店主は居るかしら?
組織の底辺は、意外と社長とかの顔は知らないものです。
今日は、先ずはルミナスローズの王都支店と、転生者マリカのスィーツの王都支店を見に行った。
マリカのスィーツの「フェアリーテイル王都支店」は、俺が開発したルートで集めた素材を使って美味しくて甘いスィーツを販売していて、既に熱心なファンも沢山付いた様だ。
普通、こうなると貴族のお手付きが有るものだが、既に俺というお手付きが居るから安全だ。
店を入って良く見える所に「リーガル家」の家紋付きの推薦状を掛けているから、大抵の貴族は手が出せないし、大抵では無い貴族も、リーガル家を識っているから手が出せない。
後、クリスが許可したから月に3つの貴族だけマリカの出張依頼を受けて出張している。
この依頼で、マリカは王都に屋敷を持つ貴族の所に向かい魅せるデモンストレーションをしている。
まあ、要するに調理している過程を派手にして見せている訳だが、勿論、自分の屋敷に招き入れた事で気が大きくなった貴族がマリカを引き抜きに掛かるが、そんなの俺が許す訳もなく、マリカの護衛の人化したダンジョンモンスターが蹴散らす。
当然、護衛特化にカスタムしたステータスにしてある。
因みに、人化したダンジョンモンスターに、「金」、「異性」、「脅迫」等が効果が有る訳もなく無双している。
次に、ルミナスローズの王都支店に行ってみた。
……店主は店内に居ないな。
奥の部屋で事務処理でもしているのだろう。
とりあえず入ってみる。
「「いらっしゃいませ」」
マニュアルの「来店者には1人以上が挨拶をする」は出来ているな。
「今日は、どの様な御予定ですか?」
「まだ、はっきり決めていないんだ」
「畏まりました。何かございましたお呼びください」
俺を担当した女性店員は、そう言って一礼した後、俺から離れていった。
彼女の対応は合格だな。
さて、折角だから店内を見て廻るかな。
俺は、店内を見て廻りルミナスシリーズで最も高価なルミナスクラウドシリーズを展示しているエリアに行くと、恐らく担当の女性が俺を見るなり顔を歪ませ言った。
「お客様。此処には買える商品は無いかと思われます。正直に言えば、この店に居る事自体が時間の無駄かと思われます」
……はぁ!?
俺達(クリス達が含む)が作成したマニュアルにはそんな対応は無いぞ。
水戸○門みたいに、外見だけで判断するのは危険だから、接客係は、来店したお客様は全て上位貴族と思って対応する様にと、記載されている筈だ。
「その言葉は、お前の言葉か? それとも店としての言葉か?」
「勿論、店としての言葉です」
「……ほぅ。それなら、店主に聞こう。店主を呼べ」
「只今、店主は不在です」
「……分かった」
「ふん。金無しが!」
俺が、その場から立ち去る中で、聞こえた暴言が俺の耳に届いた。
俺が店から出て、あの店員をどうしてやろうかと思っていると、知っている女性が俺に向かって来た。
「これは、ディ……いえ、エドガー様」
「久し振りだな、リアリス。何処に向かっている?」
「はい。これからルミナスローズの王都支店に行って店主に、新作のスィーツの試食を持って行く途中です」
「いや、今、店主は不在らしいぞ」
「そんな事はありません。今日は外出する予定は無い筈ですし、私が店に行く事も存じている筈ですから」
この女性リアリスは、マリカの下で修行したスィーツ店の「フェアリーテイル王都支店」の店主だ。
先程、何があったのか話した後、俺はリアリスと一緒に再びルミナスローズの王都支店に行く事にしたが、今度は異世界あるあるの「認識障害」を起こす魔法を使って、周りには俺を認識出来ない様にした。
「いらっしゃいませ、リアリスさん」
「店主は居るかしら?」
「はい。呼んできますね」
……やっぱり居るのか。
「リアリスさん、ようこそ」
「ええ」
「……?」
先程、ルミナスクラウドシリーズの商品エリアを担当していた女性店員がリアリスは近付いて来て挨拶をした。
リアリスは、俺から話を聞いていたから塩対応だ。
相手は「何故?」な顔をしている。
「リアリスさん、お待たせしました」
数分後に、ルミナスローズ王都支店の店主が現れた。
彼女の名前は、「アグスティナ=マハナ=アデリーナ」と言ってクリスにとっての叔母にあたる。
アグスティナは、アデリーナ伯爵家に嫁いでいたのだが、嫡男が当主になり、暇をもて余していたから、ルミナスローズ王都支店の店主になって貰った。
誠実で聡明で、自分にも他人にも厳しい方だから安心出来ると、お願いしたら快く引き受けてくれた。
「さあ、奥に行って試食を始めましょう。楽しみにしていたのよ」
「アグスティナ様、その前に少しお伺いしたい事がございます」
「何かしら?」
リアリスの顔を見て真剣な表情となり姿勢を正すアグスティナが居た。
リアリスは、周りを見て客が店内に居ない事を確認した後に言った。
「店員にはしっかりとマニュアルに基づいた指導をしていますか?」
「勿論よ」
「そうですか?」
「どういう事?」
「先程、この店に来られた方から、『お前に買える商品は無い』と言われたそうです」
「何ですって!」
「そして、その言葉を言ったのが、彼女です」
リアリスは、俺に暴言を吐いた女性店員を指差した。
「本当なの?」
「いえ。そんなお客様は来ておりません」
……対応した事すら、記憶から抹消しているわ。
「リアリス。ああ言っているけど?」
此処で、俺は認識障害の魔法を解除した。
「確かに言ったぞ」
「あ! 金無し!」
「そう言えば、そんな事も言われたな」
「……どうやら、リアリスの言った事は本当の様ね」
「店主! 早くこんな『金無し』を店から追い出しましょう。いつまでも店に意地汚く居座れますと、店の品格が著しく下がります!」
「……何を言っているの?」
アグスティナは、静かに冷たく怒りを表した。
「……ひ!」
「貴女はマニュアルを無視する気かしら?」
「ま、マニュアルだけが全てではありません。臨機応変にするべきです! だから、早く店の品格を守る為にも追い出すべきです!」
「確かに、マニュアルだけが全てじゃないわ。だから、臨機応変にする必要も有るでしょう」
「それなら……」
「しかし! 貴女の発言はそれ以前の問題です!」
「……え?」
「貴女は、誰に向かって『金無し』と言ったか分かっているのかしら?」
「え!?」
「王都支店を含めたルミナスローズのオーナーは誰?」
「筆頭侯爵家の次期後継者のディーン=フォン=リーガル様です」
「分かったかしら?」
「……?」
「まだ分からないの?」
此処で、俺は仮面を外して前に出た。
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