上げる。
「・・そんなに硬くならんでもいい。君達はお客様なのだからな。さあ、座って寛いでくれ。」
「は、はい・・それでは失礼します・・・」
シーラがおずおずと腰掛けるとゼノアも座りお菓子に手を伸ばす。
するとセルバン子爵が対面のソファに腰掛け両手を膝に置くと身を乗り出す。
「ゼノア君。そのお菓子が気に入ったのか?」
「ふぁい・・・ふぉいしいでふ・・・」
(はい・・・美味しいです・・・)
セルバン子爵は頬が膨らむ程お菓子を口に放り込むゼノアを見てやはり3歳の子供なのだと頬を緩ます。
「そうか。ならば帰りに持って行くといい。用意させよう。」
セルバン子爵が執事のセルジュに頷くとセルジュが一礼して静かに部屋を出て行った。そしてセルバン子爵は座り直して背筋を伸ばすとお菓子でほっぺを膨らませたを真っ直ぐ見て頭を下げた。
「ゼノア君。改めて礼を言わせてくれ。娘と私を守ってくれてありがとう。」
「んがっ!!!ごほっ!ごほっ・・・」
(き、貴族が平民に頭を下げた?!そ、そんな貴族がいたのか・・・)
「あ、あの・・僕は・・僕が出来る事をしただけですから・・・」
セルバン子爵は顔を上げると肩の力を抜いて笑みを溢した。
「ふっ・・・ゴルドの言う通りだな。見た目は子供だが中身は3歳とは思えんな・・・面白い子だ。」
シーラはセルバン子爵の口からゴルドの名前を聞き違和感を覚えた。
「あ、あの、領主様。ゴルドさんとはお知り合いなのですか?」
「あぁ、そうか。シーラは知らないのだな。実はゴルドは元冒険者パーティーの仲間なんだ。これでも昔は氷剣のガベルと言われていたのだぞ。」
ガベルは少し得意げに口角を上げる。
「えぇぇーー?!領主様はあのS級パーティー〈鋼の意思〉のメンバーだったんですか?!」
シーラは目を丸くして驚いていたがゼノアは何となく納得していた。何故ならガベル・セルバンの言動にはゴルドの匂いが漂っていたのだ。
(ははっ・・通りでゴルドさんと同じ雰囲気を感じたはずだよ・・・だってパーティーは想いを同じにする人の集まりだからね・・・言動も似てくるよね・・・)
「・・・だが私も歳をとった。若い者に昔の栄光を自分で語るのは嫌われるな。ふむ。そろそろ本題に入ろうか。」
セルバン子爵は座り直すと顔の前で手を組む。
(こんなに改まって何の話だろう・・・)
「さて。今日君を呼んだのはゴルドから報告を受けたからなんだ。あの塞ぎ込んでいたゴルドが息を切らせてここへ来たんだ。まるで我が子を紹介するように逸材を見つけたと目を輝かせて私に話して聞かせてくれたのだ。久しぶりにゴルドの嬉しそうな顔を見たら私も会ってみたくなったのだよ・・・あのゴルドの笑顔を取り戻した君にね。」
「えぇっ?!ぼ、僕が?!・・・ゴ、ゴルドさんの笑顔を・・・?」
(・・・あのゴルドさんが塞ぎ込んでいた?!何があったんだろう・・・信じられない・・・)
ゼノアはいつも豪快なゴルドしか知らなかった。そのゴルドが落ち込んでいる姿を想像がつかなかった。
「あぁ、そうだ。でも・・初めはこうして話しながら君の事を探ろうと思ったが・・・もうその必要が無くなった。ゴルドの言う通りだったよ。3歳にしてBランク冒険者の突進を弾き飛ばす脅威の身体能力・・・そして3歳の子供とは思えない言動・・・ゼノア君・・もし良ければなんだが・・君のステータスを見せてくれないか?」
セルバン子爵が不適な笑いで身を乗り出してゼノアの顔を覗く。
「えっ?!ス、ステータスを見れるんですか?」
「あぁ、私は見れないがセルジュは固有スキルで〈鑑定〉が使えるんだ。それに君も自分のステータスに興味があるだろう?」
(・・・〈鑑定〉・・他人のステータスを見れるスキルか・・・あまり見られたく無いんだけど・・・ん?・・も、もしかして・・・よし・・この人達なら・・・大丈夫だよね・・)
「はい!よろしくお願いします!」
「おお!!そうか!」
ゼノアが笑顔で答えると気を良くしたセルバン子爵はソファに背中を預けるとゼルジュを呼ぶ。
「セルジュ!!来てくれ!!」
「はい。旦那様。」
セルジュは扉の外で待っていたようで呼ばれて直ぐに部屋に入って来た。セルジュの手にはお菓子の入った箱が乗せられていた。
「セルジュよ!ゼノア君には承諾してもらった。早速見てくれ!!」
「はい。分かりました。それではゼノア君。失礼致します。」
〈鑑定〉・・・
セルジュが深々と一礼するとゼノアのステータスを鑑定する。そしてセルジュは予想以上のゼノアのステータスに目を見開いたまま肩を震るわせていた・・・
ゼノア
Lv 1
称号
力 360
体力 260
素早さ 112
魔力 50
【固有スキル】〈寒耐性10〉〈苦痛耐性9〉〈状態異常耐性10〉〈運搬7〉〈料理5〉〈解体5〉〈腕力強化7〉〈体力強化7〉〈脚力強化7〉〈物理防御7〉〈鑑定1〉
(・・・な、な、なんですか・・このステータスは・・・ほ、本当に3歳なのですか?!し、信じられません・・それに、こ、固有スキルが・・・10個・・・なっ?!何ですかこのスキルレベルは?!?!ス、スキルレベルが5を越えている?!・・・んっ?!〈鑑定〉?!お、おかしいですね・・先程の話では〈鑑定〉を知らない様子だった筈です・・・はっ!ま、まさか・・いや・・それならば辻褄が合う・・・)
「・・・セルジュ!おい!セルジュ!どうしたんだ?」
考え込んでいたセルジュはセルバン子爵の声で肩を跳ね上げて我に返る。
「はっ!・・・も、申し訳ありません。旦那様。少し気持ちを落ち着ける時間を頂いてもよろしいですか?」
「あぁ。落ち着いてから話せば良い。その様子では余程凄いステータスなんだな?」
セルジュは目を閉じて息を吐き出すとゆっくりと目を開けた。
「はい。旦那様。ゼノア君のステータスは口で説明するのが難しいのです。ですので見て頂いた方が良いと思います。」
そう言うとセルジュはゼノアに一礼する。
「ゼノア君。ステータスを見せてくれてありがとう。それで旦那様にも君のステータスを見れるようにしても良いですか?」
(ど、どう言う事だろう?説明するのが難しい?・・・で、でもこの流れは仕方ないよね・・・)
「・・・は、はい。」
「ゼノア君。ありがとうございます。それでは・・・ステータスオープン!」
セルジュの声と共に虚空にゼノアのステータスが映し出された・・・そして予想を遥かに越えたゼノアのステータスにセルバン子爵の顔色が変わって行く・・・
「な、な、なな、何なんだこのステータスはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
セルバン子爵は驚きの余り抑える事無く絶叫し、その声が屋敷中に響き渡るのであった・・・
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