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皇帝になったブラック社員  作者: 田子猫
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葡萄の季節

「酒宴もいいけど」


ミケが呆れた声で


「索敵どころか警戒もろくにしていないってどうなの? 敵だからいいけど」

「そのことですが」


エルベレスが笑いを噛み殺した声で


「やんちゃな子が娼婦に混ざって潜入していたら『たかだか歩兵900名』と確かに聞こえたそうです」

「それはそれは、随分こちらの兵力を詳しく把握していることだな」

「900名の行進をガン見させてますから」


ミケが事も無げに言った。まあ、敵を一瞬で葬り去る能力のあるミケとしては背中が痒くなるような状況ではあろう。


「で、その『歩兵900名』の現在位置は?」

「間もなく男爵の館の四叉路です」


旅団の指揮官が答えた。


「休憩なく速度を上げつつ行進していますので、最初は隠れながら追跡していた間者も道路に出ています」

「よし、50名を四叉路周辺に先行させ潜伏させよ」

「はい」

「四叉路周辺に潜伏した者は、部隊通過後に四叉路から東へ行こうとする者を皆殺しにせよ。念話を飛ばす前に始末するんだ。

敵が戦場に進出したならば潜伏任務を解除し部隊に復帰させろ」

「わかりました」

「ヘッドクオーター要員は直ちに四叉路に集まり、観戦者や商人を朝までそこで止め、敵が戦場に進出し潜伏者が部隊復帰のため離脱したのを確認した後、高地へと誘導せよ」


命令内容が我ながら悪の帝王っぽいが、戦闘用意や布陣の様子などを報告されたらたまったものではない。


「敵はろくに警戒もしていないとのことだが」


ミケは頷いてから呆れた口調で


「これほどの宿営地域なのに、歩哨は今映している篝火の位置に2名だけです」

「ということは、敵の企図としては明日昼近くに戦場に進出して我と遭遇戦を行い、そのまま王都まで追撃を行う、というところかな」

「見事なまでに単純な皮算用ですが、その通りでしょう」

「ちょっと見積もりを外してやろう。陣地線の丘陵を越えたところに偽天幕を張って、物資を少し置いておけ。まだ行動開始していないように装うんだ。

敵のマスケットが展開する直前に陣地線まで後退、突撃を誘うようにバラバラとな」

「その辺は、ユーイチの『娘たち』がうまくやるでしょう」

「あと、今日中に手を打つべきことはあるかな?」

「私とタマと娘たちに睡眠など必要ないので、私はこのまま敵の動きを見ています。タマはこの世界に引き込んだ人の面倒を見るでしょうし、戦場付近で何かあっても娘たちとエルフ達、そして竜の3人がいるので対応できますね」

「だな」

「だからユーイチとエルフ王は朝までゆっくり寝て来て。少しくらい寝坊しても構いませんから」

「そうだな、ちょうどお腹もすいてきたことだし、あとは頼むぞ」

「はい」

「優一、迷惑でなければ部屋まで来ていただけますか?」

「いいよ。エルベレスから誘ってくるなんて珍しいね」

「はい、あの子たちにまた優一と会わせるって約束してしまって・・・」

「それは責任重大だな、行こう」


・・・・・・・・・


「どうぞ」


エルフ王直属の侍女の1人が飲み物を持ってきてくれた。

のどが渇いていたので大助かりである。


「葡萄液じゃないか、うまい」

「はい、王城の葡萄の実をこの足で潰しました!」


その侍女は得意気にスカートをたくし上げて見せた。


王女が提出した王城の管理財産の樹木の項目に果樹はなかったので、密かに誰かが育てて酒などにしているのかもしれない。

まあ、どうでもいいことだ。


「お前はワイン造りの知識があるのだな」

「はい、もともと醸造の知識はエルフが人間にもたらしたものなので、エルフなら皆知っています」


エルベレスも嬉しそうである。


「おう、すごいな、エルフは」

「ふふ」

「次の機会にでも、葡萄の香りに包まれたその足を楽しませてもらおう」

「はい、よろこんで!」

「あの、私もよろしいですか?」

「私も!」


周囲で佇立していた侍女たちが我も我もと立候補してくる。

きっと葡萄収穫の時期なのだろう。


「お前ら皆俺の前に来い」


やった!とばかりにわらわら集まって来る。


「俺が来た時には他人行儀に突っ立てなくていいからな、ほら、その場に座れ」


侍女たちは目の前に密集して、毛の長い絨毯の上にそのまま座った。


長いスカートで女の子座りをするとスカートがふわっと広がるが、実はそのような生地の動きを見るのが好きなのである。それにとても可愛く感じる。


「エルベレスは本当によく分かっているな」

「はい?」


エルフ用にと全員に無償で与えている服は上着からブーツまで緑揃いでスカートは短いものだが、これは野外での活動の為である。緑は視覚的な迷彩を狙っている。

王城での侍女・女官用の服は前帝王がミニスカートにしていたのを膝丈の物に更新中である。短い物に慣れてしまっているので今更長いのは作業がしにくいという意見を汲んでのことである。

しかしエルフに限っては、エルベレスがどこで見つけてきたのかロングスカートを侍女に着用させている。自前の服を着てはならないという規則はないので問題はない。


「本当はそのスカート丈で揃えたいんだが、長いのを嫌う女が多いみたいでな」

「そうなのですね」

「エルベレスには余計な負担を強いているな、許せ」

「とんでもないことです。エルフの特例を認めて下さってありがとうございます」

「正直に言うと、今みたいに座ってくれると、その姿がたまらなく可愛くてね。これからもこの部屋に来たら、よそよそしくせずに今みたいに集まって座っておくれ」

「はい!」


侍女たちが嬉しそうに返事を唱和させた。

一番前にいた侍女が飲み干したグラスを丁重に受け取って下げた。


「ふふ」


エルベレスが思い出し笑いをする。


「どうした?」

「いえ、どうやって話を切り出そうかと悩んでいたのが馬鹿らしくなって」

「ん?」

「優一がこの子たちを娘のように受け入れてくださっていたので、なかなか種付けをしてくださいとは言い辛かったんです」

「ああ」


エルフ王という立場ではエルフの人口増加が急務で、その為に辺境伯に付け入る隙を与えてしまったという負い目もあるのだろう。


「どちらかというと、俺よりこの子たちの事を先に考えた方がいいんじゃないか?」

「とおっしゃいますと?」

「この中で体調を崩しがちなのは誰だ?」

「カレナですね」

「カレナ」

「はい」


侍女の中でも小柄で、言われてみれば少し顔色が悪く感じる子が立ち上がった。


「もっとこちらにおいで」

「はい」

「君は最近まで奴隷だったのか?」

「はい、王城の下働き共用の性奴隷をしていました」

「これから少し辛いことをさせるけど、決して侮辱するつもりはないので許してほしい」

「はい」

「まず、服を全部脱いでくれ。身体に傷がないか見たい」

「はい」


カレナは躊躇せずに服を脱ぎ、全裸になった。


「後ろを向いて、膝をついて、脚を開いて前かがみになって、膣がよく見えるように自分で広げてくれるか?」

「はい」

「これは、ひどい」


エルベレスが絶句した。


「そうだろう、肛門は裂けて、膣の中は怪しい薬を詰められた跡で黒ずみ、肌のあちこちに打ち据えられた跡と化膿しているところもあるね」

「はい」

「ここにいる子は多分、多かれ少なかれ似たようなことをされていると思うよ」

「はい・・・」

「カレナ」

「はい」

「これから肛門と膣、それから体中の傷跡に触れるが、耐えろよ」

「はい」


(キュアウォーター・・・)


「ひゃっ」

「すごい。傷が消えました」

「一部だけど、俺にもミケと同じ力が使えるんだよ」

「メルミアから聞いてはいましたが、すごいです」

「カレナ、他に痛い所とかあるか?」

「いえ、ありません」

「では立ち上がれ」

「はい」


『ミケ、エルフから消したのって奴隷印だけだったんだな』

『うん、そうですよ?』

『キュア使ったので魔力足しておいてくれな』

『はい』


ミケへの業務連絡はさくっと終わる。


「服を着なさい」

「はい」

「エルベレス、まずはここにいる子1人1人の身体の傷を癒して、それから男に対する怖い感情を和らげるのが先だよ。さっき戯れて言ったのは、膝から下の香りを楽しむ程度の話で、この子たちに関係を迫るつもりはなかったんだ」

「そうなんですか」

「あ、カレナ」

「はい」

「服を着たら、ちょっと見えない場所に行って膣周辺を自分で触ってごらん。多分感覚が戻っていると思うから」

「はい」


他の侍女たちは興味深そうに見てはいるが、誰一人赤面したり恥じらう様子はない。

いったいどれだけの苦難を経験しているのであろうか。


「エルベレス」

「はい」

「侍女は他にもいるんだよな」

「はい。交代制にしていますので」

「ではまあ、順番は任せるけど、エルベレスと寝る時一人ずつ呼んでくれよ」

「寝る時に、ですか」

「うん、大好きなエルフ王と一緒なら安心するだろうし、身体を癒した後も男が怖ければお前が抱いて寝てやればいいからな」

「お心遣い感謝します」


まあ、俺的にはこの小動物的に可愛い子たちを抱くよりも、ふわっと座っている姿を見る方が癒されるのだが・・・

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