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皇帝になったブラック社員  作者: 田子猫
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3人の竜娘

「ユーイチ、この子たちが竜族だよ」

「このような仮の姿で失礼いたします、わが君」


王宮に戻って憩いの間で寛いでいると、ミケがメイド姿の竜族の娘を部屋へ招き入れた。


3人とも見た目は幼いが、多分これは変身させているミケの趣味なので、竜というからには見た目と釣り合わない年齢なことは確かだろう。


背丈はミケと変わらず髪の毛も肩の高さに切りそろえているため、髪の毛の色が目立つ色でなければ使用人に溶け込んで意識にすら入ってこないはずである。


向かって左側が赤髪、真ん中が青髪、そして右側が白髪であるが便宜上銀髪と言い換えることにする。


憩いの間というのは謁見や会議等長時間玉座に座る必要がある時に休憩をするための部屋で、硬い玉座に長時間坐る苦行から一時的に逃れるための部屋だ。

絨毯の毛は長くふかふかであり踏み心地はいいが掃除は大変であろう。

椅子は重厚な皮張りの肘付き椅子である。

机も深い艶のある幅1800ミリほどの両袖の木製で、脇机も同様である。

これでPCがあれば言うことなしなのが・・・

ソファもあるが、これは寛ぐ用というよりは来客用で、実質帝王の執務室といったところだろう。


「楽にせよ」


跪いていた3人の娘はゆっくりと立ち上がった。


「ミケ」

「はい」

「やっぱりこのメイド服、スカート丈長くできないか?」

「はい、明日の朝までには長いものと入れ替えさせます」


ミケはもともと短いスカート丈に良い感情を持っていなかったので2つ返事で確約した。


「そうしてくれ、それなら後宮からこちら側に出てきても違和感ないだろう?」

「そうですね」


いくらメイドなど存在しないように振舞う貴族でも、足を露出した女性がうろちょろしていたら気にせずにはいられないだろう。


「さて、そなたらは竜ということであるが、ここで本性を現わさせるわけにはいかぬので言葉で自己紹介をせよ」

「はい」


当然その質問は予期していたであろう。

赤髪の竜がまずは口を開いた。


「私は長老の血を引く攻竜の娘にございます」

「攻竜とは?」

「飛行速度はさほど速くありませんが、強力な攻撃魔法と厚い(うろこ)による防御を誇ります」

「ほう、攻撃魔法」

「はい、私が得意なのは飛行方向に小さく固めた魔力を撃ち出すものと吐息に火をつけるものです」

「ほう、では魔力を撃ち出すものの説明を」

「はい。それは飛行する方向に、拳の大きさほどに凝縮した魔力の塊を連続して射出するもので、猪や熊程度でしたら1発で体を引き裂くことが可能です」

「おお、それはすごいな」

「ありがとうございます」

「吐息に火をつけるというのは火炎放射か?」

「いえ、発火させたい地域にまず吐息を送り込みます。相手が建物なら爆燃濃度で、相手が生物なら爆轟濃度で地域を吐息で包み、高空から火種を吐きます」

「竜が吐いた小さな火の魔法で地域がどっかーんと」

「はい、そうです」

「種を知らない奴からすれば、とんでもない災厄級の竜だな君は」

「お褒めに預かり光栄です」


ミケがあまりにもぶっ飛んだチート級の女であるので竜の能力を聞いてもそれほど衝撃はないが、十分な切り札となる戦力であるのは確かだ。


「それではお前にはファイアフライというコードネームを与える。オープンチャンネルでの戦闘通信でもまさか竜がいるとは思われないだろう」

「蛍の光♪ですね」


ミケが楽しそうに


「確かにユーイチがオープンで念話すると敵にまで筒抜けますわね」

「だろ。次、君は?」


話が脱線しないように青髪の竜に自己紹介を振る。


「はい、私は翼竜で、誰よりも速く飛べて、自分が見たままの風景を遠くに映すことが出来ます」


そう言ってじっとこちらを見たかと思うと、竜たちの背後に霧が立ち込め、そこにまるでテレビカメラで写したかのように大きく自分とミケが写っている。


「おお、すごいな。ちなみに空中静止もできるのか?」

「風魔法で気流を操れますので可能です」

「つまりは戦場の様子をここにいながらリアルタイムで見ることが出来るというわけだな」


元の世界で言うところのヘリ映像伝送装置だ。


「もうこれは決まりだな。お前のコードネームは映電」


イベントでヘリを使ったことがあるのでイメージがわきやすい。


「次、君は?」

「はい、私は医竜で、竜の中で唯一癒しの魔法が使える一派です。飛び帰れぬほどに傷ついた竜がいれば、そこに赴いて癒します」

「竜でさえ治せる癒しとなると、かなり強力そうだな」

「はい、でも竜に傷を負わす生物は見たことありません。たいていは魔力噴火に巻き込まれたとか寝ていたら土石流が直撃したとかですね」

「そうか、それならお前はアンビだな」


救急車という意味のアンビュランスの頭からとった。


「来週早々に会戦があるだろう。相手は辺境伯で兵力は不明だが戦場規模としては1万人程度を予想している」

「はぁ、人間1万人ですか」


ファイアフライがたったそれだけかという表情をしている。


「戦場はハウル男爵の館という名の代官屋敷から辺境伯の館までの3つの草原、おそらくは中央の草原が決戦場になるであろう。いくつかの丘陵が横に走る草原だ」

「そこで暴れればいい、と?」

「まあ聞け、ファイアフライよ、お前は戦場予定地域に赴き、敵に最大の恐怖心を植え付けるため、敵の予期せぬ方向から対応の暇を与えずに奇襲する方法を検討せよ」

「承りました」

「映電よ、お前は出来るだけ目立たずに戦場全体を見渡していられる場所を探せ」

「はい」

「アンビよ、お前は戦場の中の重要な高地で敵の接近を感知しやすく、ファイアフライや映電が翼を休めるのに適した場所を探せ」

「わかりました」

「偵察が終わったら戻ってきて報告せよ。おそらく今週末には敵からの宣戦布告状も届くであろう」


3人は跪き、そして部屋から退出した。

ファイアフライに映電、そしてアンビ

およそ竜らしくない名前だ。

偵察の段階で戦場地域で竜が目撃されるかも知れない。

辺境伯がこちら側の駒と見抜いて対空火器でも持ち出してくるかどうか・・・


「ミケ」

「はい」

「念のために聞くが、こちらの世界に対空警戒という概念はあるか?」

「ありません。よほど高位の冒険者でもなければ飛ぶ物に手を出したりはしません」

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