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こんな高そうな宿屋、私には無理です!

運命って、意外と動く時には動きますよね。

 俺が、宿屋に案内すると……


「こんな高そうな宿屋、私には無理です!」

「大丈夫だ。こう見えて、かなり安い」

「……本当ですか?」

「ああ」


 この宿屋は、人件費は無いからな。

 その分、安くなっている。


「1人部屋は、一泊銅貨2枚で、朝夕の食事付きで銅貨8枚です」

「へ!? ……え、エドガーさん?」

「実は、この宿屋のオーナーはかなりの資産家で、この宿屋は善意と道楽でやっているんだ」


 因みに、この宿屋に宿泊出来る条件は、俺が同伴している事だ。

 俺が居なかった場合は、基本的には断っている。

 まあ、何らかの理由が有れば、宿泊を許可しても良いと言ってある。


「……そうですか」

「どうする?」

「今の所、問題点が無い上に、安いので此処にします」

「ありがとうございます。では、台帳にお名前をお願いいたします」

「はい」


 マリーナは、荷物を置きに部屋に行っている間、俺は1階の食堂で待っていると、凄い勢いでマリーナが戻って来た。


「エドガーさん!」

「どうした?」

「部屋のベッドのシーツが見た事が無いので聞いてみたら、素材があの超高級品のルミナスシルクと答えたわ!

 どういう事よ!」

「だから、言っただろ。かなりの資産家だって」

「物には限度があります! エドガーさん!」

「分かった。この宿屋のオーナーは、都市リーガルの次期領主のディーン=フォン=リーガル様だ。俺は彼とは知り合いで、俺が認めたヤツなら紹介しても良いと許可を貰っている」

「……はい!?」

「さて、都市の市場を案内するから行くぞ」

「ちょ、ちょっと待ってください」


 マリーナが立ち直ったのは、それから1時間後だった。

 市場を廻り宿屋に帰って、食堂に行く。


「ありがとうございます」

「顔見せが無事に終わって良かったな」

「はい。これで後は1階の店と2階の生活圏の改装工事が終わるのを待つだけです」


 市場の顔見せが終わり宿屋に帰った俺達は、途中で買った肉串等を食べながら雑談をしていた。


「お礼に、ご馳走します」

「……分かった」


 此処で断っても、頑固な面があるマリーナが諦めないと分かっていたから素直に受け入れたのだが、何か、懐かしい匂いがするなぁ。


「お待たせしました。オーク肉の香草焼きと赤豆のスープです、召し上がれ」

「……まさか、な」


 はい、豚の生姜焼きと味噌汁です。

 ゲームに酷似しているが、料理は普通に中世ヨーロッパ系のこの世界だ。

 つまり、世間一般的には日本食は存在しない。

 とりあえず、味の感想待ちのマリーナに言わないとな。


「美味しいよ、マリーナ」

「良かった」


 良い笑顔だよ、マリーナ。

 しかし……


「所で、こんな料理は初めてだけど、何処で?」

「あ、わ、私の故郷の定番料理なんだ」

「故郷って、何処?」

「とっとも遠い所よ」

「マリーナは、A?」


 俺はわざと胸を見て言った。


「失礼な! Dよ! ……あ」

「転生? それとも転移?」

「エドガー、貴方……」

「前世、日本人」

「……」

「転生なら、まだ良かっただろうけど、転移なら大変だったろう? どっち?」

「……転移」

「頑張ったな、マリーナ」

「う、うわあああー……」


 数10分後に泣き止んだマリーナは、少しずつ自身の事を話し始めた。


「私の名前は『坂町真梨奈(さかまちまりな)』で、中学2年生で料理部に所属していたわ。実家は弁当屋さんで、私が店を継ぐ予定だったの」


 そんなある日に、この世界に突然転移したらしい。

 最初に出会った人が善人だったお陰で、その人に守られながら読み書き会話に、一般常識を覚えて独り立ち出来る様になった頃に保護者になってくれた人が病死したらしい。

 そして、遺産を受け継いだが、この世界の技術を何も持っていない事に気付いたマリーナは、唯一持っている技術である料理で、弁当屋を開く事を決意した。

 しかし、マリーナが居た領地の領主は頭が固い為に、多少前衛的な弁当屋を開ける様な雰囲気で無かったから、確かな権力を持ち、更に未だに開発が進んでいる都市リーガルの事を知ったマリーナは一か八かで、此処に来たみたいだ。

 まあ、リーガル家の悪名も知ったが、一市民なんぞ気にしないだろうと思ったらしい。


 ……はあ。悪名そのままの、ゲームのディーンなら間違い無く使い捨ての、ぐしゃポイになっていたぞ。


 そして、遺産から女性のみの冒険者チームを護衛に雇い都市リーガルに来たみたいだ。


「ありがとう。大分落ち着いたわ」

「それは良かった。何か困った時は、俺の所か領主館に行けば何とかなるからな」

「ありがとう、エドガー」


 そして、宿屋を出てマリーナは見送ってくれたのだが、運命は頑張っている女性に優しかった。


「あれ、マリーナ」

「え? エリ、ベス、アンネ、ナル」

「今日、都市リーガルに到着したのに、マリーナ、もう男が出来たの?」

「マリーナは、そっち方面は奥手だと思っていたのにな」

「あのマリーナが、ねえ」

「ち、違うよ。私を助けてくれた恩人だよ」

「そっか恩人か。でも、そっちの彼はそう思ってないかもしれないわよ?」

「大丈夫よ」

「何故?」

「彼、私と同郷の人だから」

「ふ~ん。同郷、ね」

「マリーナ、この4人は誰?」

「都市リーガルまで護衛してくれた冒険者チームで……」

「緑林の光翼よ」

「ん? その名前は……」

「あ、気付いた。そうよ。私達の憧れの『白銀の光翼』から頂いたの!」

「まあ、向こうには私達の事を知らないだろうけど」

「最終的には、実力でAランク冒険者チームとなり、この国の筆頭侯爵家の専属になった彼女達は私達の憧れであり目標です!」

「はい! きっと、このインペリアル王国の女性冒険者は皆、そう思っている筈です!」


 俺達は、宿屋の食堂に戻って先程の続きとなった。




暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。

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