先ず、「義」や「仁」で動く事は無い。
国と国のお話は複雑です。
そんな訳で、俺達、セリオ達勇者御一行、アリシエル王女の出発が明後日と決まった。
翌日、クリスは勇者御一行の女子とアリシエル王女を誘いお茶会を開いた。
まあ、クリスも謂わば筆頭侯爵家の次期第1夫人な訳だ。
彼女も、頑張っているという事だな。
さて、残った俺達とセリオは、特にする事が無いから中庭で模擬戦をする事にした。
途中からは、戦いの匂いでもしたのか、お茶会を抜け出したヴィクトリアと私設女性騎士団の寮からカルラが来て、セリオは模擬戦相手としてモテていた。
勿論、セリオも日々の鍛練でヴィクトリアとカルラの2人を同時に相手にして余裕を見せていた。
あれなら、最低でも魔王を封印する事が出来るだろう。
……まあ、絶望を乗り越えられるかは未確定だがな。
本当に、質の悪い設定だよ。
もし、あの設定がこの世界でも生きているなら、流石にセリオとリアナには同情するな。
そして、あの設定が生きているのなら、もう「終わっている」だろうしな。
さて勇者セリオは、絶望と悲哀と憎悪を乗り越える事が出来るのか?
……場合に因っては俺の出番があるかもな。
5才のあの日に箝口令を引いた本当の理由は、俺が持つ「ユニークスキル」が原因だ。
ユニークスキルとは、世界に1人しか持てない特殊なスキルだ。
セリオの「勇者」もユニークスキルの1つだ。
このユニークスキルの意味を理解していたのは、多分親父と俺だけだろう。
確かに、このユニークスキルを持っているのなら、俺が主役の「ディーンルート」が有ったとしても納得する事が出来る。
それに思い出した事がある。
ゲームの時に、セリオ(プレイヤー側)とディーン(悪役側)の戦いの中で、高確率でセリオ達の攻撃を躱したり弾いたりしていたし、痛烈なカウンターも有った。
アレは、俺のユニークスキルが発動したからだろう。
まあ、それはユニークスキルの一部分に過ぎないがな。
ともあれ、俺としてはユニークスキルを使いたくないと思っている。
とりあえず、あの村が既に「終わっている」のなら、処理しておいてやるか。
鳥葬なんかは見られるもんじゃないしな。
……出発日
先頭の馬車はセリオ達勇者御一行が、真ん中はアリシエル王女の馬車が、最後尾が俺達となる。
まあ、流石の俺も他国とはいえ、王族である王女の前は走れないからな。
道中の露払いは、セリオ達勇者御一行が担当した。
俺は、建前上のインペリアル王国の大使代行だ。
リデシャリス国の危機を払った後の交渉をする際に、先に恩が売れる俺が適任だという事だ。
まあ、他国が勇者を動かすには、インペリアル王国も動かさないといけないから、それは向こうも分かっている事だ。
本当、政治は大変だな。
そして、10日後にリデシャリス国王都に到着した。
流石に道中にアリシエル王女に何かあっては大変だから、陰日向で大使代行として俺も色々と働いた。
……国境を越えると被害を受けた村や町が有り、正に侵略戦争を受けている、という表現がぴったりとしていた。
「アリシエル王女殿下!」
「ただいま、帰りました。マリナル国王陛下に取り次ぎをお願いします」
「は!」
そして、俺とセリオが応接室に行き、他の皆は隣の部屋に通された。
……まあ、結構な人数だからな。
30分程待っていると、アリシエル王女と他3名が入って来た。
「待たせてすまない。私がリデシャリス王国国王マリナル=マリナ=リデシャリスだ」
「王妃のディリナです」
「宰相のチェリブです」
「勇者セリオです」
「インペリアル王国大使代行のディーン=フォン=リーガルです」
「先ずは、よく来てくれた。礼を言う」
その後は、現在の状況を話してくれたが、アリシエル王女が言った内容とあまり誤差は無かった。
まあ、漫画とか違って、そんなに簡単に新しい情報が手に入る訳じゃないからな。
表向きは、インペリアル王国からの親善大使の先触れとして来た俺を歓迎する、という事になっている。
だから、その翌日は歓迎会が開かれ、その夜には国難に対する対策会議が開かれた。
「……では、決定ですね。リデシャリス国は防衛に専念し、私達は群れているモンスター共を蹴散らし、魔族が居れば勇者セリオ達に討伐をして頂く」
「はい。既に、我が国にはモンスターの群れを突破する事が出来る者が居ないのです。そんな我が国に、手を差し伸べて頂いてインペリアル王国の国王には感謝しきれません」
「我が国王陛下も、貴国の苦しみを充分に感じておられるからこその支援です」
意訳は、「背に腹はかえられぬよなぁ?」
「国難が去れば、インペリアル国王にはリデシャリス国王として確かなお礼の言葉を伝える事を約束しよう」
意訳は、「言われんでも分かっている。出すもんは出す!」
「我が国王陛下も、リデシャリス国王陛下に『その言葉だけで充分』と仰れる筈です」
意訳は、「分かっているのなら、出すもんは出せよ」に、なるだろうな。
さて、俺達もセリオ達も、この程度の馬車の旅で弱音を吐く様な柔な鍛練をしていないが体面上の理由から3日休みを取る事にした。
セリオ達はこの3日間は、午前中はリデシャリス王国の騎士達と模擬戦をして士気を高め、午後はゆっくりしていた。
俺達は、我が国有利の交易交渉をやっていた。
まあ、当然だがな。
国が国に対して動くのは利益がある時ぐらいだ。
先ず、「義」や「仁」で動く事は無い。
あ、言っておくが、表向きは「義」や「仁」で動いている事(売名行為)なっているから、「不平等条約」みたいな事はしていないからな!
これで、他国には、セリオ達勇者御一行をインペリアル王国に縛っていない証拠になる。
因みに、レジャーナの時は、セリオ達勇者御一行の独断となっている。
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