それなら、幾ら出すんだ?
総額は幾ら?
……マジか!?
野郎の顔なんぞ見たくは無いが表情は大真面目だ。
馬鹿は確定だが、同時に善人だろうから、一応は救いの糸を垂らすかな。
「それなら、幾ら出すんだ?」
俺は周りの仲間だろう連中に視線を向けるが、馬鹿の言葉に感動していた。
そして……
「何を言っているんだ? ボクは彼女達を解放しろ、と言っているんだ。」
……駄目だ、これ。
「つまり、お前は、自分自身の判断で金銭的な交渉をせずに、俺から、俺が所有する奴隷を、俺から無条件に解放しろと強要するのだな?」
「そうだ!」
「聞いたな、受付嬢!」
「……はい。」
俺に声を掛けられた受付嬢の表情は暗い。
「それなら、処理をしろ!」
「……はい。」
「どういう事だ?」
「カイラス様。貴方の様な真面目な方に、この様な事を申し上げるのは、非常に残念です。」
「だから、どういう事か説明して欲しい。」
「勿論、説明いたします。カイラス様は、奴隷法に於いての強盗罪が適用されます。これは未遂も含まれます。
因って、カイラス様を拘束します。」
「……え、奴隷法の強盗罪?」
「はい。奴隷を無料で手に入れる方法は2つです。
1つは、奴隷になる事を自ら認めた者に奴隷商に奴隷契約を依頼する場合と、もう1つが、奴隷契約を交わした主が死亡後の奴隷に接触する事です。」
「そうなのか。」
「そして、重要なのが2つ目の条件です。これでは、奴隷の主は暗殺等に怯えなければなりません。それに、この様な事を大商人や貴族が認める訳がありません。
その結果、奴隷の主に対して金銭的な交渉をせずに、奴隷の解放等を請求する事を奴隷の強盗と同義とする『奴隷法の強盗罪』が制定されたのです。当然、知らなかったでは、……済まされません。
何故なら、奴隷とは主にとっては財産でもありますから。その奴隷を解放しろ、というのは、その者の所有する財産を捨てろと言っているのと同じですから。」
「そんなつもりでは……」
「そうだと思いますが、先程も言った通り『知らなかった』では済まされません。」
「……ボクはどうなる?」
「解放を強要した奴隷が、購入からどれだけの費用が掛かっているかで、賠償額が変わります。そして、その総額の3倍の支払い義務が発生します。」
「3倍も……」
「そして、今回程、無知から来る残酷さや、冷酷さや、無慈悲さを痛恨した事はありません。」
「……どういう事、なの?」
我慢し切れず、仲間の女性が聞いて来た。
「賠償額には、現在装備している物も含まれますから。」
「……装備品も?」
「……此処からは部屋に移動してからにしましょう。」
俺達は、冒険者用の会議室に移動した。
「先ずは、何故、初対面でありながら、いきなり奴隷の解放を言って来た?」
「単純に奴隷は良くないと思った。そして、彼女達を見て助けたいと思ったんだ。」
「他の連中も奴隷法は、知らなかったんだな?」
「……」
他の連中全員が頷いた。
「俺からは以上だ。」
「賠償額に付いては後にして、責任の所在をはっきりしたいと思います。確定しているのがカイラス様です。次にパーティーメンバーの皆様です。カイラス様を切り捨てれば類はおよびませんし、賠償額を聞いてからでも構いませんが、言った言葉には変更が出来ません。よろしいですか?」
「それなら決まっている。パーティーなんだから、カイラスだけに背負わせない。」
「……よろしいのですか? 今ならまだ撤回出来ますよ?」
「変わらない。」
「……よろしいのですね?」
「「「「「ああ。」」」」」
カイラスは仲間に笑顔を向け、全員が頷いた。
……受付嬢が、ここまで慎重に言っているのに、賠償額が安いと思っているのだろうか?
「それでは、カイラス様が賠償する負債は、パーティーメンバー全員が背負う事になりました。」
そう言うと、受付嬢はポーチから出した魔法誓約書に記入して、カイラスの前に置いた。
「こちらの魔法誓約書をきちんと全て読んでから名前を記入してください。」
「分かった。」
カイラスは、まだ理解していない為に、あっさりと名前を記入した。
唯一例外は、先程発言したメンバーの女性だけが、念入りに魔法誓約書を読んで、暫く悩んだ挙げ句、記入した。
受付嬢は、全員の記入済みの魔法誓約書を沈痛な顔で確かめた後、ポーチに仕舞うと言った。
「正確な賠償額は、調べて確かめないと分かりませんが、最低でも『白金貨1800枚』以上となります。」
「「「「「「……え!?」」」」」」
「白金貨1800枚以上です。」
「じょ、冗談、だよね?」
「いいえ。」
「じょ、冗談じゃないわ! 其方の奴隷全員が、何処かの王女様とかなの!」
「いいえ。先程発言した『装備品』です。」
「幾ら高い装備品だって、6人分でも白金貨1800枚は有り得ないわ!」
「そうだ。仮に装備品の全てがドラゴン素材でも、そんな額にはならない筈だ!」
更に表情が険しくなった受付嬢が言った。
「……ルミナスシリーズをご存知ですか?」
「……え、知っているわよ。確か、この都市で売っている服で、貴族様でも滅多に買えない超高級品よね?」
「……ええ。彼女達が装備しているのが、その超高級品のルミナスシリーズの最新最高級品のフルオーダーメイドなのです。そうですよね、ディーン様。」
「ああ。」
「何で! そんな超高級品を奴隷に使っているのよ!」
「彼女達の主がディーン様で、そのルミナスシリーズを取り扱う商会のオーナーでもあるからです。」
「「「「「「……え!?」」」」」」
「改めて自己紹介をしよう。俺の名は、ディーン=フォン=リーガルだ。この都市リーガルの領主代行で、その侯爵位の次期後継者でもある。」
「「「「「「……」」」」」」
「まあ、せめてもの慈悲だ。不敬罪は見逃してやる。」
因みに、値段は1人に付き白金貨300枚で、掛ける6に、更に3倍を掛けると、白金貨5400枚となる。
日本円にして約54億円。
他には、リン達には奴隷購入額も加わるし、奴隷環から奴隷紋に変えた費用もある。
それに武器等もあるが、ルミナスシリーズの最新最高級品のフルオーダーメイドに比べれば微々たるものだ。
「そんな……」
その後は、人の醜い部分が顔を出しての仲間内で、罵詈雑言の嵐となった。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




