第11話 エビラス・サーランド 再び
ゼノア達は路地を何度も曲がりエビラスを撒くと路地裏で立ち止まり息を整える。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・な、何ですか・・あの変態は・・・」
「そ、そうね・・・本当に困ったものよ。最近、この近くの遺跡に新しく迷宮が発見されたのよ。それを目当てに冒険者が集まって来てるらしいわ。・・・それにしても君のお陰で助かったわ!ありがとね!」
銀髪の女性がゼノアに胸元を晒しながら頭を撫でる。
(おう!これは中々の・・・はっ!・・だ、駄目だ!!これじゃあ・・あの変態と変わらないじゃないか・・)
ゼノアは我が振りを治すように自重し背筋を伸ばしニッコリと笑う。
「綺麗なお姉さんは大変ですね!男の人が集まって来るから!」
銀髪の女性は肩をすくめながらゼノアの目線に合わせるようにしゃがむとゼノアのほっぺをツンツンする。
「まあ!おませさんね!一体誰の教育かしら?私はアメリ・セルバンよ。アメリでいいわ。」
「僕はゼノア!3歳独身です!よろしくお願いします!」
「まぁ!私を口説いているの?可愛いわね!こうしてやるわ!!」
「わぶっ!!」
アメリはゼノアを自分の胸に収めて抱きしめた。ゼノアは抵抗する事なく成すがままに堪能していた・・・
(ふんふんふんふんふん・・・こ、これは中々・・・)
(あう・・・ゼノアちゃんの・・女殺し・・)
シーラはゼノアの行く末を一瞬心配するのであった・・・
「・・・あれ?・・・待って・・ゼノアって・・」
アメリが胸に収めたゼノアに目を落とすと思い出したように顔を覗く。
「君はもしかしてゴルド水産のゼノア君?」
「うん。いつもゴルドさんにお世話になっています。」
「やっぱり!!私は君を待ちきれなくて迎えに行こうとしてたのよ!そしたらあの変態に捕まって・・・」
アメリの話を聞いていたシーラも思い出す。
「アメリ・セルバン・・・あっ!!もしかして領主様の・・・」
「えぇ。そうよ!私はガベル・セルバンの娘よ!よろしくね。」
アメリはゼノアを解放すると立ち上がりニッコリ笑って握手を求めて手を出す。
「〈ゲイブル人材派遣〉のシーラです。よろしくお願いします!」
シーラもアメリの手を取り応え満面の笑みで答えるのだった。
「さあ!私の家はすぐそこよ!早く行きましょう!!」
アメリが張り切って路地を飛び出し大通りに出ると背筋に悪寒が走った・・・
「うえっ!!」
「見つけたよお嬢さん!再び会えたのは運命かもしれないなぁ!さあ!今宵は楽しもうじゃないか!」
突然目の前に現れたエビラス・サーランドが両手を広げ迫って来るのだった。
「し、しつこいのよ!!この変態!!」
ガァァンッ!!
アメリはエビラスの鳩尾辺りを前蹴りで蹴り飛ばすが鎧に阻まれてアメリの脚に痛みが走り痺れた。
「あっつつ・・・痛ったいわね!!何するのよ!!」
「アメリさん!大丈夫ですか?!」
シーラが心配してアメリの元へ駆け寄る。
「ふふん。僕は何もしてないよ?」
腕を広げてニヤつくエビラスを他所にアメリは脚をさすり痛みに耐えているとアメリとシーラがエビラスの背後から何者かが近づくのに気付いた・・・
(・・あの方は・・・)
(・・あ・・・)
「さあ!宿に行こうか!今宵は可愛がって・・・」
エビラスがいやらしい顔でアメリとシーラに向かって歩を進めようとするといつの間にか光る冷たい物がエビラスの頬に当てられていた・・・
「あえっ?!」
そして背後から怒気を含んだ声と殺気にも似た寒気を感じた・・・
「おい・・貴様。私の娘に何をしている・・・」
「あ・・・う・・・な、何だ・・この寒気は・・・」
エビラスは背後から感じる迫力に動く事ができなかった。そして頬に当たる剣は冷たかった・・物凄く冷たかった・・
「お父様!」
「全く・・遅いと思って来てみれば・・・ふん・・大丈夫なのか?」
「えぇ。少し脚は痛むけど大丈夫。それよりその変態!!私に付き纏って襲おうとしたのよ!!絶対許せないわ!!」
アメリは立ち上がりエビラスの鼻先に指を指す!
(この人・・・物凄く強い・・・)
剣を持つ領主ガベル・セルバン子爵の立ち姿は素人のゼノアから見ても強者だと理解できる程であった。
(へー・・あの人が領主さんか・・・気性もゴルドさんと似てるね・・・)
「なんだと?!ゆ、許さんぞ・・貴様ぁぁぁ・・・この領主ガベル・セルバンの娘と知っての強行か?!貴様・・不敬罪でこの場で叩っ斬ってやる!!」
(ま、まずい!!まずい!!よりによってこの女が領主の娘?!くそっ!!早く言えよ!!クソが・・・こ、こうなったら・・)
「まっ待ってくれ!!お、俺はBランク冒険者だぜ!!お、王国からも待遇を受ける立場なんだ!!そ、その俺に娘が見初められたんだぞ?!喜ぶべきだろう・・・っ!!」
ガベル・セルバンはエビラスの言い訳に溢れる姿に怒りを抑えきれずエビラスの頬に当てていた剣の向きを変え首に水平に当てた・・・
「死ね・・・」
「ひいっ!!」
「お父様!!子供の前です!!ご容赦を!」
突然のアメリの言葉に我に返ったガベル・セルバンの視線がゼノアに向いた。
(むぅ・・あの子がゼノアか・・・確かに・・招待しておいて見せる事ではないか・・・)
ガベル・セルバンの手が緩み剣がエビラスの首から剣が離れるとここぞとばかりにエビラスが能天気に騒ぎ出した・・・
「ははっ!!そ、そうだよなぁ!?年端も行かない子供の前で人間の首を刎ねるのは駄目だよなぁ?!心に傷が残るよなぁ?!アメリィィ!!いい事言うじゃないか!!もしかして俺に気があるんじゃないかぁ・・・」
しかし全く反省の無いエビラスにガベル・セルバンの目に再び火が灯る・・・
「・・もう・・・貴様は喋るなぁぁ!!!」
キキンッッッ!!
ガベル・セルバンは心の叫びと共に音を置き去りにした剣技を放つとそのまま剣を鞘に収めた。
チンッ!
(速っ・・・辛うじて見えたけど・・・)
「な、何んだ・・・何をした・・・?」
「ふん!子供にクズの末路を教えるのも大人の役目だ。」
ガラン・・・
鍔鳴りが響くと鎧の右肩部分が地面に転がった・・・そして右肩が軽くなり違和感を感じる。
どさっ・・・
エビラスは足元に落ちた物を何気なく見下ろすと・・そこには落ちていてはいけない物が目に映った・・・
「んっ?・・・なっ!!う、嘘だろ・・・嘘だろうぉぉぉぉぉぉぉ!!!腕ぇぇぇぇ!!俺の腕ぇぇぇぇぇぇ!!このBランク冒険者エビラス・サーランドの腕がぁぁぁぁ!!」
エビラスは喚きながら駄々を捏ねる子供のようにのたうち回っていた。それを見た取り巻きの女性は慌てふためきその場から走り去るのであった・・・
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