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第12話 ガベル・セルバン子爵

「ふん。冒険者の面汚しめ。殺されなかっただけでも有り難く思え!」


「くそぉぉぉ!!!痛えぇぇぇっっ!!許さんぞぉぉぉぉぉ!!!!くそぉぉぉ!!」


ガベル・セルバン子爵はのたうち回るエビラス・サーランドを一瞥してゼノアの前に立つと腰を屈め頬を緩ませる。


「私がこのゲイブルの街の領主ガベル・セルバンだ。君が噂のゼノア君だね?」


(うわ・・・さっきの雰囲気からこの変わりよう・・・もし何か粗相があったら・・)


ゼノアはさっき見たセルバンの笑顔の裏側を想像し肩に力が入る。


「は、はい!!こ、こんにちは!!ゼ、ゼノアと言いましゅ・・・」


(あ・・噛んだ・・・)


「ふふ。そんなに緊張しなくて良い。君はお客なのだからな。」


そう言うとセルバン子爵は頬を緩ませて緊張で固まっているゼノアの頭に優しく手を乗せた。するとガベル・セルバン子爵の眉が跳ね上がる・・・


(・・むっ・・・この歳でこの力強さ・・その上・・この魔力・・・あり得えん・・本当に3歳の子供なのか?!)


(あれ・・・この反応は・・初めてゴルドさんと会った時と似ているような・・・)


セルバン子爵もゼノアの力に気付いた。何気なく立っているように見えて地に根が張ったように揺るぎない力と並の冒険者でも持ち得ない魔力を感じたのだ。セルバン子爵はゼノアの力に驚きを隠せないでいた。


「あの・・どうかされましたか?」


シーラがゼノアの頭に手を乗せたまま動かないセルバン子爵に声をかけるとびっくりするように我に返り立ち上がった。


「んっ・・あぁ・・何でもない。さあ!屋敷に案内しよう・・・」


「あっ!!!」


セルバン子爵が立ちあがろうとすると突然ゼノアが声を上げた。


ゼノアの声にセルバン子爵が振り向くとさっきまでのたうち回っていたエビラス・サーランドが片腕で剣を構え殺気を剥き出しにして突進して来るのが目に映るのだった。


「くっ!!しまったっ!!」


「よくもやってくれたなぁぁぁ!!取り敢えず死ねぇぇぇ!!!」


「危ない!!!」


「お父様!!!」


ゼノアに気を取られエビラス・サーランドの殺気に気付かずに不意を突かれたセルバン子爵は剣を抜く事も避ける事も出来ずにスローモーションのように自分の胸元に剣先が迫るのを見ている事しか出来なかった。だが剣先が胸に突き刺さるその刹那・・視界の淵にゼノアの姿を捉えるのだった・・・


(なっ?!ゼノア君?!)


(・・・こいつ!!いい加減にしろ!!)


ゼノアは臆する事なく突進するエビラス・サーランドの前に出た。そして全力で地面を踏み込み両手を突き出しエビラス・サーランドの腹部へとその力を解放した!!


「お前なんか飛んでけぇぇぇぇ!!!」


ずどおぉぉぉん!!


「ごふべぇぇぇぇぇ!!!!」


ゼノアが突き出した両手はエビラス・サーランドの自慢の鎧に二つの窪みを造る!!その衝撃でエビラス・サーランドは胃の中の物を撒き散らせながら放物線を描き吹っ飛んで行った。


・・・どがざぁぁぁぁ・・・


「・・・うっ・・くっ・・な・・何が・・・どうなっ・・た・・・あ、あいつは・・ぐふっ・・・」


エビラス・サーランドは訳も分からず数メートル先の地面に転がった。そして冷たく見下すような目のゼノアを目に焼き付け意識を手放すのであった・・・


そしてシーラとアメリ、そして野次馬達が目の前で起きた一瞬出来事に声も無く唖然としていた。


「ふう。領主様。お怪我はありませんか?」


そしてガベル・セルバン子爵も屈託の無い笑顔で振り向くゼノアに呆気に取られるばかりで声を出す事を忘れていた。


(・・・あ、あの刹那にこの子は躊躇なく私を守るために・・・それに曲がりなりにもBランク冒険者の突進を3歳の子供が跳ね返しただと・・・し、信じられん・・・)


「お父様!!!」


混乱して考えが纏まらないセルバン子爵にアメリが飛び付いた。


「お父様!お怪我は?!」


「あ、あぁ・・ゼノア君のお陰で擦り傷で済んだ・・・」


見ればセルバン子爵の心臓の位置に服が斬られ血が滲んでいた。


「お父様!!!大変!!早く治療を!!」


「だ、大丈夫だ!この程度大した事はない。それよりも早くあいつを拘束するんだ。また何をしでかすか分からんからな!」


「は、はい!お父様!」


街の男達も手伝いエビラスサーランドを拘束すると、ほどなくして警備隊が到着した。事情を話すと後日詳しく聞くと話を終えた。そしてエビラス・サーランドは意識を失ったまま引き摺られるように連れて行かれて行くのだった。




ゼノア達は領主邸へと案内され大きな両開きの門を潜るとセルバン親子が執事とメイド達に出迎えられた。


「旦那様お帰りなさいませ・・・」


切れの良い礼をしようとした執事がゼルバン子爵の血の滲んだ胸元に目が行く。


「旦那様!!お怪我を?!直ぐに治療を!!」


「大丈夫だ。大した事は無・・・」


執事はセルバン子爵の次の言葉が分かっていたかのように一歩前に出る。


「いけません!!軽い傷でも悪化する事もあります!さあ!旦那様こちらへ!!」


執事は半ば強引に屋敷へと促すのであった。


「セルジュ!分かったから慌てるな。あの2人は私の客人だ。丁重に頼むぞ!なにせ私の命の恩人だからな!」


急ぎ主人を治療を最優先にしてゼノアとシーラに背を向けていたセルジュが主人の命の恩人と聞き高速で身体ごと振り向いた・・


ざさっ!!


「な、なんと・・・こ、これは挨拶もぜずに失礼致しました。今は急ぎますので、また後ほど改めましてご挨拶させて頂きます。」


「セルジュ、大丈夫よ!私が案内するから。お父様をよろしくね。」


「お嬢様。ありがとうございます。それでは失礼いたします。」


セルジュはゼノアとシーラに深々と頭を下げると直ぐにセルバン子爵を屋敷へと付き添って行った。


「さあ!行きましょうか。案内するわ!」


残されたゼノアとシーラがアメリに案内されて屋敷へと向かおうとするとゼノアは先程までのやり取りなど気にもせず目を輝かせて領主邸を見回していた。


「アメリさん!凄く大きいお屋敷だね!!あんな大きな噴水があるお庭なんて見た事がないよ!」


「そうなの?じゃあ後でお庭を見せてあげるわ!」


アメリが中腰になり笑顔でゼノアの頭を撫でるとアメリの深い谷間が目の前に現れる・・


「う、うん!ありがとう!」


(おっふ・・・確かに・・・凄く大きいね・・・)

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