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皇帝になったブラック社員  作者: 田子猫
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ギルリルと迎える橋頭堡での夜

「それでは薪を拾ってくるのです」

「手伝おうか?」

「森の中での事はエルフにお任せなのですよ。あなたはくつろいでいてくださいなのです」


ギルリルはそう言うと軽い足取りで森の奥へと向かった。


人類至上共和国の地誌資料はかなりざっくりとしたものではあったが容易に入手できた。

それに拠って割り出した都市の位置から山を2つ隔てた場所に転移で人や物を送り込むための足掛かりである拠点を設定した。所謂いわゆる橋頭堡きょうとうほだ。


都市の隣の山に設定しなかったのは、通常近傍の山は都市から出る汚物の廃棄場になっていることが多いからである。


橋頭堡確保の手順は、まずタマが座標位置に警戒能力の高い狼型の魔獣を送り込み、1キロ四方に分散、次いでアンデッドを周囲の高地に配置、高地のない森林内は渓流に沿ってスライムを配置である。これで直接正規軍とぶつからない限りは十分に防御は成立する。


この国での活動資金は使者から巻き上げた財布にあった金・銀・銅貨を大量に模造している。明日の朝には商品となる鉱石を含めて馬車いっぱいにして届く手筈だ。


「戻ったです~」


1時間もしないうちにギルリルは大量の木材を背負って帰って来た。

太い幹や枝を蔓で縛り付け、即席で作った背負子(しょいこ)のようなもので運んできた。


(こいつ、こんな力があったのか)


「私がいるからには、あなたに寒い思いなんて絶対にさせないのですよ」


そう言うとギルリルは慣れた手つきで木材を解き、並列形に組むと、懐から包みを取り出した。


「タマちゃんから人間っぽく火を起こすにはこれだってもらったです」


包みの中はサバイバルナイフとマグネシウムマッチで、ギルリルは枯葉を積み上げた火口にマグネシウムを切り落とすとナイフで着火棒をこすって火花を落とし点火した。


(人間でもこいつを使いこなしている奴はあまりいないと思うぞタマ・・・)


「ふふふ~ん」


火が勢い良くなってきたのでギルリルはご満悦だ。


「あ、ちょっと火を見ていてもらっていいですか?」

「いいよ、どうした?」

「雨露に濡れないように屋根作っちゃうですよ」


そう言うと森に入り倒木をズルズルと引っ張って来た。


「火の方に向けて斜めに屋根を作るです」


慣れた手つきで木を蔓で縛り付けながら屋根を組み、支柱を固定するとまた森に入って大量の樹皮を運び込み屋根に葺いた。


「これ、朝方薪が足らなくなったら投げ込めば雨に濡れていても火がつくですよ」


どうやら松のような樹脂のある倒木から剥がしてきたようだ。

ギルリルは汗もかかず、楽しそうに作業をしている。


「よし、あとは食べ物探してくるです」


一時でも座る暇が惜しいとばかりにギルリルは森の奥に入って行った。


『メルミア』

『はい、あなた』

『具合はどうだ? こちらにまだ感覚がかなり残っているか?』

『だいぶ落ち着きました。意識しなければそれほどでもありません』

『こちらに分身がいるような感じか?』

『はい、視覚だけはしっかりつながる感じです』

『ところで、エルフってみんなこうなのか?』

『みんなこうとは?』

『お前も一緒に森に入ったらギルリルみたいに動いてくれるのか』

『当たり前です。森であなたに不便な思いをさせられるわけないじゃないですか』

『そうか、愚問だったな』

『えっと、見えていますけどギルリルの事、気にせずに愛してあげてくださいね』

『お前、大丈夫なのか』

『感覚が残っていたら、素直に楽しむことにします』

『ギルリルは初めてだから、無理はしないよ』

『はい』

『帰ったら3人でゆっくり寝ような』

『はい、あなた』


メルミアと念話が通じるという事は、それよりも高い魔力を持つミケ・タマ・エルベレスとは当然通じるし、ミケやタマは覗きの常習者だけに今の会話も傍受されている可能性が高い。


(まあいいか)


今更である。


「戻ったです~」

「お、早いな」

「えへへ~ここの妖精さんたちに木の実を分けてもらったです~」


ギルリルが朴葉(ほおば)を大きくしたような葉の包みを開くと、どんぐり状の木の実が現れた。


「これ、生じゃ食べられないんですけど、焼くととても美味しいし栄養も豊富なのです」


そう言うと葉を包みなおし、近くの木片で焚火の灰の部分を掘り起こし、その中に入れて灰を被せた。


「ギルリル」

「はいです」

「身体が大きくなって、動きに違和感とかないか?」

「はい、逆にものすごくよく動くので楽しいです。それに」

「それに?」

「あなたに愛され慣れている身体ですから・・・」


そう言うとギルリルは顔を伏せた。


「おいで」


左手を広げて言うと、ギルリルは素直に左横にちょこんと座った。


「日が落ちたから間もなく暗くなるだろう。お前が起こしてくれた火を見ながら少し話をしよう」

「はいです」

「エロい話だぞ」

「どんとこいです」


そう言いながらギルリルが期待を込めた瞳を向けてくる。


「俺がこの世界に来て一番驚いたのは、ここの男はどんだけ尻穴が好きなんだよってことだ」

「ほへ?」

「奴隷市で女を売買するのを経験したんだが、女の価値が顔とか体付きとかの器量じゃなくて、尻穴に棒を突っ込まれた時の悲鳴の大きさで決まるというのがな」

「あ、それ、奴隷だった仲間から聞いたです。鉄の棒らしいですよ」

「そうそう。エルフからしたら悲鳴どころの騒ぎじゃないよな。実際メルミアも死にかけてたし」

「はいです。私にしないでくださいね」

「するかよ」

「冗談なのです。お尻の話は平民限定だと思うのです」

「平民限定?」

「はいです。貴族なら性奴隷にして子供生まれても何も不都合はないのです」

「ああ、養う金があるからな」

「そういうことなのです。平民にとって奴隷は労働力なので、妊娠は避けたいし」

「うん」

「筋力以外は女の方が強いので、(しいた)げておかないと恐いってのもあると思うのです」

「そうかもしれないなぁ、ギルリルも森に入ったらすごく強いものな」

「はいです。あなたを守るためなら、いくらでも強くなりますです」


なぜかギルリルは鼻息荒くガッツポーズをする。


「まあ実際平民でも性処理だけなら娼館があるものな。怪しい精霊が(たむろ)してはいるが・・・」

「はい、すごかったのです、あそこ」

「いや、ギルリルの行ったところは特殊だから。普通は拷問道具とか置いていないぞ」

「そうなんですか」


ギルリルがきょとんとする。

それはそうだ。もともとエルフ王の侍女なのだから娼館など詳しい筈がない。

特殊娼館が貴族エリアにある意味などは今話しても仕方あるまい。


「で、ですね~」


ギルリルが少し口ごもる。


「ん?」

「この体で試してみたですか?」

「何をだ?」

「だからお尻をです」

「あのな、大切なメルミアの心の傷に塩を塗るような真似、する訳ないだろう」

「はう~それを聞いて安心したです」

「安心したって、お前な・・・」

「あなたがお尻大好き人間だったらどうしようって思ったですよ」

「んなわけあるか。メルミアの膣は最高だぞ、ってしまった」

「どうしたです?」

「これ全部、メルミアに筒抜けだ」


(まあメルミアだけじゃなくてミケやタマにも筒抜けだけどな)


「気にしたら負けなのです」

「負けって・・・」

「私はいつも覗く立場だったから、覗かれても気にしないです。ましてやメルちゃんの身体なのです。頑張っていい声で鳴いてみせるのです」


ギルリルはそう言うといたずらっぽい笑顔を向けた。


「その前にだ」

「はい?」

「お前が埋めた木の実、そろそろ焼けるんじゃないのか?」

「あふぅ、そうだったのです」


慌てて木の実を掘り出し、ふうふう言いながら殻を噛み砕き、口に運んでくれるギルリルの姿がメルミアと重なる。まあ、少々弄ってあるとはいえ身体はメルミアそのものではあるが。


「あ、しまったのです」

「どうした?」

「最初に私が毒見しなければいけなかったのです」

「いらないよ」


肩をぎゅっと抱き締め


「妻が手ずから食べさせてくれるものに毒見など必要ない」


そう言うと焚火に照らされたギルリルの顔が一層赤くなったように見えた。

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