エリカの事情
前帝王が集めた謎の品物の一部を載せた絢爛豪華な馬車は辺境伯領に向けてかなりの速度で走っている。
人ごとのような表現だが、見た目こそ馬車であるがミケが魔法で何かしているのであろう。全く揺れないし騒音もない、ただ窓から流れ去る風景が見えるだけだからである。
「エリカ」
「はい」
「どうして奴隷になったのか、聞いてもいいか?」
馬車を操っているだろうミケに話し掛けるのも悪いような気がして、目の前のエリカに質問をしてみた。
「はい、私は伯爵閣下に人間として兄弟と一緒に育てられました」
「うん」
「見た目はこうですが、兄弟の中でも年上なので当然勉学など兄弟よりもできてしまいました。聖夜の夜に兄たちが部屋に押し入ってきて押さえつけられ、奴隷商人から借りてきた焼きごてで印を入れられたのです」
「そりゃひどいな」
「誰であろうと経緯はどうあろうと奴隷の印が押されたら物になってしまいます」
「そうなのか・・・」
「伯爵閣下はすぐに奴隷印を貸した奴隷商人を呼びつけられました」
「焼きごてを貸したことを怒ったのか?」
「いえ、私はもう物だから、この場で鑑定をしろと仰いました」
「鑑定?」
「男の奴隷は労働が主なので筋肉だけ見れば良いのですが、女の奴隷は性奴隷が主なので複雑なのです」
「え、女は基本性奴隷なのか」
「はい、雑役が主な王宮とは少し感覚が違います」
「ふむ」
「それで、私は裸にされて背中で手を縛られて、頭の上に足を乗せられた状態で尻と膣に突き入れられました」
「な、なんだって!」
「普通は孕ませないよう尻だけなのですが、私にはその恐れがなかったので両方試すことになったのです。その時の悲鳴は伯爵閣下が気に入って実際に射精までお試しになりました」
「実の娘にかい・・・」
「物ですから娘ではありません。私はとにかく母のところに残りたかったので泣き声に興奮しているのがわかった時には少し希望を持っていたのです」
「そうか」
「ところが、次の長男は引き抜いた時に血がついたので激昂して蹴飛ばされ」
「おいおい」
「次男は私の口の中に射精したのですが、吐き出してしまったので・・・」
「・・・」
「結局兄弟4人に髪を切られ、袋叩きにされ、こんな奴はいらないと」
「ひどすぎるな、おい」
「そのまま奴隷商の馬車で生死の境を彷徨っていたら、少女であれば何でも買い上げるという王宮の荷物の方に入れられて、今に至ります」
「そうだったのか、つらい過去を思い起こさせてしまったな」
「いえ、毒味役と言われてこのまま死ぬんだと思っていたのに、身体を綺麗にしてくださったどころか妾にまでしてくださって、とても感謝しています」
エリカを抱き寄せたい衝動に駆られたが、怖がらせてしまう可能性が高いので思い止まった。
「奴隷市がありますが、見たいですか?」
ミケがそっと呟くように声を掛けてくる。
「近くにあるのか?」
「はい、間も無く到着します」
「そうだな、後学のため見学してみよう」




