閑話~2人の兄と1人の専属侍女
ちょっと長くなりました。
アーロンside
オレ様は、インペリアル王国の筆頭侯爵のリーガル家嫡男として生まれた。
オレ様は、両親の期待に応えられるだけの才能と才覚を持って邁進してきた。
そして、オレ様に弟が出来た。
勿論オレ様は、リーガル家の嫡男として弟サイラスを可愛がり、サイラスもまたオレ様を兄として慕っていた。
数年後には更に2人目の弟が生まれた。
オレ様も嫡男として、サイラスも自分よりも下が出来て喜んでいたのだが、何故か、オレ様やサイラスにはあまり懐かなかった。
それでもオレ様には、筆頭侯爵リーガル家の嫡男としての矜持がある。
だから、優しく接していたが、ある日に全てが壊れる事が起きたのだ。
それは、三男ディーンの「誕生の儀」だ。
この国では、5才になれば誰でも教会や神殿に行き、自身のスキルを知る事が出来る。
これは、この世界の創造神が定められた事だから、国王でさえ疎かに出来ない。
だから、奴隷でさえ、受ける事が出来る。
そして、三男ディーンの「誕生の儀」でスキルが判明したが、信じられない程の内容だった。
正に「神に愛された子」と呼ばれるのに相応しいものだったし、父上は直ぐに箝口令を引いた程だった。
だが、オレ様は納得する事が出来なかった。
オレ様の予備であるサイラスよりも更に価値の低い三男如きが、筆頭侯爵リーガル家の嫡男であるオレ様よりも優秀なスキルを持っているのが我慢ならなかった。
それ以降、オレ様は憂さ晴らしをサイラスとしていたが、些細な事で苛ついていたオレ様は、階段から突き落としてやった!
……今、思えば、これがオレの運命の分かれ道だったのだ。
目覚めた三男、いや、ディーンは変わった。
それが分かったのは、オレのリーガル家次期後継者の披露宴の前日だった。
気が付けば、オレは洞窟の中に居て、そして、ディーンが居たのだ。
その後は、オレがした事を責められ、「拷問」という言葉が優しく感じる激痛を与え続けられた。
オレは、ディーンに絶対の忠誠を誓わされた。
翌日、披露宴が開催されたが、父上なら何とかして貰えるかと思っていたが、悉くディーンに邪魔され、再び、拷問に掛けられた。
完全に心を折られたオレは、ディーンの下僕となった。
それ以降は、ディーンの命令に従い、婚約者のソフィアに冷たく扱い、領主の代行管理のみを励む毎日が始まった。
密かにソフィアの事は想っていたし、ソフィアの婚約者としての献身は理解しているが、拷問に掛けられながら死の恐怖を味わうのはご免だ!
こうして、オレは執務室で今日も書類にサインをする。
サイラスside
おれは、リーガル家の次男のサイラスだ。
物心付いた頃には、少し尊大だが、尊敬に値する兄上が居て毎日が楽しかった。
そんなある日に、おれに弟が出来た。
尊敬する兄上がおれにしてくれた様に、弟ディーンにも優しく接していたが、なかなか懐かなかった。
そして、ディーンの「誕生の儀」で、ディーンが持つスキルは信じられない程の内容だった。
おれは、不満だった。
だから、尊敬する兄上と同じ様にディーンを虐めた。
階段から突き落とされて、良い気味だと思っていたのだが、目覚めたディーンはおれの知るディーンじゃ無かった。
そんな中、ディーンが奴隷を6人も買って帰って来た。
おれは、朝食で文句を言ったら父上に止められたが、ディーンが奴隷を買う気持ちが分からなかった。
ただ、分からなかった事が、この後のおれの運命を変えたのだろう。
その夜、おれは知らない洞窟に居て、ディーンから拷問を受け、下僕となった。
シルヴィアside
私は、インペリアル王国の筆頭侯爵リーガル家に仕える侍女のシルヴィアです。
元々は、私達家族は違う侯爵家に仕えていたのですが、その侯爵家が廃爵となり、私達家族を拾ってくださったのが、リーガル家でした。
お父様やお母様は何故か、元々仕えていた侯爵家が廃爵になった理由を話してくださいません。
しかし、尊敬するお父様やお母様が話さない以上は、知らない方が良いのでしょう。
私もメイド見習いとしてリーガル家に仕える様になって学習しましたから。
それから、数年後には、私はリーガル家当主の旦那様に認められて、三男のディーン様専属侍女に任命されました。
理由の1つとして年齢が近い事も含むでしょうが、大恩あるリーガル家です。
私は、全身全霊を持ってディーン様の専属侍女として仕えたいと誓いを立てたのでした。
そんなある日に、ディーン様の好奇心から、まだ熱いお湯が入っているティーポットに触ろうとしてバランスを崩してしまい、私はディーン様に熱いお湯が掛からない様に庇いました。
その結果、少々火傷を負いましたが、ディーン様を守れて嬉しかったですし、旦那様や奥様に誉められて誇らしかったです。
そして、ディーン様を守った褒美として、上級ポーションで火傷を癒して頂きました。
ただ、私はこの時、少し我が儘を言って、少しだけ火傷の跡を残す事にしたのです。
理由は勿論、この火傷はディーン様を守った「証」ですから残したかったから。
この件から、私の中のディーン様に対する気持ちが変化しました。
以前は、ただ大恩あるリーガル家のご子息に仕えるだけでしたが、今は心から仕えたいと思う様になったのです。
ディーン様も、あれ以降は私に懐いてくださり、とても温かい気持ちで毎日を過ごしていました。
でも、ディーン様の「誕生の儀」以降は、そんな温かい気持ちにはなれませんでした。
ディーン様は、小さいですが生傷を負う日が増えたのです。
私が側に居ない時に負われる為に、何故、そうなったかは分かりません。
そして、ディーン様も教えてくださりませんでした。
そんな不安の中、数年後のある日に、ディーン様が階段から落ちてしまったのです。
ディーン様が目覚めるまで、身の回りをお世話していましたが、数日後に目覚められたディーン様は、私の知るディーン様とは違っていました。
しかし、目覚められたディーン様を見た瞬間に、私はディーン様を「仕えるご子息」ではなく、「大切な人」だと認識したのです。
そして、目覚められたディーン様は、以前の様な幼い子供から成熟した大人の様に変われたのです。
でも、私に対する扱いは以前よりも良くなり、寧ろ、1人の女性として扱う時もあり、ディーン様を少しずつ異性として想う気持ちを隠すのに苦労しました。
そして、ディーン様の婚約者クリスティーナ様も参加されたディーン様の誕生日会が開かれましたが、ディーン様は何か考えて沈んでおられるみたいです。
そんなある日に、ディーン様は私に密かに夜に来る様に言われました。
私は、専属侍女になれた時に聞いています。
専属侍女は、「そういう事」もする場合がある、と。
私は、複雑な気持ちのまま、身嗜みを調え、ディーン様の寝室に行きました。
……私とディーン様は相思相愛だったのです!
勿論、お互いの身分に差がありますので、私は正室にはなれませんし、婚約者クリスティーナ様も居られます。
それでも、初恋の方に「初めて」を捧げる事が出来て嬉しいのです。
ディーン様も、私の事を慈しみ、例えディーン様の御子を身籠っても大切にしてくださる事を約束して頂いたのです。
私は、ディーン様に私の生涯を賭けて仕える事を、固く誓ったのです。
暖かい応援メッセージと星の加点をお願いします。




