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皇帝になったブラック社員  作者: 田子猫
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前哨戦

「敵軍を確認しました」


作戦室に映電からの映像と情報所の兵棋板がそれぞれスクリーンに投影される。


丘陵の林内からバラバラと人が現れ、50人くらいが横隊に並び、その後方にどんどん列ができる。

少し離れた位置にも同じように横隊が出来る。

横隊と横隊の間には10名のピッコロだけを持った兵と

その後方に2列、つまり20名のドラムを持った兵

要は鼓笛隊だが、サーベルを持った将校が鼓笛隊の前に陣取って合図を送ると演奏が始まり、歩調を合わせて行進が始まった。

うん、原初の軍楽隊だね。


最前列の兵士は銃口を前にする構え銃の姿勢で、後方の兵士は担え銃のまま行進をしている。


「これ、録画したら映画として売れそうだなぁ」

「そやなぁ」


俺は作戦室の椅子ではなく、中央に置いた大きな開いた貝殻の中に大ハマグリを抱える形で座っている。

大ハマグリにとって他人事ではなくなったこの戦争をしっかり見たいと言うので、娘たちに頼んで大ハマグリの本体をここに運び込んだのだ。


大ハマグリは蜃気楼を見せる特技を持っているので、以前スクリーンに投影させた時に俺のいた世界での「映画」について説明したことがある。


前進を始めた敵軍はそのまま凹地を下って来る。

嫌がらせで道路はタマに消させたが、目の前に大森林もその奥の山岳地帯もあるので大森林に入るまでは方向に迷う事はない。


しかし、開豁(かいかつ)した野原を抜けるまで1km以上あるし、嫌がらせの障害物もある。

まあ、しっかり教練されているのは認めるが、最初からその前進方法で疲れないのかな。


「旅団長、仕掛けの方は?」

「万全です」


今回、大森林の林縁に全般前哨を置き、ちょっと小高くなっている場所を陣地と誤認させるために戦闘前哨を置いているが、草原の中にもこっそり娘たちを配置している。

要は潜伏斥候であるが、役割は敵の斥候の()()と障害の一部となって敵の前進を遅滞(ちたい)させることにある。


今回は主力が堂々と歩いてくるので、娘たちは空堀の両側方に移動している。

空堀は草原の中央にまるで水路を工事しているかのように排土を大森林側に積み上げ、敵の侵攻方向に対して直角に掘らせてある。

幅は20mあるので飛び越えるのは人間には無理だ。

しかし深さは1m程度なので橋を架けるほどではない。

底には少し()()()()()()()が残っているように見える。


「うん、全く気にしていないね」


兵達は銃を片手に持って堀に飛び込んでいる。

まあ、対岸も崖のようには見えないから越えるのは大した手間でもないと思っているのだろう。


「点火」


旅団長の号令で娘が堀に向かって魔法を撃ち

その魔法で点火されたファイアフライの吐息が一気に燃え上がる。

そう、底に残っていた水のようなものはドラゴンブレスの素になる竜の吐息で、気化しないようゲル化させて空堀に撒いておいたものである。ゲル化はタマのお遊びの成果でもある。


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!


映電が地上の悲鳴を拾った。

ファイアフライを目撃していても火焔対策はしていなかったのだろう。

火薬を持ち歩いているマスケット兵にはこれ以上ない辛辣(しんらつ)な罠とも言える。


「あ」


戦況を見ていた旅団長が声を上げた。

流石に何も考えずに続々と罠に入ってくるほど敵は間抜けではなかったようで、2列、つまり200人ほどが焼かれた段階で前進が止まり、いったん後退した後に堀に沿って左右に分かれて行進が始まった。

敗走しなかったのは立派だが・・・

火に巻かれた兵達を救助しようとする動きは一切見せない。

また、友軍の死体を乗り越えて進む気もないようだ。

火焔攻撃が一回限りとは通常思わないだろうから、安全に渡れる場所を探そうというのだろう。

まあ、燃えていない場所は見ればわかるからね。


こちらも娘たちは既に次の障害物へ移動している。


娘たちは陣地前縁で「おもてなし」する気満々である。


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