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皇帝になったブラック社員  作者: 田子猫
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ラミア

タマとともに転移してきたヴァイオレットは「業務中」であったらしく

血液の跡が点々と付いた鞣革(なめしがわ)の上衣に幅広のズボンといった服装で(ひざまづ)いた。


『お呼びですか、わが君』


転移してから念話でこう話しかけてくるというのは、いかなる状況にあっても呼び出されたら即座に参りますという意思表示でもある。

ミケやタマとは違いヴァイオレットとの念話はオープンチャンネルになる。

念話で返すと余計なところまで話が伝わってしまうため、普通に言葉で返す。


「そこにヘタレている女だが、どうやら帝国を植民地化しようとする国の尖兵のようだ」

「まあ」

「余が(ただ)しても、まともに答えようとはしないのでな」


ヴァイオレットの目付きが剣呑さを増し、同時に口角が上がった。

これだけで呼ばれた理由が理解できたという事だ。

だが、ヴァイオレット「だけ」理解できても意味がない。


「ヴァイオレット、お前の持つ拷問器具を活用してこの女と手下どもの口を割らせ、どんな些細な内容でも記録しろ。もちろん口を割らなければ責め殺してかまわん」

「御意」


『おーい外の3人娘』

『は~い』


映電が返事をした。


『外にいる悪党どもをとっ捕まえろ』

『あ゛~~』

『どうした』

『襲ってきたので食べちゃいました』

『食べちゃったのはいい、まだ食べてない奴はいないか?』

『これから食べようとしていたのが・・・いいです、陛下に差し上げます』


「タマ、聞いてのとおりだ」

「うひゃっ」


これは話の内容に驚いたのではない、外の様子を覗いて楽しんでいるところに急に話し掛けられたから驚いただけである。


ミケも当然外の様子は知っている、が俺が「食っていい」と許可を出した行為であるので、報告するまでもない些事なことと捉えているのだろう。


「ヴァイオレット、この仕事への対価だが、この館をお前にやる。このまま窓を入れても取り壊して新しい物を作ってもいい。ついでに王宮の地下牢にいる平民どもをつけるから、娼館でも宿でもやりたいことが決まったら申請を出せ。すぐに通してやる」

「ありがとうございます」

「ではタマ、ヴァイオレットとこの女、そして生き残りを「あそこ」に連れていけ。お前はしばらくそこで遊んでいていいぞ」

「責め殺しちゃったら死体もらってもいい? アンデッドにしたい」

「許可する」

「わーい」


タマは嬉々とした表情を隠そうともせず

思案顔のヴァイオレットと血の気の引いた表情の女とともに消えた。


「益々俺は悪逆の帝王まっしぐらだな」

「悪逆?」


ミケがナンダソレハという顔をする。


「あ、ここにも地下に牢がありますね」

「地下に牢のある教会ねぇ・・・」

「隠蔽魔法をかけていたようですが・・・」

「窓と一緒に消し飛んだんだな。危険はないか」

「人間の気です。猛獣や毒蛇などはいません」

「見に行こう」

「はい」


ミケが先導しようとして、足を止め


「ここで待っててユーイチ」


そう言って姿を消した。

きっと見るに堪えないような惨状があるという事だろう。


『ユーイチ、蛇は大丈夫ですか?』


ミケが念話を送ってきた。

蛇を見つけたのか・・・


『攻撃される心配がなければね』


動物園などの蛇コーナーでガラスを隔てて見せるような形になっているものは別に恐怖を覚えない。


『連れていきますけど、驚かないでくださいね』

『噛みつかないように言っておいてくれ』


まあ、蛇に話が通じるとも思えないが。



ミケに抱きかかえられるようにして転移して来たのは

腰ほどまである長いウエーブした黒髪、伏し目がちだが美形と言える顔立ち、肌の白さに際立つ朱色の唇、張りのある形の良い乳房、細い腕、腰から下は蛇


「ラミアじゃないか」


そう、アニメや漫画でお馴染みのラミアである。


「ご存知でしたか」

「まあ、元の世界では定番だったからね」


エルフや精霊や魔物がいる世界である。神話での有名人が居てもおかしくはない。


「よかったです」


ミケはほっとした表情でラミアを横たわらせた。


「本来魔力が高い、浜辺の民からは信仰されるほどの存在なのですが、ずっとガラスに魔力を吸われ続けていたみたいで・・・」


干物寸前だったというわけか。


「ラミア、言葉は分かるか?」

「はい」


弱弱しいが、はっきりとラミアは答えた。


『ミケ、この世界ではラミアは女神のような存在なんだな』

『はい、そうですね』

『もしかして俺に回復させようと考えている?』

『はい、ラミアに恩を売れますし、ユーイチも魔力を受け渡す練習ができますよ』

『ん? 受け渡す練習?』

『今朝もしたじゃないですか』

『ラミアにキスしろってこと?』

『お嫌ですか?』

『いや、やらせてくれ』

『どうぞ』


まあ、妾をたくさん抱えているのだし、何をいまさらという話ではある。


「ラミア」

「はい」

「身体に触れてもいいか」

「はい」


上半身を抱え起こし、目を見ながら語り掛ける。


「お前には俺に宿る魔力が見えるだろう」

「はい」

「今からこれをお前に渡すが、口付けという形をとる。構わないか?」

「はい」

「唇を合わせてから魔力を練って、準備が出来たら舌を入れるから、吸い取ってくれ」

「はい」


同意がとれたのでゆっくりと唇を重ねる。

後頭部を抱えるようにしても拒絶はされない。

姿からの印象に反して生臭さはない。

ミケやタマ、魔物の娘も体臭がないから、これは魔力を主な活動源とするものの特徴なのかもしれない。


唇を重ねて気分が高揚すると、暖かな、明らかに唾液ではないとわかるものが口の中に満ちてくる。それを唾液の中に織り込んで行く


(こんなものかな)


十分濃縮したと思えたのでラミアの口の中に舌を入れる。

唾液と一緒に魔力が相当な速度で吸い取られるのが分かる。

余程魔力に飢えていたのだろう。


『完全に満たしても魔力は半分も減らないから安心して。後でゆっくり補充しましょうね』


語尾にハートマークが付きそうな甘い口調でミケが念話を送ってきた。


ぷはっ


ラミアが満腹になったのか口を離した。


「体調は戻ったか?」

「はい、おいしかったぁ」


うっかり乳房などに触れてしまわないよう、ゆっくりと体を離す。


「お前をこんな目に合わせた奴らのうち生き残った奴は王都で拷問にかけている。きっちり片を付けるから(たた)らんでくれな」

「勝手に信仰されているだけで神じゃないから祟らないって・・・」

「お前の棲み処は近くにあるのか?」

「この先の岬の洞窟だよ。何か困ったことが起きたら訪ねて来てね」

「送って行かないが、達者でな」


住居等は聖域に違いない。必要以上に踏み込まないというのも礼儀である。


「お互いにね~」


ラミアはうねうねと扉へと向かう。


『おーい、3人娘、今からラミアが出るからな、食うなよ』

『はーい』


ラミアはびくっとして振り返った。


「ねえ、この扉の向こうに何がいるの?」

「ドラゴンだ。喧嘩売るなよ、強いから」

「売らないわよ」


ラミアは扉をそっと開け、慎重に外の様子を確かめてからそろりそろりと出て行った。


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