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皇帝になったブラック社員  作者: 田子猫
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お食事事情

エリカの部屋は客間、居間、寝室の3部屋のある大きな部屋で、調度は若草色で揃えられ、桃色が主張してくるゾフィーの部屋から来るとホッとする。


エリカの部屋でご一緒に朝食をというミケからの連絡に感謝だ。


「おはようございます」


エリカから元気に挨拶された。


ミケとエリカは客間のテーブルに既についている。

テーブルを挟んで左の長椅子にミケ、右にエリカである。

もちろん真っ直ぐミケの隣に向かう。


「ミケ」

「はい」

「寂しくなかったか?」


そう言って隣に座ると、身を寄せてきて上目遣いで視線を合わせる。


「寂しかったですよ、でもこうしてすぐに寂しさを埋めてくださるので嬉しいです」

(か、可愛い・・・)


ミケの髪を弄っていると、テーブルの上のグラスに気がついた。

グラスには朝から葡萄酒が入っている。

優一が前の世界で何度か付き合わされた接待の場に出ていたようなものではなく、甘く濃厚な、蜂蜜に似た感じのものである。

それを軽く口に含んでミケの唇からゆっくりと流し込んでみる。

ミケはうっとりとした表情でそれを飲み込む。

調子に乗ってミケの口に舌を入れてみる。

ミケは嫌がるどころか嬉々として絡めてくる。


「うぉっ」


これは超高度な技ではないか!

暫くそうして感動していたら、いきなりミケが目を開けた。

女性が目を開けるとキスが強制終了になるというのは初めて知った。


「2人が腹ペコだと思います」


そうだった、とゾフィーとエリカに目を移すと、2人ともにこやかにしている。


(生ぬる〜く見守られていた・・・)


「料理を」


姿勢を正したミケが指示を出すと恭しく料理が運ばれてきた。

運ばれてくる態度は恭しく食器は豪華だが、食事内容は3食とも同じ

パンに煮込まれた野菜、そして肉の塩茹で

野菜と肉の種類は変わるが基本的にはどこでも一緒で、身分が高いと好きなだけ量が食べられるという違いしかない。


「前の奴がいかに食べることに興味なかったかわかるな・・・」

「?」


ミケが言っている意味がわからないという顔をしている。


「ミケは甘いものは好きか?」

「果物ですか? 大好きです」


(やはりな)


「果物ではなく、砂糖というものがあれば、小麦でミケの好きな甘いものも作れるんだが」

「砂糖・・・聞いたことないですけど、もしかしたら地下にあるかもです」

「地下?」

「はい、前帝王陛下がよく使い方のわからないものをどこからか取り寄せられては地下に貯めていらっしゃいました」

「そうか、あとで案内してくれ」

「はい、あの、ユーイチ」

「ん?」

「ミケのこと大事に思ってくださるのは嬉しいのですけれど、あまり小麦を使われると臣民に行き渡らなくなるかもしれません。小麦を使った酒造りを禁じているくらいなので・・・」

「わかった、頭に入れておくよ。あとは芋ってわかる?」

「いえ」

「それもあとで探そう」


どうやら食糧事情は中世とあまり変わらなそうである。

かと言って見たことのない作物をいきなり魔法で出現させることは危険であることくらいは本能的に理解できる。不特定多数の臣民に対する「奇跡」は慎重に行う必要があるのだ。

甜菜や芋は後から考えよう。


「ユーイチ、はい」


ぼーっと考え事をしているうちにミケがナイフで肉を細かく切って口に運んでくれる。ミケの指は汁でぐっしょり濡れているので指も舐めてしまおう・・・


「ゾフィーとは楽しめました?」


今日はいい天気ですねという程度のノリでさらりと聞いてきた。


「あ、まあ」


(これ、下手な答え方したらあかんやつだ)


本妻に妾の目の前で妾と寝た感想を聞かれているのである。


「お前の知るとおり俺はおっぱい好きだからな。なんか自分だけが楽しんでしまったような気がする」


途端にゾフィーの顔が真っ赤になる。


エリカは話聞いてませんよという態度でひたすら野菜を口に運んでいる。


「あら、ゾフィーは楽しくなかったの?」

「い、いえ、そんなことは」

「本当は?」

「・・・すっごくかき回されて苦しかったですけど、嫌ではなかったです」

「ふーん」


どうやら想定内の回答だったらしく、ミケはあっさりと矛を収めた。

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