初めてのお食事
優一と入れ替わった帝王は絶対にアキバで遊んだ経験があるはずだ。
なぜなら、テーブルを整えている女官たちのメイド服が機能的すぎるからである。
優一は長椅子、要はソファーに深く座り、ミケの肩を抱くというリア充ライフを絶賛満喫中である。
「ミケ」
「はい」
「ああいう、膝が出るようなスカート丈をどう思う?」
「平民の着る服に興味はございません」
まあ、生まれながらの王族らしいしね、君は
「もし俺が着てほしいなーって言ったら着るかい?」
「はい、いかなる服であっても」
10代前半に見える美少女である。
メイド服はもとよりセーラ服やブレザー姿、水着姿なども見てみたいと思うのは男として異常なことではないはずだ、多分。
「まだ時間がかかりそうだから、聞いてもいいか」
「はい、何なりと」
「ミケは生まれた時から俺のものと言ったが、あれはどういう意味だ?」
「はい、先程足の付け根の聖痕をじっくり触っていらっしゃったのでお気付きだとは思いますが、私は全ての魔力を操ることができます」
(いやいや、全く気が付きませんでした(汗))
「世界の地殻から湧き出る魔力を淀みなく帝国全土に配分し、余った魔力で様々な魔法を編み出し、魔法使いギルドを通して配分しています。それらの力は全てユーイチのもの。ユーイチの思う通りにそれを使う、そう言う意味です」
「ほう」
(やっとチュートリアルっぽくなってきたな)
「つまりミケはこの世界の女神様なのだな」
「女神様だななんて、そんな・・・」
この程度のおべんちゃらで頬を染めるのはなんとちょろい、ではなく純粋なのだと思ったところでふと、ミケの話には帝王である自分とこの世界全般のことしかないことに気がついた。
「ミケの友達はどれくらいいるんだい?」
「友達、とはなんでしょうか」
ここはRPG的な概念は共通していても日常的な用語は定義がないのかもしれない。
「こうやって対等に話のできる他人かな」
「私たちと対等に話せる他人、というのが思いつきません」
(確かに)
愚問だったなとふと部屋の入り口に目を移すと、異様な存在がそこにあることに気がついた。
「あれはなんだ?」
「毒味役です」
「毒味役?」
「はい」
ミケよりも少し若く見える少女が縄で縛られた状態で入り口に転がされている。
口には何か器具が入れられて無理やり開かされている感じである。
「ミケ」
「はい」
「毒味役というのは必要なのか?」
「私と一緒にいる限りはどのような毒物も近づくとわかるので必要ありません」
「では、あれはなんだ」
「なんだと仰いましても、食事をこうやって共にするのは初めてでございますので」
(なんだって?)
ミケは意味がわからないという表情を読み取ったのか補足を始めた
「婚姻の日からユーイチは常に見目の良い妾と一緒で、こちらに夜お渡りになったのは昨日が初めてなのでございます。それもお酒を大量に召されて倒れ込まれるようにして・・・」
「あ、まさかと思うけど」
「はい?」
「酔った勢いでミケに乱暴とかしてないよね」
全裸でいたということはもしや、と思いついたのである。
「ミケはユーイチのものです。乱暴されてもよろしかったのですよ」
よろしかったということはしていないということだ。
「いや、今の言葉は取り消す。忘れてくれ」
「はい」
つまりはこの可愛い后が何も言わないことをいいことに遠ざけて妾のところで後宮ライフを堪能していたということか。我ながら最低な奴だな・・・
「その者をここへ」
縛られて転がされた者を指差すと、周囲の女官は怪訝な顔をしたものの絶対君主の言葉に異を唱えられるはずもなく、両脇を女官に抱えられた状態でズルズルと目の前まで召し出された。
「全ての戒めを解け」
SMの性壁を持ち合わせてはいなかったため、身体の自由を阻害している縄や器具を取り外すよう命じた。
「武器や毒は隠し持っていません」
ミケが耳打ちをしてきた。きっと魔力を使ってそういう事もわかるのであろう。
「その者をどうするのです?」
「毒味をさせる」
「はい、それはわかりますが、戒めを解いてどうやって毒味をさせるのでしょうか」
優一的には運び込む過程で口に無理やり流し込むやり方は気に入らない。
「まずはだな、ミケと俺はテーブルで離れずに隣り合って座る」
「はい」
「真ん中にこ奴を座らせて、俺たちで食べさせるのだ」
「まあ」
「どうだ」
「面白そう!」
ミケは退屈な食事時間での遊びと捉えたようだ
毒味役に目を向けると、表情からは恐れや不安が消えていた。十分である。




