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皇帝になったブラック社員  作者: 田子猫
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スライムを作ってみよう

星空、銀河、ミルキーウェイ

単語の意味は理解していたが、実際に見るのは初めて、というか同じものなのか?


星々が強い光を放って漆黒の空に川を作り、川の周囲でも小さな星が無数の光を放っている。


なんにせよ美しい。


気温は間違いなく下がって来ているが、右隣にミケ、左隣にゾフィーが肩を寄せているので寒い感じはしない。

誰も隣にいなければきっと寂しさが加わって凍っていたに違いない。


ただ、リア充初心者のため膝枕などという高度な要求はできず、3人で固まって寝転ぶ形になっているが、両側に彼女?がいるというだけで気分がハイになっている。


森の中の開けた場所なので360度見渡す限りというわけではないが、星空を堪能するには十分で、暗い森の中のぽっかりと明るい空間というのも面白い。


もぞもぞと手のひらを探すとミケもゾフィーもすぐに察して手を握ってくる。

リア充最高!と叫びたくなる瞬間である。

左を見るとゾフィーが首を少し傾けてこちらをうっとりと見ているのがわかる。


魔力か星の光かは知らないが、白く輝くゾフィーの肌はとても美しい。

次いで右を見ると、ミケもこちらを見ているが、その表情は指示を仰ぐ時のものだ。


「ミケ」

「はい」

「何かいるのか?」

「近くで男が10名ほど動き回っています。盗賊でしょう」


近くでということは、他にもいるということか・・・


「銭と砂金目当てかな」

「おそらくは」


昼間、娼館前で元代官が女達に切り刻まれるのを見物した後、ゾフィーの進言で金持ちの貴族ということにして市場を回った。


その際に砂金入りの袋をミケに出させて換金したのだが、この地方には金脈がなく金は高値で取引されているため大きな箱2箱分の銅銭が手に入った。


普通なら宿屋に運び入れさせて馬車を待ったりするのだろうが、従者を装ったミケが軽々と2箱を担ぎ上げた。


魔法の存在が見えない者とってはどこから見てもただの少女が、である。


ミケの懐に収納した方が実は簡単なのだが、わざと見せびらかしたのである。

注目を浴びていることを確認しながら食事と買い物をし、森へ向かった。


力があると言っても女である。貴族の坊ちゃんと女2人のカモ一行を暗くなったら襲撃をしてやろうというのはとてもわかりやすい。


室内と比べ屋外ならどこからでも襲撃できるし、焚き火などの目印があるだろうし、寝ているところを襲えば楽に済むというお気楽な気持ちでいるに違いない。


「まさかこうやって寝っ転がってるとは思ってないだろうな」

「はい、それにこうやって私に繋がっている限り私たちは背景にしか見えません」


要は相手が至近距離からこちらを見ても光学迷彩が施されているのと同じ状態になっていて見えないということだ。


「ミケ、もしかして」

「はい」

「村の男たちは酒を飲むのが仕事なのではなくて盗賊が仕事なのではないか?」

「そうでしょうね、おそらく」

「今思いついたんだが」

「はい」

「お前、魔物を作れるか?」

「作れます。何を作りましょうか」

「スライムを」

「はい」


目の前、空中にスライムがあらわれた。

色はわからない。白く輝いてはいるが星が透過して見える。


「これは弱いのか?」

「はい、棒で叩いただけでも潰れてしまいます」

(ふむ、ゼリーのようなものか)

「この中に銅銭を入れたらどうなる?」

「スライムが生きている間は何も。潰した後に銅貨が残ります」

「よし、何匹か盗賊にぶつけてみてくれ」

「はい・・・あ、逃げられた・・・別の盗賊に・・・今度はうまく潰されました、でも銅銭に気がつかない・・・」

「潰された時に銅銭を光らせるようにできるか」

「はい・・・うーん・・・一瞬じゃダメですね、少しの間光らせるように調整します・・・できた」

「よし、銅銭を全部スライムにして周囲に撒いてくれ」

「はい、・・・ふう・・・」

「手は離して大丈夫か?」

「はい、近くに人間の気配はありません」


ホッとして繋いでいた手を離すと、体を少し右に傾け、ミケの首の下に腕を入れて巻き込むように体の上にミケを乗せた。

顔が急接近してミケが驚いた表情をしたが、ミケも右腕を回して来たので決して嫌がってはいないということはわかる。


「あの・・・」


ミケが恥ずかしそうな声で


「ミケの体、今日はまだ子供を産む準備が整っていないので、子種はゾフィーにあげてもいいです」


(おーい、この子今なんて言った・・・)


「ミケ、触られるのが嫌なら、そう言っていいんだよ」

「嫌なわけないじゃないですか、なんでそうなるんですか」


(まあ、確かに嫌なら魔力を使ってでも拒否るよな・・・)


「そうじゃなくて、ミケに相談があるんだった」

「はい」

「ここには冒険者とかいないのか?」

「昔冒険者は存在しましたし、冒険者ギルドも存在しました」

「なくなったのか・・・なぜ?」

「魔物やダンジョンが消滅したからです」

「なぜ消えたのだ」

「それは、当事者が生きていますので、明日ご案内します」


(当事者!?)


「あの」


今度はゾフィーだ


「こ、子種をいただけるのですか?」

「ゾフィー、それ意味わかって言ってる?」

「はい、陛下の物をいただけるのは光栄なことです」


(あ、だめだ、こいつわかってない)


「疲れた、寝よう!」

「はい」

「はい」


ミケは素直に体を右に捻って眠る体制に入った。

暗くなったから寝るという忘れてしまっていた感覚を思い出した。

今何時かわからないが、熟睡できるといいな・・・

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