第1王女にお仕事を
第1王女がピンクピンクしい部屋の扉を開けた途端、めまいを起こすほどの猛烈な魔力を感じた。
部屋の一番奥には姿だけは前帝王そっくりの男がこの部屋にいた妾ではなく見ず知らずの女と乳繰り合っている。
問題はその手前にいる女で、凄まじい量の魔力を天井のところでぐるぐると回し、あきらかに王女を威嚇している。
その前にいる幼女は昼寝の真っ最中のようだ。
「陛下!」
王女は大声で叫んだ。魔力の暴風が声を遮るに違いないと思ったからだ。
「なんだ?」
帝王はあっさりと答えた。
「陛下、私に仕事をお命じください」
「ん、じゃ5日やるから後宮を含めた王宮内の全ての部署の仕事内容、問題点とその対策の案をまとめておけ」
「はい」
「王宮内の調査に関しては全権を与える。以上だ、かかれ」
「優しいですね」
寝たふりをしていたエリカが目を開けて
「一人でやれとはお命じにならなかった」
「それだけじゃないわよ」
ミケが感心したように
「全権ということは、あの子の質問に答えなかったり嘘を言うとユーイチに楯突くのと一緒だから、体の中の魔力が暴走してすごいことになるわ」
「そうなのか?」
優一は自分にそれほどの力があるとは思っていなかったので驚いた。
「はい、魔力が見える子ですから、相手が嘘をつけばすぐに見破れるでしょう」
「俺としては結構ブラックなことやったかと思っていたんだが」
元の世界のセオリーなら、何ができるのかを申告させて、それよりも少し難易度の高い仕事を与えて成長を促進させるのがホワイトなやり方で、こういう能力関係なしでヒントなしの仕事の振り方はブラックな「できなきゃ寝る時間削ってでもやれ」という従業員をただの消耗品として扱うやり方のはずである。
「馬鹿認定されたら平民に落とされると思って必死なのでしょうね」
「ふむ、じゃあ期待させてもらおうではないか」
「はい、ではまあそちらは良いとして、タマに送る銅銭ですが」
「うん」
「あまり撒き散らしすぎると銅銭が市場に溢れて物価が高騰する恐れがあります」
「それはそうだが、それは銅銭の量だけで解決する問題なのか」
「今のところはそうです」
「今、新しく鋳造した銅銭はどのように分配しているのだ?」
「はい、毎月各ギルドから錆びついたり変形した銅銭を鋳造所に送ってきますので、同じ分量の新しく鋳造した銅銭を配分して帰しています」
「ならば、銅銭が過剰に出回る前に輸送中の銅銭を魔物に襲撃させれば魔王討伐の正当性も付与できるしいいのではないか」
「そうですね、タマも今の話は理解したと思います」
「お前ら、便利だなぁ」
「はい」
ミケはにっこりと微笑んだ。




